コラム」カテゴリーアーカイブ

政権に求められる着実な成果――「核軍縮」と「雇用」で前進

ライター
松田 明

「賢人会議」からの提言

 佐川・元国税庁長官の証人喚問や電撃的な中朝首脳会談の報道ばかりが溢れた年度末だったが、見落としてはならないニュースが2つあった。
 1つは、3月に「核軍縮の実質的な進展ための賢人会議」(以下、「賢人会議」と表記)が、取りまとめた提言を河野太郎外相に提出したことだ。
 この「賢人会議」は、核軍縮の進め方をめぐって核兵器国と非核兵器国、さらに非核兵器国のあいだでも意見の対立が生じている状況を踏まえ、双方の信頼醸成と核軍縮の進展をめざして2017年5月に当時の岸田外相が日本政府として設立を表明したもの。 続きを読む

沖縄伝統空手のいま~世界に飛翔したカラテの源流
第5回 空手普及の功労者(上)糸洲安恒

ジャーナリスト
柳原滋雄

学校教育用に公開された「秘伝の武術」

沖縄における空手の古い歴史は、文献上、検証することができないハンディを抱えている。記録が消失しており、どのような歴史の変遷をたどったかを追うことができないのだ。そのため断片的な記録を三角測量で推測するしか方法がない。多くの史料を薩摩による侵攻時に失ったという説もある。
そうした沖縄で、廃藩置県以前までは、カラテは師匠から弟子に一対一で伝授される「秘伝の武術」にほかならなかった。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第48回 仙人と呼ばれた画家

作家
村上政彦

浮世離れした人のことを「仙人のようだ」という。そこには揶揄と羨望が混じり合っているようにおもえる。画家であり、書家でもあった熊谷守一(くまがい・もりかず)は、ずっとそう呼ばれたらしい。彼の生涯を辿った本書を読んでいると、確かにと頷いてしまう。
熊谷は、1880年(明治13年)に岐阜県で生まれた。父の孫六郎は、いくつも事業を興して初代の岐阜市長となり、のちに上京して衆議院議員になった。生家は、とても裕福だった。
ところが、東京美術学校(現・東京藝大)に入学したあと、父が急死し、莫大な負債が残った。それは周りの人々の奔走で解決したようだが、経済的な支えを失った熊谷は貧困に陥った。 続きを読む

再び、野合と分裂に走る野党――「新党結成」の迷走と波紋

ライター
松田 明

それでも低迷する野党支持率

 3月12日に決裁文書書き換え問題に関する財務省の調査結果が明らかになった。朝日新聞社が直後の17日、18日におこなった電話による全国世論調査では、安倍内閣の支持率は第2次安倍内閣の発足以降で最低の31%という数字になったという。 続きを読む

書評『「本を売る」という仕事』――全国100書店を歩いて見えてきたもの

ライター
本房 歩

「幸福書店」の閉店

 この2月、〝本〟にまつわるニュースがいくつか駆けめぐった。
 東京・代々木上原駅前の書店「幸福書房」が、2月20日に閉店した。1977年に創業し、80年から同地に移転。近隣に住む作家の林真理子氏は、駅前にこの本屋があるのを見たことが、ここに転居を決めた理由の一つだったと述べている。
 林氏のブログなどにたびたび登場するほか、ここで林氏の本を買うと書店が預かって林氏のサインをもらっておいてくれることもあり、真理子ファンの〝聖地〟でもあった。
 家内経営していくには経営者が高齢になったことや、テナントとの契約が切れたことなどが閉店の主な理由には挙げられているが、やはりなんといっても書店の経営そのものが厳しい時代に入っているのだ。 続きを読む