認知症や国際結婚など、大きな問題を描いた名作
𠮷目木(よしめき)晴彦著/第109回芥川賞受賞作(1993年上半期)
芥川賞らしからぬ大きな物語
第109回芥川賞を受賞したのは、𠮷目木晴彦の「寂寥郊野」(せきりょうこうや)だった。当時36歳。『群像』(1993年1月号)に掲載された180枚の作品だ。
賛否両論、意見が分かれることも多い芥川賞選考会だが、選評を読んでみるとほぼ満場一致での授賞決定だったようだ。𠮷目木はすでに別作品で「第10回 野間文芸新人賞」や「第19回 平林たい子文学賞」を受賞している実力者だから、その安定感は抜群だったのだろう。 続きを読む