池田SGI会長が緊急提言――NPT運用検討会議に寄せて

ライター
松田 明

マスコミ各社が一斉に報道

 池田大作SGI(創価学会インタナショナル)会長は、8月1日からニューヨークの国連本部で開幕する「NPT(核兵器不拡散条約)運用検討会議」に寄せた「緊急提言」を発表した。
 7月25日にNHKやすべての全国紙電子版が一斉に報じ、26日付の聖教新聞に提言の全文が掲載された。
 NPT(Nuclear Non-Proliferation Treaty/核兵器不拡散条約)は、核兵器廃絶への交渉が進展せず、むしろ核兵器開発や保有への動きを見せる国が増えていた1968年に成立。1970年に発効した。
 NPTでは「1967年1月1日より前に核兵器を保有し、爆発させた国」を「核兵器国」(米国、ロシア、英国、フランス、中国)として核兵器の保有を認める一方、それ以外の国である「非核兵器国」には核兵器の取得を禁止し、非核兵器国の原子力活動に対してIAEA(国際原子力機関)による保障措置(査察や検証)の実施を義務づけている。(参照:国際平和拠点ひろしまウエブサイト
 主要な内容は、①非核兵器国による核兵器取得の防止(核不拡散)、②核兵器国は核軍縮交渉を誠実におこなう義務を負う、③非核兵器国は「原子力の平和利用」を「奪い得ない権利」として有する、の3点。
 締約国数は191か国・地域(2021年7月現在)。核兵器の保有を公言している北朝鮮が締結国になっている一方で、核兵器を保有しているインド、パキスタン、すでに核兵器を保有していると推定されているイスラエルは未加入。2011年に独立して国連加盟した南スーダンは非核兵器国であるが未加入だ。
 発効から25年を経た1995年に再検討・延長会議が開かれ、無期限延長と運用検討プロセス強化などが決定された。以来、5年ごとの2000年、2005年、2010年、2015年と運用検討会議が開催されたが、2020年の会議は新型コロナウイルスの影響で延期になっていた。
 日本政府は本年8月の運用検討会議に、日本の首相としてはじめて岸田文雄首相が出席することを発表している。

「核戦争に勝者なし」

 2022年1月3日、核兵器国5カ国は「核戦争の防止と軍拡競争回避に関する5核兵器国首脳の共同声明」を発表した。
 声明は冒頭で「核兵器国間の戦争の回避及び戦略的リスクの軽減を我々の最も重要な責務」とし、「核戦争に勝者はなく、決して戦ってはならない」ことを確認している。
 このたびの池田SGI会長の「緊急提言」は、まず核兵器廃絶に向けた本格的な核軍縮が進んでいないばかりか、核兵器が再び使用されかねないリスクが冷戦後でもっとも危険なレベルにまで高まっていることを懸念。
 1月の5カ国首脳の共同宣言が確認した「核戦争に勝者はなく、決して戦ってはならない」に触れ、〝核戦争に対する自制〟という一点を決して踏みにじる意思がないことを、すべての核兵器国が改めて表明してはどうかと促している。
 そのうえで、8月のNPT運用検討会議の最終文書に、以下の3点を盛り込むことを緊急提案した。

一、1月の共同声明について核兵器国の5カ国が今後も遵守することを誓約し、NPT第6条の核軍縮義務を履行するための一環として、直ちに核兵器のリスクを低減させる措置を進めること。
一、その最優先の課題として、「核兵器の先制不使用」の原則について、核兵器国の5カ国が速やかに明確な誓約を行うこと。
一、共同声明に掲げられた“互いの国を核兵器の標的とせず、他のいかなる国も標的にしていない”との方針を確固たるものにするため、先制不使用の原則に関し、すべての核保有国や核依存国の安全保障政策として普遍化を目指すこと。
「NPT(核兵器不拡散条約)運用検討会議に寄せて」7月26日

〝他国〟ではなく〝自国〟を変える視点

 緊急提言で池田SGI会長がもっとも焦点としたのが「核兵器の先制不使用」だ。
 池田会長は、これまでの核抑止政策の主眼が、核兵器の使用をいかに〝他国〟に思いとどまらせるかにあったことを指摘。その発想が核保有国のさらなる軍拡を招いてきたとして、これまで〝他国〟に向けてきた厳しいまなざしを〝自国〟の核政策がはらむ危険性に向けるよう促している。
 どうすれば〝他国〟の核使用を思いとどまらせるかという発想を捨て、「核戦争の防止」のために〝自国〟として何ができるのかを真剣に検討し具体的措置を進めるべきだと述べているのだ。
 このパラダイム転換への突破口として、各国が「核兵器の先制不使用」を明確に示し合うよう提唱している。
 池田会長は、戸田記念国際平和研究所が出版した研究書籍『核兵器禁止条約――世界の核秩序の変革に向けて』の内容に言及。「核兵器の先制不使用」方針がもたらす効果として、2020年6月に中国とインドが係争地域で武力衝突した際のことに触れた。
 すなわち、両国が以前から「核兵器の先制不使用」の方針を示していたことが安定剤として機能し、危機のエスカレートが未然に防がれたという事実だ。
 さらに池田会長は、

この方針が核保有国の間で定着していけば、核兵器は“使用されることのない兵器”としての位置付けが強まり、核軍拡を続ける誘因が減るだけでなく、“核の脅威の高まりが新たに核保有を求める国を生む”という核拡散の解消にもつながる

とする、研究書籍の指摘を紹介した。
 そのうえで、「核兵器の先制不使用」方針はこうした安全保障面のポジティブな循環だけにとどまらず、

世界に緊張と分断をもたらしてきた“核の脅威による対峙”の構造を取り除くことで、核軍拡競争に費やされている資金を人道目的に向けていくことも可能となり、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)や気候変動問題をはじめ、さまざまな脅威にさらされている大勢の人々の生命と生活と尊厳を守るための道が、大きく開かれるに違いない

とも述べている。
 前回2015年のNPT運用検討会議では最終文書が採択できなかった。池田会長は8月からの会議を絶好の機会として、核兵器国の「核兵器の先制不使用」原則の確立と、その原則への全締結国の支持を最終文書に盛り込むことを目指せと呼びかけている。
 運用検討会議の最中の8月6日には、グテーレス国連事務総長が広島での平和祈念式典に出席する予定だ。
 創価学会は第2代戸田城聖会長の「原水爆禁止宣言」(1957年)を原点に、核廃絶への運動を世界規模で展開してきた。ICANがノーベル平和賞を受賞した式典には、被爆者代表と国際パートナーとしてSGI代表が、ノーベル賞委員会から招かれている。
 核兵器廃絶への機運に暗雲が立ち込めている時だからこそ、禍を転じて新たな時代を開けという池田SGI会長の信念の呼びかけに耳を傾け行動していきたい。

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