連載「広布の未来図」を考える――第8回 幸せになるための組織

ライター
青山樹人

沖縄男子部の取り組み

――先日公開された「創価学会の日常ちゃんねる」第6弾、おもしろかったですね。学会員ではない人気ユーチューバーの方が、ニューヨークまで出かけて、SGI-USAを1日体験するという企画です(「【初公開】アメリカの創価学会に潜入したら、巨大すぎて言葉を失った…」7月23日/創価学会の日常ちゃんねる)。

青山樹人 多民族国家であるアメリカのなかでも、ニューヨークはとくに「世界の縮図」のような都市です。創価学会のメンバーも多様なバックグラウンドがあり、なにより明るくてオープンマインドな、他者に開かれた雰囲気が伝わってきましたね。

 ハーレムのアポロ地区の男子部リーダーも途中で登場していましたが、4年前から題目を唱え始めて、昨年、正式に御本尊を受持(じゅじ)して入会したと話していましたね。
 アメリカに限らず、海外の場合、未入会だけどメンバーと一緒に唱題や学会活動などをしばらく実践して、それなりに信心が固まってから入会するというケースは少なくないようです。
 未入会のまま、信仰や学会活動の実践を何年もやって、本人が御本尊を受持したいと願い、組織も了承して「入会」となるのです。 続きを読む

『摩訶止観』入門

創価大学大学院教授・公益財団法人東洋哲学研究所副所長
菅野博史

第91回 正修止観章 51

[3]「2. 広く解す」㊾

(9)十乗観法を明かす㊳

 ⑧道品を修す(1)

 今回は、十乗観法の第六、「道品(どうほん)調適(じょうじゃく)」(三十七道品を調整すること)の段について説明する。十乗観法については、前の観法が成功しない場合に、次の観法に移るという流れとなっているので、ここでも、第五の「識通塞」が成功しない場合という前提で、「道品調適」が必要となるということである。

 (1)三十七道品の説明

 道品(bodhi-pakṣya)とは、菩提分、覚分とも訳される。覚りに役立つものの意である。具体的には七科にわたる、合計三十七種の実践項目が説かれ、これを三十七道品という。初期仏教の最も重要な実践項目であるが、『摩訶止観』で扱われている(後述)ように、大乗にも通じる。以下、簡単な説明をする。 続きを読む

芥川賞を読む 第56回 『春の庭』柴崎友香

文筆家
水上修一

移り変わる街の中に隠された人間の息遣い

柴崎友香(しばさき・ともか)著/第151回芥川賞受賞作(2014年上半期)

他人事のように淡々と描く

 柴崎友香の「春の庭」は、『文學界』に掲載された170枚の作品。4回目の芥川賞候補での受賞となった。
 世田谷のアパートで暮らす太郎は、同じアパートの西という女性の奇妙な好奇心に引っ張られていく。それは、アパートに隣接する個性的な一軒家の中を見てみたいという好奇心である。
「春の庭」とは、その一軒家の部屋や庭を撮影した写真集のタイトルでもある。西は、当時住人だった夫婦の生活の様子も収められているその写真集が好きで、実際に目の前にあるその家の内部を見たいと思い続けていたのである。
 この作品の概要を分かりやすく説明するのはなかなか難しい。最終的には、とあるきっかけから新しく転居してきた家族に招待されたことで、その家の内部をまじまじと見ることができるようになったのだが、物語の規模は、小さく狭い。人生を揺るがすような出来事が起きるわけでもなく、喜怒哀楽がうねるわけでもない。世田谷という町のごく限られたエリアで起きる些細な出来事を淡々と書き連ねていくのだが、そこからは、どこか懐かしく切ない、けれども何か少し不気味な空気が滲み出すのである。 続きを読む

公明党、再建への展望――抜本的な変革を大胆に

ライター
松田 明

【本記事の概要】
●参院選は自公の敗北であると同時に既存政党の敗北だった
●公明党は「存在感がない」「顔が見えない」という指摘
●公明党は何をめざすのか、わかりやすく端的な発信力が必要
●2010年代以降の社会の変化と党勢
●より開かれた党をつくり、支持拡大の多様なあり方を
●多様な動画・音声コンテンツを日常的に発信すること
●「分断」と「憎悪」の罠に取り込まれてはならない

敗北したのは「既存政党」

 参院選の結果、自公は衆議院に続いて過半数を失う結果となった。自民党を含む政権が衆参ともに過半数を割り込むのは、1955年の自民党結党以来はじめてのことだ。
 7月21日の各紙朝刊が軒並み「自公大敗」と大見出しを打ったように、選挙結果は一義的には自民党・公明党の大敗北である。

 ただし、一方では違った選挙結果が指摘されている。
 自公が大敗したにもかかわらず、旧民主党の流れをくむ野党第一党の立憲民主党も議席をまったく伸ばせなかった。同党の比例獲得票は昨年の衆院選の1156万4221票から739万7459票と、417万票近く減った。山口二郎氏や河野有理氏ら政治学者は、それぞれのXで「実質的な敗北」と指摘している。

 日本共産党も衆院選、都議選に続いて大敗。比例区の得票は286万票にまで落ち込んだ。同党の得票が300万を切るのは、1968年の第8回参院選以来である。
 その意味では、いわゆる「リベラル」を自称するこれらの左派政党も退潮傾向にあり、彼らが自公に代わる政権の受け皿と見なされなくなっていることを示している。 続きを読む

参院選と「外国勢力の介入」――戦場は「人間の脳」

ライター
松田 明

各国で続く選挙への介入工作

 参院選の公示日を翌日に控えた7月2日、日本経済新聞が「ロシアによる情報工作の影が日本でも広がってきた」と警告する記事を掲載した(『日本経済新聞』7月2日)。
 7月15日午前、平将明デジタル大臣はオンライン会見で、「参議院選挙とSNS」についての記者からの質問に答え、次のように語った。

外国においては、他国から介入される事例なども見て取れるので、今回の参議院選挙も一部そういう報告もあります。検証が必要だと思いますが、そういったことも注意深く見ていく必要があるのだろうと思っています。(デジタル庁HP「大臣会見」

 昨年12月、ウクライナの隣国であるルーマニアの憲法裁判所は、11月におこなわれた同国の大統領選挙の結果を「無効」とする判断を下した。
 無名の候補者ジョルジェスク氏が本命視されていた首相の得票を上回る結果になったのだが、TikTokなどで外国勢力の介入による情報操作の疑いが浮上したためだ。 続きを読む