コラム」カテゴリーアーカイブ

連載エッセー「本の楽園」 第108回 一汁一菜というシステム

作家
村上政彦

 朝は味噌汁がないと調子が出ない、という人がいた。いまはパン食が増えて、トーストとコーヒーだけという人も少なくない。しかし、あの、朝の味噌汁の匂いは、いいものだ。僕にとっては、育ての親だった祖母の思い出にもつながっている。
 僕は、カレーが好きだ。パスタも好きだ。ラーメンも、ハンバーガーも好きだ。ついでにソース焼きそばも好きだ。だから、僕の家の食卓には、さまざまメニューが並ぶ。いつも味噌汁が出るとは、限らない。
 ところが、ときどき白い炊き立てのご飯、納豆、焼き鮭、具沢山の味噌汁がセットになって並ぶことがあり、これを食べていると、なぜか、食養生という言葉が思い浮かぶ。食事をしているだけでなく、体を整えている、という感じになるのだ。 続きを読む

特集㉓ 「C作戦」の謀議——法主自らが主導した工作

ライター
青山樹人

 この記事は『新版 宗教はだれのものか 三代会長が開いた世界宗教への道』(青山樹人著/鳳書院)の発売にともない「非公開」となりました。
 新たに「三代会長が開いた世界宗教への道(全5回)」が「公開」となります。

「三代会長が開いた世界宗教への道」(全5回):
 第1回 日蓮仏法の精神を受け継ぐ(4月26日公開)
 第2回 嵐のなかで世界への対話を開始(5月2日公開)
 第3回 第1次宗門事件の謀略(5月5日公開)
 第4回 法主が主導した第2次宗門事件(5月7日公開)
 第5回 世界宗教へと飛翔する創価学会(5月9日公開)

WEB第三文明の連載が書籍化!
『新版 宗教はだれのものか 三代会長が開いた世界宗教への道』
青山樹人

価格 1,320円/鳳書院/2022年5月2日発売
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第三文明社 公式ページ
 

都議会公明党のコロナ対応——ネットワーク政党の強み

ライター
松田 明

国家に匹敵する財政規模

 1月29日、 東京都の令和3年(2021年)度予算案が示された。一般会計歳出の当初予算は7兆4250億円。2月18日には、令和2年度補正予算案1255億円と令和3年度補正予算案1401億円も示され、新年度の一般会計は7兆5651億円になった。
 これに特別会計や公営企業会計を加えた総額は15兆2995億円で、この財政規模はノルウェーやインドネシアの国家予算に匹敵する。その舵取りは容易ではない。
 昨年7月の都知事選挙に圧勝して2期目をスタートさせた小池百合子知事。コロナ禍が2年目に突入したなかで、感染拡大の抑制、首都の経済と都民の暮らしの下支え、開催が予定されているオリンピック・パラリンピックと、都政の運営にはいくつもの重大な課題がつきまとう。 続きを読む

芥川賞を読む 第1回 『ネコババのいる町で』瀧澤美恵子

文筆家
水上修一

重い出来事をサラリと書く軽やかな文体から、温もりと余韻が生まれた

瀧澤美恵子著/第102回芥川賞受賞作(1989年下半期)

読者と共に、芥川賞作品を読んでいこう

 芥川賞は、無名もしくは新進作家の純文学作品に与えられる文学賞だ。現在は、五大文芸誌(文学界・群像・文藝・すばる・新潮)に掲載された作品から選ばれることが多い。
 これまで、石川達三、井上靖、松本清張、吉行淳之介、遠藤周作、石原慎太郎、大江健三郎、村上龍、宮本輝など、日本文学界を代表する作家を生み出してきた。けれども、太宰治や村上春樹など、受賞を逃した著名な作家も多い。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第107回 アジアをつなぐ本屋たち

作家
村上政彦

 僕の作家としての出発は、小学生のとき、町の本屋で始まった。小さな本屋の文学書がなければ、小説家になろうなっておもわなかっただろう。そして、この本屋は、地方の片隅から、広い世界に開かれた窓だった。
 僕は、この窓から、フランスやイギリスを見、ロシアを知り、アメリカに行った。小さな本屋の、小さな棚には、ヨーロッパやアメリカの、多様な文学書があった。僕はそれを手に取って、それぞれの国の人々と出会い、その国の歴史や風土を学んだ。
 いまはインターネットがある。ノートの大きさほどの端末さえあれば、さまざまな情報が手に入る。グーグルアースを使えば、書斎にいて、世界のどこでも見ることができる。しかしそれは本を読むことでもたらされる体験とは、別のものだ。 続きを読む