日中韓の緊密な連携こそ 東アジアに平和と安定をもたらす

明治大学助教
金惠京

 尖閣諸島問題や竹島問題、従軍慰安婦問題など、いまだかつてない不安定な状況下におかれる日中韓関係。3ヵ国の関係改善に向け、これから目指すべき道とは。

共通の歴史教科書づくりを

 日本外交の展望を開いていくためには東アジア全体の平和と安定を目指していく必要があります。そのためには北朝鮮問題の解決は避けて通ることのできないテーマです。まず前提となるのが日中韓3ヵ国の緊密な連携です。ところが状況は思わしくありません。昨年夏ごろから、お互いの友好関係に水を差すようなやり取りが断続的に続いてしまっています。中国の尖閣諸島に対する姿勢や韓国の竹島に対する態度、そして日本の一部政治家による従軍慰安婦をめぐる歴史認識の問題など、お互いが非難を繰り返すことでさらなる関係悪化を招き、不毛な対立を繰り返してしまっているのです。
 なぜ日韓・日中は感情的対立を繰り返してしまうのでしょうか。私は、お互いがいかなる意見を持ち、相手に何を望んでいるのか双方が理解できていないからだと考えています。識者のなかには「歴史に対する共通認識を確立すべき」といったことを語られる方もいますが、私はその前提条件すら整っていないのではないかと感じています。お互いの顔が見えないから不安になり、いら立ちを覚え、感情をぶつけてしまう。今こそ対立の垣根を乗り越え、日中韓それぞれが歩み寄っていくべきなのです。
 歴史認識に対する問題は非常に根の深い問題です。ですから短期的、中長期的な視点から友好の努力を重ねていく必要があります。短期的には首脳同士の密接な連携を図り、会合や人的パイプを構築することです。
 日中韓が、お互いの関係改善を世界に向かってアピールすることが、東アジアの安全保障によい影響をもたらします。3ヵ国の強固な友好関係こそ北朝鮮の暴走に歯止めをかけることが可能だからです。
 中長期的には、「共通の歴史教科書づくり」に取り組んでもらいたいと思います。
 ドイツとフランスでは、ナチスのホロコーストや対独従属政府であったヴィシー政権のあり方を反省する共通の教科書づくりに取り組みました。
 お互いが共通の教科書づくりを通して過去の歴史をどのように受け止めているか、またそれぞれが克服すべき課題は何なのか、何を子どもたちに教えていくかを語り合うこと自体が、日中韓3ヵ国の友好を深めていくのです。
 そのうえで、1点、気をつけなければならないことがあります。ドイツとフランスは対等な独立国同士の戦争でした。日中間も同様です。しかし韓国は50年近くも植民地化された揚げ句、望まない形で戦争に巻き込まれてしまいました。日韓は対等な関係によって第2次世界大戦に突入したわけではありません。教科書づくりに当たっては、まずそのことを強く意識していただきたいと思います。

アメリカを介さず日韓両国で外交を

 韓国に朴槿恵新政権が発足しました。支持者は60から70代の熟年世代の人々です。熟年世代の期待が高まる一方、若年層世代の失業率は深刻で国内経済は大変な落ち込みにさらされています。サムスンなどの韓国企業が有名になり、海外展開を果たしていますが、国民生活は円高・ウォン安で深刻な不況にさらされているのです。
 またこの状況に北朝鮮のミサイル問題が拍車をかけています。韓国は「(北朝鮮の脅威にさらされる)危険な国」だとのイメージが国際社会へ広がってしまい、外国資本が次々と引き揚げています。朴政権には足元をしっかりと見つめ内需拡大型の経済運営を行ってほしいと希望しています。
 また外交においても冷静な対応を望みたいと思います。本年(2013年)の5月に行われた米韓首脳会談では朴大統領が日本の歴史認識を批判しました。非常に異例なことです。またこれに対抗する形で日本も過去の歴史認識に対する「村山談話」修正の可能性を示唆しました。日本も韓国もアメリカに依存したかたちで日韓間の外交カードを切ろうとしています。日韓外交にアメリカの力を利用すべきではありません。アメリカとの外交関係が不要だということではなく、独立国同士の外交は、あくまで2国間で解決すべきなのです。日韓外交を前進させるためには政治家同士の個人的な外交チャネルを築いていくべきです。日韓国交正常化の時代は政治家同士に個人的な信頼関係が存在していました。国家間に問題があったとしてもお互いが顔の見える対話を繰り返すことで深い交友関係を築いていたのです。日韓双方は先人たちの平和への努力を無にしないためにも、武力によって相手を威嚇するのではなく、胸襟を開くことでお互いの距離感を縮めていく努力をすべきです。

弱者に寄り添う政治を期待

 外交において政治家が果たす役割は大きなものがあります。なかでも公明党は日中友好に多くの足跡を残してきました。先日も山口代表が習近平国家主席と会談をしましたが、中国政府要人の深い信頼感のあらわれともいえるでしょう。
 また日韓関係をふり返っても、在日コリアンをはじめとした「永住外国人の参政権問題」に公明党は長年にわたって取り組んできました。常に社会的弱者の側に立ち、温かい眼差しを持っているため、在日コリアンに対する偏見がないのだと感じています。
 憲法改正に対する態度も、よいものは変える、残すべきものは残していくという是々非々のスタンスを保ち、諸外国の信頼も得やすくなっています。自公連立政権のなかにあって、公明党の存在は、韓国や中国に安心感を与えるものだと理解しています。だからこそ結党以来の伝統と実績に満足せず、これまでの蓄積を未来に向けて広げていってほしいです。公明党が頑張ることで東アジア情勢はかなりよくなっていくはずです。
 歴史や外交の問題は政治家だけの問題ではありません。政治家が方針を過たないためにはメディアの監視が必要であり、メディアのチェック機能が働かないときは、私たち市民がしっかりと声をあげていくべきなのです。政治の問題は社会全体で取り組むべき問題です。私はこれからも日韓双方の立場にたってさまざまな意見を発信していきたいと考えています。

<月刊誌『第三文明』2013年8月号より転載>


きむ・へぎょん●韓国・ソウル市生まれ。高校卒業後に日本の明治大学法学部へ留学。のち、早稲田大学アジア太平洋研究科を修了し、2006年より国際弁護士として活動。07年よりジョージ・ワシントン大学総合科学部にて専任講師、ハワイ大学韓国研究センター客員教授などを務め、12年より明治大学法学部助教となる。専門は国際法、韓国法、テロリズム、法による被害者救済。主な著書に『テロ防止策の研究―国際法の現状及び将来への提言』(早稲田大学出版部)、『涙と花札―韓流と日流のあいだで』(新潮社)がある。金惠京(キム・ヘギョン)ホームページ