再び、野合と分裂に走る野党――「新党結成」の迷走と波紋

ライター
松田 明

それでも低迷する野党支持率

 3月12日に決裁文書書き換え問題に関する財務省の調査結果が明らかになった。朝日新聞社が直後の17日、18日におこなった電話による全国世論調査では、安倍内閣の支持率は第2次安倍内閣の発足以降で最低の31%という数字になったという。

 他のメディアの調査でも33%(毎日新聞)、38.7%(共同通信)、42%(日本経済新聞)と、バラツキはあるが支持率が軒並み下がったことはまちがいない。
 ただ、この朝日新聞社の調査で興味深かったのは、2月の調査に比べて自民党支持が35%から32%に下がったものの、これほど内閣支持率が下がるなかで、野党への支持がほとんど増えていないことなのだ。(以下、カッコ内は2月の数字)

自民党 32(35)
立憲民主党 11(10)
希望の党 1(1)
公明党 3(3)
民進党 1(1)
共産党 3(4)
日本維新の会 1(1)
自由党 0(0)
社民党 0(1)
日本のこころ 0(0)
その他の政党 0(0)
支持する政党はない 36(38)
答えない・分からない 12(6)
(朝日新聞/3月19日)

 立憲民主党がわずかに1ポイント増えただけで、共産党と社民党に至っては支持が減っている。
 佐川・元国税庁長官の証人喚問で、共産党など野党は「疑惑はさらに深まった!」と、政治ショー化することに余念がなかったが、何ら確証を得ることができなかった。
 この問題は、もはや検察による解明を待つしかないだろう。
 むしろ今の野党各党にとって大事なことは、与党の〝敵失〟に期待することではなく、なぜ国民のあいだに自分たちの支持がいっこうに広がらないのかを真剣に考えることではないのだろうか。

採決なき「新党結成」了承

 3月30日、民進党は両院議員総会で執行部が提案した〝新党結成〟を了承した。
 大塚耕平・代表は会見で〝元民進党議員を中心に〟新党への参加を呼びかけるつもりだと語った。
 わずか半年前にあっけなく分裂した旧民進党系議員が、低迷する支持率に焦って、次の選挙の前にもう一度〝復縁〟しようというのだ。
 これには早くも民進党内外から異論や反発が噴出している。
 大塚代表ら今の民進党執行部が希望の党との合流をまず念頭に置いているのに対し、民進党の常任顧問である岡田克也・元代表は、立憲民主党との合流を優先すべきという立場だ。

 岡田氏は29日、野党再編の時期に関し「立憲民主党と話ができる状況を作り出してからだ」と記者団に語り、大塚氏の提案を「政府・与党に塩を送る結果になりかねない」と批判した。(産経新聞/3月29日)

 民進党と希望の党が1月に統一会派結成の合意まで交わしながら、それが流れたのは、岡田氏や小川敏夫・参議院会長ら立憲民主党への合流を模索するグループが〝分党も辞さず〟という動きを見せているからだ。
 30日の両院議員総会でも、新党結成への議決を行う当初の方針を撤回し、拍手での賛同表明という形にしたのは、党内の分裂を表面化させたくなかったからだろう。
 希望の党の側でも松沢成文・参議院議員が、

 バラバラになってそれでもうまくいかないから結集しましょう…では何がやりたいんですか? そういう理念・政策なき数合わせは政治の不信を生むだけだ。(テレ朝ニュース/3月30日)

と痛烈に批判。希望の党執行部は、民進党との合流を前に松沢氏ら反対派の〝分党〟へ向けた協議を開始する。
 皮肉なことに、民進党と希望の党、双方の執行部が模索する「新党結成」は、またまた野党の分裂を生むことになりそうだ。

共産党との共闘で崩壊

 一方、岡田氏らがラブコールを送る立憲民主党の枝野幸男・代表は30日、「新党結成」に参加しないという態度を表明した。

 枝野幸男代表は30日の記者会見で、民進党の大塚耕平代表が新党結成を表明したことについて「わが党はいわゆる政界再編、党と党が一緒になるような合従連衡をするつもりはない」と述べ、民進からの呼びかけには応じない考えを強調した。(産経新聞/3月30日)

 とにもかくにも、民進党も希望の党も支持率は1%。
 国民のあいだには、なによりもあの民主党政権の悪夢へのトラウマがある。1政党としては史上最多の308議席を得て政権交代を果たしながら、彼らは政権の座に就くなり醜い内輪の権力闘争に明け暮れた。政権担当能力はあまりにも未熟で、日中関係を過去最悪の状況にし、国民の失望と怒りは東日本大震災への対応で頂点に達した。
 その反省もないまま、この数年は愚かにも国家観の相いれない共産党の主導する「野党共闘」に便乗。保守系議員の絶望感と焦燥が堰を切り、2017年9月の総選挙直前に、あっけなく旧民進党は空中分解したのである。
 国民が望むとしたら、それは今の自公政権以上に合意形成能力を持ち、政治の安定のうえに国の舵取りを図ることが可能な、安心して政権交代を託せる野党の姿だろう。
 目先の自分の選挙事情とマスコミの風向きだけを見て、野合と仲間割れを繰り返す。ヒステリックに政権批判だけはすれども、自分たちは仲間内の合意形成すらおぼつかないというのでは、とても国民の期待に応えられるものではない。

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