特集③ 池田第3代会長の誕生――仏教史を塗り変えた60年

ライター
青山樹人

世界広宣流布への旅立ち

 池田大作氏が創価学会の第3代会長に就任して、本年(2020年)で60年になる。
 戸田会長亡きあとの創価学会を実質的に支えたのが、当時はまだ30歳の池田大作総務であった。
 1947年に19歳で戸田会長と出会い、創価学会に入会した青年は、ただ1人で苦境の中の師を守り、常に弘教拡大の突破口を開いて、75万世帯達成の推進力となった。
 1960年の5月3日、全会員の強い推挙の声を得て、32歳の池田総務が第3代会長に就任。奇しくも、日蓮大聖人が立正安国論を幕府に上呈し、本格的な宗教革命の狼煙を上げてより700年の年であった。
 そして、会長就任当時には百数十万世帯であった学会は、そこからの10年で750万世帯という日本最大の宗教団体に発展するのである。
 会長は同時に、世界広宣流布への道を開くべく、各国に点在する会員の指導激励に地球を東奔西走した。その行動はそのまま、世界を結ぶ「平和」「文化」「教育」の大道を開く戦いでもあった。
 会長就任から5カ月後には北南米指導に出発。各地で地区が相次いで結成されていった。
 翌1961年には、香港、セイロン(現スリランカ)、インド、ビルマ(現ミャンマー)、タイなど、アジア諸国を歴訪する。その途次で、早くも現在の東洋哲学研究所や民主音楽協会の設立が構想された。
 ひとくちにアジアといっても、その文明の背景にはイスラム教、ヒンズー教、儒教、大乗仏教、上座部仏教、道教など、さまざまな思想や宗教が存在している。それらを研究し、互いの精神性を深く理解し合うところからしか文明間の対話は成り立たない。
 また、大乗仏教の精髄であり、日蓮仏法の基盤である法華経思想についても、さらに学術的に研究を重ね、人類の諸問題に資する英知を導き出す必要があることを会長は洞察していた。真に文明間の対話を民衆次元で促進し、広範な庶民が世界の多様性に触れ、異なる文化を尊敬していくことの重要性を考えていた。

平和・文化・教育への布石

 航空機時代がようやく開幕し、世界の著名な芸術家が少しずつ日本を訪れはじめたばかりの時期に、会長は民主音楽協会を設立し、富士美術館の開設に着手した(1983年には東京富士美術館も開館)。いずれも、世界最高峰の音楽や美術に、もっと庶民が気軽に触れられる時代を開こうとする先見の賜物であったといってよい。
 1968年には、東京・小平の地に中高一貫教育の創価学園が開校した。さらに71年には、富士を望む八王子の丘陵に創価大学が開学した。大学紛争で教育の場が混迷していた時代に、池田会長は初代・牧口会長以来の宿願であった「創価教育」を実践する学舎を開設していったのである。
 73年には、関西創価学園が開学。その後、東京と大阪に小学校、札幌に幼稚園が設置され、幼稚園から大学院までの創価一貫教育が完成していく。
 現在では、香港、マレーシア、シンガポール、ブラジル、韓国などにも創価教育の学舎が開かれている。
 また、2001年には全米の注目を集めるリベラルアーツ・カレッジ(教養大学)として、アメリカ創価大学オレンジ郡キャンパスがオープン。新設大学にもかかわらず、早くも全米のリベラルアーツ・カレッジの上位50位以内を定位置とし、卒業生たちは欧米の超名門大学院などに進学を果たしている。
 池田会長は広宣流布の指導者として、宗門の外護にも全力を投じた。1964年には、学会の寄進で大石寺に大客殿が落成。鉄筋コンクリート二重シェル構造の、日本建築学会賞、建築業協会賞に輝いた戦後日本を代表する名建築である。
 当時、日本の既成仏教のどの本山を探しても、大客殿に並ぶ規模と質の客殿を持っていた宗派などない。すでに日蓮正宗は戦後の貧しい地方寺院の様相から、一転して他宗もうらやむ偉容を整え、参詣者でにぎわっていた。

ナショナリズムを超える連帯

 日蓮大聖人は、自身に弾圧を加えてきた鎌倉幕府を「わづかの小島のぬし」と言い切っている。「世界宗教」とは一面から言えば、単に複数の国々に広まった宗教を言うのではなく、ナショナリズムを乗り越えた宗教のことであろう。
 普遍性を持った宗教は、一国の為政者など見下ろさせるまなざしを民衆に与える。揺るぎない絶対的なものと思われがちな国家権力すら〝相対化〟してしまう。
 だからこそ、古今東西の為政者はそうした宗教の萌芽を排除し、宗教を体制の枠内へと取り込むことに腐心してきた。徳川幕府はキリスト教を禁教とし、仏教界に布教を禁じ、寺檀制度を敷いた。明治政府は信教の自由に、

安寧秩序ヲ妨(さまた)ケス及(および)臣民タルノ義務ニ背(そむ)カサル限ニ於テ(大日本帝国憲法第二八条)

という条件をつけ、一方で国家神道なるものを推進した。
 不幸なことにとりわけ近世以後の日本史のなかで、宗教は人々の内心を自立させるものではなく、正反対に体制に従属させる装置として働いてきたのである。日本が未曽有の戦争に突き進み、幾百千万の自国民やアジアの民衆に塗炭の苦しみを与えたのは、その必然の結末でもあった。
 民衆を自立させ〝善き市民〟として社会に参画させながら、なおかつ偏狭なナショナリズムを超克していく普遍的な精神性――。日本には、それが決定的に欠けていた。
 創価学会が歴史に果たした役割は、この転換にあるといえる。学会は民衆に仏道修行の実践を教え、深遠な教義を開放し、宗教的自立を促してきた。聖職者という他者に依存しなければ人々の「生」が完結しないという旧来の構造を打開し、民衆を自分の人生の主人公に変えてきた。
 民衆が、自分の信仰で自らの宿命転換に挑戦していく。庶民が強く賢明になり、庶民が庶民に手をさしのべて励まし合う世界。いわば学会は、救いを乞い求める側だった人々を、勇敢に人々を救う側へと変えてきたのである。
 創価学会にめぐりあい、池田会長の励ましに触れ、悩み多き庶民たちはそのままの姿で、〝地涌〟の誇りも高く立ち上がった。

※この記事は『最新版 世界広布新時代への飛翔』(青山樹人著/鳳書院)をベースに加筆修正したものです。

【創価学会創立90周年特集】 特集① 特集② 特集③ 特集④

scan-701

『最新版 宗教はだれのものか 世界広布新時代への飛翔』
青山樹人

価格 1000円+税/鳳書院/2015年10月7日発売
→Amazon
→セブンnet
 
 


あおやま・しげと●著書に『宗教はだれのものか』(2002年/鳳書院)、『新装改訂版 宗教はだれのものか』(2006年/鳳書院)、『最新版 宗教はだれのものか 世界広布新時代への飛翔』(2015年/鳳書院)など。WEB第三文明にコラム執筆多数。