特集⑲ 21世紀の広布の山を登れ――反転攻勢の火蓋が切られる

ライター
青山樹人

悪僧たちの〝同士討ち〟

 日蓮大聖人は、自身を斬首しようとし、さらに佐渡に流罪した鎌倉幕府について、こう述べている。

日蓮・御勘気をかほらば仏の御使を用いぬになるべし、梵天・帝釈・日月・四天の御とが(咎)めありて遠流・死罪の後・百日・一年・三年・七年が内に自界叛逆難とて此の御一門どしうち(同士打)はじまるべし(御書全集911ページ)

 日蓮正宗の内部では、その醜い〝同士討ち〟が激化していた。
 日達法主の急死に便乗して法主の座を盗み取った日顕に対し、日達の親衛隊を気取っていた正信会僧侶たちは、山崎正友の指図を受け、相承の正当性についての「質問状」を突きつけた。
 1981年1月、彼らは静岡地裁富士支部に日顕に対する「管長地位不存在確認並びに職務執行停止仮処分」を申請する。
 弁護士である山崎の指南によるものに違いないが、この申請は山崎正友逮捕の3日前である。翌日には、彼らと脱会者がつくる機関紙が「阿部師に相承なし」という臨時増刊号を発行した。
 追い詰められた日顕だったが、この直後に山崎が逮捕されると、すぐさま正信会の僧170人を「登山禁止」処分にした。
 最大の弱みである相承問題を追及する勢力を追放すると同時に、日達の弟子勢力を一掃することで、宗内の権力基盤を固めようとしたのである。日顕は、82年10月まで8回にわたり、計182人の正信会僧を擯斥処分にした。
 数年にわたり学会攻撃を続けてきた忘恩の僧たちは、軍師である山崎を逮捕され、ニセ法主に本山を乗っ取られたうえに自分たちが日蓮正宗から追放されてしまったのである。
 SGI会長が世界一周の平和旅から帰国した10日後の7月18日、北条会長が逝去し、秋谷栄之助氏が第5代会長に就任した。
 8月、池田SGI会長は再びハワイへ出発し、第2回SGI総会に臨む。時は満ちようとしていた。

「嗚呼黎明は近づけり」

 そして、秋。ついにSGI会長は〝反転攻勢〟の火蓋を切った。
 1981年10月31日。第11回創大祭に創立者として招かれたSGI会長は、「歴史と人物を考察 迫害と人生」と題して、若き俊英たちに講演した。
 2年半前に会長辞任の本部総会があった同じ壇上。そこから〝反転攻勢〟がはじまったのである。
 創大祭実行委員会の学生たちは、演壇に向かうSGI会長の手にあった原稿用紙の束に、真っ赤になるほど修正の跡があることに気づいた。講演直前まで、真剣に推敲に推敲を重ねていた様子がうかがえた。
 11月8日。まず大阪へ。翌日には四国・徳島空港へ移動。前年に海から師のもとに馳せ参じた四国の同志のもとに、今度は師が空から舞い降りた。当時、徳島では宗門の重職にある極悪の僧が会員を苦しめていた。その徳島に、SGI会長は乗り込んだのである。
 続いて香川の四国研修道場では、青年たちと膝を交えて推敲を重ね、学会歌『紅の歌』を作詞して発表した。
 大阪に戻り、関西戸田記念講堂で開かれた第3回関西総会では、金扇を手に勇壮に、旧制大阪高等学校の全寮歌「嗚呼黎明は近づけり」の指揮を執った。
 そのまま中部指導に移り、激励旅は11月30日まで続いた。
 12月8日、空路、九州・大分の地へ。大分には正信会の中心者のひとり浜中和道の寺があり、学会員弾圧の狂気が吹き荒れていたのである。10日、その地で長編詩『青年よ、二十一世紀の広布の山を登れ』が発表された。
 SGI会長の魂からほとばしった勇壮な詩は、〝僧衣の権威〟に縛られ苦しめられてきた幾百万の民衆に沸々たる勇気と希望を与え、青年を立ち上がらせていった。

「桂冠詩人」称号が贈られる

 詩を武器に、横暴な鉄鎖を切り、再び人間主義の戦を開始したSGI会長。
 不思議にもこの81年12月、世界芸術文化アカデミーがSGI会長に「桂冠詩人」の称号を贈っている。
 ダンテ、ペトラルカ、ドライデン、ワーズワースなどの名前が並ぶ、古代ギリシャ・ローマから続く最高峰の詩人への称号。7月にサンフランシスコで開かれた世界詩人会議の席上で決議されていたものだった。
 寒風のなか、ダウンジャケットに身を包み、小さなマイクロバスで山道を何時間も揺られながら、大分から熊本へ。SGI会長はもっとも苦しんだ同志たちのもとを駆けめぐった。
 どの地でも、言うに言われぬ悔しさと苦しみに耐え、この日を待っていた人々の涙と万歳の叫びが溢れた。
 82年1月には、雪の舞う秋田空港に降り立った。秋田もまた、悪侶らに苦しめられた土地だった。
 SGI会長の来県を聞きつけた同志らは、降りしきる雪のなか、三々五々、遠慮がちに空港から秋田文化会館への道々に立ちつくしていた。そのたびにSGI会長は車を降り、記念撮影をして同志を激励した。
 数年もの間、正体の見えない暗雲が学会を包み、師弟の絆が分断されようとしていた。草創から岩に爪を立てるようにして地域広布に尽くしてきた学会員が、魔物と化した僧侶らにいじめられ続けた。当時の学会首脳部は、宗門の権威に屈したままだった。
 しかし、SGI会長は微動だにしていなかった。そして嵐のなかで、あの地でもこの地でも「謀略を見抜け」と青年たちが立ち上がった。その青年の熱情に応えるように、SGI会長は鉄鎖を断ち切って進軍を開始した。

※この記事は『最新版 世界広布新時代への飛翔』(青山樹人著/鳳書院)をベースに加筆修正したものです。

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あおやま・しげと●著書に『宗教はだれのものか』(2002年/鳳書院)、『新装改訂版 宗教はだれのものか』(2006年/鳳書院)、『最新版 宗教はだれのものか 世界広布新時代への飛翔』(2015年/鳳書院)など。WEB第三文明にコラム執筆多数。