コラム」カテゴリーアーカイブ

連載エッセー「本の楽園」 第25回 ウディ・アレンの映画術

作家
村上 政彦

 TVを視ていたら、あるCMで太宰治を文豪といっていた。太宰は好きな作家なのだが、これには違和感があった。確かに、すぐれたいい作家である。しかし彼には、文豪という冠は似合わない。
 日本文学の中で文豪といえば、夏目漱石、森鴎外、谷崎潤一郎あたりだろう。彼らには文豪にふさわしい威信がある。重みがある。太宰には、それがない。いや、ないことが魅力なのだ。 続きを読む

「給付型奨学金」がついに実現――〝貧困の連鎖〟を断て

ライター
松田 明

与党としての「幅の広さ」

 自公連立政権が5年目に入った。
 この1月13日に東京商工リサーチが発表したところによると、2016年における負債1000万円以上の企業倒産は前年比4.2%減の8446件となり、26年ぶりの低水準になった。
 賃上げも3年連続で2%台を続けており、自公政権の経済政策の成果が、さまざまな数字で明らかになってきている。 続きを読む

「分断」を煽っているのは誰か――ポピュリズムに走る野党

ライター
松田 明

〝情念〟に揺さぶられる先進諸国

 2017年元日の各紙社説は、いずれも「分断を煽るポピュリズム」への警鐘を鳴らしている。

 「反グローバリズム」の波が世界でうねりを増し、排他的な主張で大衆を扇動するポピュリズムが広がっている。国際社会は、結束を強め、分断の危機を乗り越えなければならない。(「読売新聞」)

 昨今、各国を席巻するポピュリズムは、人々をあおり、社会に分断や亀裂をもたらしている。民主主義における獅子身中の虫というべきか。(「朝日新聞」)

 トランプ現象で見られたように、選挙が一時の鬱憤晴らしになれば、民主主義そのものの持続可能性が怪しくなっていく。(「毎日新聞」)

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連載エッセー「本の楽園」 第24回 カルヴィーノの構想する30世紀文学

作家
村上政彦

 僕がイタロ・カルヴィーノを信頼するのは、彼が文学への信頼を手放さないからだ。

 文学の未来に対する私の信頼は、文学だけがその固有の方法で与えることのできるものがあるのだと知っていることによっています。

 カルヴィーノを知ったのは、僕が小説家としてデビューしたすぐのころ、手探りで自分の世界を構築しようとしていた時期だった。『冬の夜ひとりの旅人が』という長篇小説を読んだ。 続きを読む

書評『新たな地球文明の詩(うた)を タゴールと世界市民を語る』

ライター
青山樹人

インドを目覚めさせた「詩聖」

 およそ10年後の2020年代後半には世界一の人口に達するインド。近年、ようやく日本はインドとの間の経済交流、また安全保障を含む政治対話に、本格的に乗り出した。
 とはいえ、私たち日本社会はインドという大国をどこまで知っているのか。
 インドを理解し、語るうえでの〝肝〟ともいえる存在が、ラビンドラナート・タゴール(1861-1941)だろう。 続きを読む