コロナ禍で問われる政党の能力――ヒットを打つ公明党

ライター
松田 明

自宅療養者の重症化防ぐ

 6月から上昇の一途だった東京都の新型コロナ陽性者数が、8月下旬に入って減少トレンドに移った。予断は許さないものの、1日100万回ペースのワクチン接種が着実に継続していくなかで、日本のワクチン接種回数は世界的にも上位になっている(「NHK特設サイト「世界のワクチン接種状況」)。
 さらなる感染予防の徹底でなんとか減少傾向を維持したい。
 政府が5月に大規模接種センターを設置したあとも、立憲民主党の枝野代表は「ワクチン頼みではなく検査拡大にかじを切るべき」などと発言していた。
 立憲民主党や、ワクチン確保と接種の予算に反対した日本共産党などが仮に政権をとっていたなかでコロナ禍が起きていたら、大変な惨状になっていただろう。

 感染力が従来株より格段に強いと見られるデルタ株の蔓延で、全国的に医療体制は逼迫している。
 厚生労働省の発表(9月3日)によると、自宅療養中の人が9月1日時点で13万5674人となっている。
 こうした状況に、連立与党の公明党は8月20日、自宅療養者の重症化を防ぐための施策などを盛り込んだ緊急要請を政府に提出。
 8月25日の衆議院厚生労働委員会では、公明党の高木美智代議員があらためて政府の見解をただした。
 高木氏は、これまで軽症・中等症患者に使用されてきた中和抗体薬「ロナプリーブ」を投与する「抗体カクテル療法」を、外来患者も含めて受けられるようにすること。また、救急搬送要請があった軽症者に一時的に酸素吸入をおこなう酸素ステーションで、肺炎治療薬レムデシビルなどの投与を可能にして積極的に重症化を防ぐべきだと指摘した。
 抗体カクテル療法は重症化リスクを下げることが期待されるが、24時間以内にアナフィラキシーなど重い副反応があらわれる可能性があり、これまで入院患者や宿泊療養施設の患者にのみ使用されてきた。
 答弁に立った田村憲久厚労相は、

「緊急の症状が出る可能性があるので、しっかり対応をしてもらえる医療機関で、外来もいよいよ始めていかなければならないと思っている」(朝日新聞デジタル」8月25日

と明言。厚労省は外来診療にも使用できる方針を決めた。
 酸素ステーションでのレムデシビル使用についても厚労相は「非常に重要だ」との認識を示し、

 医師・看護師が対応できる臨時の医療施設で同薬が使用可能であることを周知するとした。(「公明ニュース」8月26日

妊婦への優先接種を通達

 これに先立つ8月23日、厚生労働省は、妊婦やその配偶者が希望した場合、できるだけ早期に新型コロナワクチンの接種ができるよう配慮を求める事務連絡を各自治体に発出した。

 妊娠中の女性について、厚生労働省は新型コロナウイルスに感染すると特に妊娠後期は重症化しやすく、早産のリスクも高まるとして、優先してワクチン接種を行うよう全国の自治体に通知しました。(「NHK NEWS WEB」8月25日

 8月11日に千葉県内で妊娠8カ月の妊婦が感染。入院先が見つからないまま自宅で出産し、赤ちゃんが死亡するという痛ましい出来事があった。
 公明党は19日にひらいた党新型コロナウイルス感染症ワクチン・治療薬開発推進プロジェクトチーム(座長=高木美智代衆院議員)の会合などで、自治体が妊婦と配偶者などへの優先接種をするよう政府に要望していた。
 妊婦へのワクチン接種については、これまでも「流産や早産の危険性がある」「胎児が死亡する」等のデマが流布。

 事務連絡では、妊婦が感染した場合、特に妊娠後期は重症化しやすく、早産のリスクも高まるとされていることや、関係学会が妊婦への接種を呼び掛けていることに言及。また、日本で承認されているコロナワクチンについて「妊娠、胎児、母乳、生殖器に悪影響を及ぼすという報告はない」と強調した。(「公明ニュース」8月25日

歳費返納を義務付け

 コロナ対策以外でも、大きなニュースがあった。
 8月26日に、自民・公明両党による「与党歳費法に関する検討プロジェクトチーム」が会合を開き、公職選挙法違反で当選無効となった国会議員について歳費返納を義務付ける法改正の骨子案で合意した。
 これは、有罪判決が確定した場合に、当選時から支給された歳費の4割を返納するよう義務付けるもの。

 刑事責任を問われた国会議員に対する歳費をめぐっては、公明党が一部の支給停止や返納を義務づける法案の骨子をまとめましたが、自民党内で憲法との整合性などを丁寧に議論するよう求める意見が出されたことから、先の国会での提出が見送られ、両党の作業チームが検討を進めてきました。(「NHK NEWS WEB」8月26日

 2019年の参議院選挙で当選した河井案里氏が、その後、公職選挙法違反(買収)の罪に問われ、有罪判決が確定して当選無効となった。
 ところが、現行の法律では国会議員は辞職するまで歳費を受け取れるようになっており、河井氏にも約4900万円の歳費などが支給されていた。
 公明党はいち早く検討を開始し、5月に歳費法改正案の骨子をまとめて自民党に提出していた。

 公明党内には当初、全額返還を求める案もあった。ただ、当選無効となった議員の議会活動について「無効にすれば在職時の採決結果が覆りかねない」として有効とみなすべきだと整理。議会活動が有効である以上、一定の報酬は支払われるべきだと判断し、返納額は(1)歳費の4割 (2)期末手当の全額 (3)文書通信交通滞在費の4割――にとどめた。(「時事ドットコム」5月27日

 このほど合意した骨子案は公明党案に沿ったもので、今後、野党にも協議を呼びかけていく。
 政党に問われるのは「何を言ったか」ではなく「何を実現したか」。
 政権批判ありきで政府の〝逆張り〟ばかりに走る政党や、不安と不満を煽るだけで何も実現しないような政党では、国民の暮らしと安全は守れない。
 危機のなかで、どの政党が着実に政治を前に進めているのか、しっかり見極めていきたい。

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