アジアに広がる創価の哲学(上)――発展著しいインド創価学会

ライター
青山樹人

「仏法西還」の誓願

 池田大作SGI(創価学会インタナショナル)会長が世界への平和旅の第一歩をしるしたのは、創価学会第3代会長に就任した1960年の、10月2日。今年で60年目となる。
 アーノルド・J・トインビーが英訳版『人間革命』に序文を寄せ、「創価学会はすでに世界的出来事である」と書いたのは1972年のことだ。
 この大歴史学者が言明したとおり、SGIは今や192ヵ国・地域に広がる世界最大の在家仏教運動の連帯として地球を包んでいる。
 なかでも近年、発展著しいのがインド創価学会(BSG=バラット創価学会)だ。バラットとはヒンディー語でインドを意味する。
 インドは仏教発祥の地でありながら、12世紀ごろにはヒンズー教や西方から侵入したイスラムにほぼ全土を覆われていた。
 しかし13世紀の日蓮は、仏教が月氏(インド)から日本へと東漸したことを述べたうえで、

日は東より出づ日本の仏法の月氏へかへるべき瑞相なり(「諌暁八幡抄」)

と、末法の時代には日蓮仏法が日本から世界へと流布され、必ずインドへも西還していく確信を繰り返し綴っていた。
 この「仏法西還」の実現を誓って、池田会長が初めてインドの地を踏んだのは1961年2月。当時、もちろんインドに学会員は1人もいなかった。
 第二次世界大戦後、まだ混迷と戦乱の絶えないアジアへ日蓮仏法を流布すること(東洋広布)は、戸田城聖・第2代会長の悲願であった。
 日蓮の700年前の宣言を現実のものにしようと誓願したのが戸田会長であり、その戸田会長の願業を受け継いで、池田会長は世界へと飛び立った。

「出でよ! 幾十万の山本伸一」

 1961年の初訪印の折、会長は仏法西還のさきがけとして、釈尊が成道したブッダガヤの地に、許可を得て「東洋広布」の石碑などを埋納する。
 このときの胸中を、池田会長は自身の名を山本伸一とした小説『新・人間革命』にこう記している。

 アジアに広宣流布という真実の幸福と平和が訪れ、埋納した品々を掘り出す日がいつになるのかは、伸一にも測りかねた。しかし、それはひとえに彼の双肩にかかっていた。
 〝私はやる。断じてやる。私が道半ばに倒れるならば、わが分身たる青年に託す。出でよ! 幾万、幾十万の山本伸一よ〟(第3巻)

 18年後の1979年2月。第3代会長としての最後の外国訪問もインドであった(帰路、香港に立ち寄って帰国)。
 会長は、デサイ首相やパジパイ外相と会談。デリー大学やネルー大学などを訪問している。この時、ニューデリーのホテルでの懇談会に集ったインド創価学会の草創のメンバーは約40人であった。
 会長は、ガンジスの流れも一滴の水から始まると語り、自身がその一滴であると信じて、未来を信じて前進しようとメンバーに呼びかけた。
 あれから40年。アジアの大国として隆盛するインドには今、師の呼びかけに応じるかのように、20万人を超す創価学会のメンバーが誕生している。メンバーたちの合言葉は「アイ・アム、シンイチ・ヤマモト!」(私が山本伸一だ!)。
 池田会長と直接出会っていない青年たちが、会長の誓願をわが誓願として、不思議にもインドの大地に陸続と涌き出ているのである。
 2019年9月21日。首都ニューデリー南部の閑静な住宅街に、インド創価学会の新たな本部が落成した。
 地上4階、地下1階。白亜の石壁にはインド創価学会のシンボルマークが金色に輝く。敷地には菩提樹が高くそびえ、大きなガラス窓から光が射しこむ。
 落成式には日本から創価学会の原田会長、谷川主任副会長、永石婦人部長、訪印中の志賀青年部長ら「創価学会青年文化訪印団」のほか、インドはじめ南アジア各国の代表ら約500人が出席。インド全土の268会場に中継された。

「創価の哲学はインドの時代精神に」

 さらに翌22日には、首都郊外のグルガオンにある「インド創価菩提樹園」の新たな中心施設として、3000人収容の大礼拝室を持つ「池田講堂」が開館。
 原田会長らがインドの代表と共にテープカットをおこない、開館記念の日印青年部総会が265会場と中継を結んで開催された。
 約20万坪の敷地を誇る研修施設・インド創価菩提樹園には、その名のとおりおよそ3000本の菩提樹が豊かな緑を茂らせている。
 初訪問の折に池田会長がブッダガヤに埋納した「東洋広布の碑」は、インド創価学会が10万人の陣容を達成した2015年に、この創価菩提樹園に移設された。
 池田会長はこれまで5度、インドを訪問。
 ネルーの盟友でありインドの良心と敬愛されてきたJ・P・ナラヤン氏、ラジーブ・ガンディー首相や妻のソニア・ガンディー氏、ナラヤナン大統領ら、数多くのリーダーと交友を深めてきた。
 デリー大学をはじめとする多くの名門大学から名誉学術称号を受章。インド文化関係評議会のカラン・シン会長、世界法律家協会会長を務めたベッド・P・ナンダ氏や、ガンジー研究の第一人者で、ガンジー記念館の館長も務めたインド・ガンジー研究評議会議長のN・ラダクリシュナン博士、タゴールの生家に創立されたラビンドラ・バラティ大学の副総長だったバラティ・ムカジー氏との対談集も発刊されている。
 池田会長と幾度も語らいを重ね、対談集も発刊した、同国を代表する識者の1人であるインド文化国際アカデミーのロケシュ・チャンドラ理事長は、こう語っている。

 池田先生は、「価値創造」の人生の素晴らしさを、私たちが納得し、理解できるように訴えておられます。先生は、世界中に人間革命の哲学を広げられた「ヒューマニズムの啓発者」です。
 仏陀は人間であり、人類の偉大な教師である――この釈尊に対する先生の視点は、先生ご自身を言い表しているように思えてなりません。(聖教新聞2018年12月19日付)

 仏教の精神性は、インドの未来を豊かにするものです。池田先生が訴える創価の哲学も、インド社会の発展の中核をなす時代精神になりつつあります。(同)

「アジアに広がる創価の哲学」:
アジアに広がる創価の哲学(上)――発展著しいインド創価学会
アジアに広がる創価の哲学(中)――異なる価値観への尊敬と共生
アジアに広がる創価の哲学(下)――池田会長が結んだ信義の絆

「青山樹人」関連記事:
第43回「SGIの日」記念提言を読む――民衆の連帯への深い信頼
共感広がる池田・エスキベル共同声明
学会と宗門、25年の「勝敗」――〝破門〟が創価学会を世界宗教化させた
書評『新たな地球文明の詩(うた)を タゴールと世界市民を語る』
カストロが軍服を脱いだ日――米国との国交回復までの20年


あおやま・しげと●東京都在住。雑誌や新聞紙への寄稿を中心に、ライターとして活動中。著書に『最新版 宗教はだれのものか 世界広布新時代への飛翔』、『宗教は誰のものか』(ともに鳳書院)など。