コラム」カテゴリーアーカイブ

わたしたちはここにいる:LGBTのコモン・センス 第2回 好きな女性と暮らすこと:ウーマン・リブ、ウーマン・ラブ

山形大学准教授
池田弘乃

「女らしさ」や「美醜」といった現在の価値基準によってけずられていった私自身の自尊をとりもどし、自分を信頼する能力を身につけること、他人(最初はまず、私と対していた女性一人から始めなければならなかったが)を信頼する能力を身につけること、そうすることで、私にも他人との関係をつくることができるのだという自信をとりもどすこと、自律と自立の感情の基礎をつくること。(掛札悠子『「レズビアン」である、ということ』、河出書房新社、1992年、133頁)

 今回は、ある先輩の女性たちの声から、性に関する「新しい常識」を作っていくためのヒントを受け取ってみたい。先輩といっても学校や職場の先輩ではなく、人生の先輩である。福美さんとなおみさんは、東京近郊の街に暮らしている。女性同士の2人暮らしを始めて10年ほどが過ぎた。なおみさんは1958年生まれの63歳、福美さんは1960年生まれの61歳。掛け合い漫才のように軽妙なやり取りをしている時もあれば、ゆっくりと一つ一つ言葉を紡ぎながら話す時もあるこの2人の市井の賢人の言葉から、また一つ性の常識をアップデートするための知恵をお借りしよう。 続きを読む

2021衆院選直前チェック①――政権をどこに託すのか

ライター
松田 明

前回の衆院選をふりかえる

 4年ぶりの衆議院選挙である。
 この4年間の各党のあり方をどう評価するのか。同時に、コロナ禍という未曽有の危機のなかにあって、この危機を脱し、傷つき疲弊した日本の社会と経済をどう再生していくのか。それができる政権の枠組みはどこなのか。それらが問われる選挙となる。
 まず前回、2017年の第48回衆議院選挙からふりかえっておこう。
 当時の安倍首相は、ミサイル発射を繰り返す「北朝鮮の脅威」と、世界にも前例のない速さで進む「少子高齢化」の2つの〝国難〟を乗り越えるため、国民の信を問う選挙だと位置づけた。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第121回 個人のたたかい

作家
村上政彦

 詩人・茨木のり子が1967年に出版した『うたの心に生きた人々』は、与謝野晶子、高村光太郎、山之口獏、金子光晴を取り上げた本だった。それが童話屋から1人ずつの分冊として刊行された。本作のタイトルは、『個人のたたかい――金子光晴の詩と真実』。評伝である。
 僕は、金子光晴の詩を、ほとんど読んでこなかった。詩人の生涯も知らない。かつて彼が制作した家族詩集をこのコラムで取り上げたが、あのときに読んだのが、ほぼ初めてといっていいかも知れない。
 そして、大切な詩人を読み落としていたとおもった。著者は、結びの言葉として、こんなふうにしるしている。

皆にまだはっきりとは意識されてはいないけれども、この人の存在そのものが、日本を深いところで支える大きな手の一つであることを、時は次第に解明してゆくだろう

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欺瞞と反目の野党共闘――早くも「合意形成」能力なし

ライター
松田 明

連合「共産の閣外協力あり得ない」

 立憲民主党、日本共産党、社会民主党、れいわ新選組の4党は、9月8日、衆議院選挙にむけ市民連合と「基本政策」で合意した。
 低迷を続ける旧民主党勢力の焦燥感を見ながら、2015年秋から野党連合政権樹立のための共闘を執拗に迫り続けてきたのが日本共産党だ。
 9月30日、立憲民主党の枝野幸男代表は志位和夫委員長と会談。次期衆院選で政権交代が実現した場合、日本共産党と「閣外協力」する方針で一致したことを発表した。
 共産主義革命を目指す政党と、閣外であれ共に政権樹立することを公言した政党は、日本の憲政史上で立憲民主党がはじめてだ。 続きを読む

「公明党衆院選重点政策」第4弾――共生社会をめざして

ライター
松田 明

孤立を防ぎ困窮者を支える

 NHKディレクターなどを歴任し、2004年からNPO法人自殺対策支援センターライフリンク代表を務める清水康之氏。日本の「自殺対策」の最前線に立ち続ける清水氏は、『第三文明』本年2月号でこう述べている。

 今の日本社会では「自分の命は自分で守らなければならない」という新自由主義的な考え方が強くなっている気がします。そのすべてを否定するつもりはありませんが、「皆の命は皆で守るもの」という考え方が不可欠です。両軸の間のどこに軸足を置くのかが大切です。その点については、公明党が重要な役割を担っていると思います。
 公明党の皆さんは、自殺対策にも非常に熱心です。(『第三文明』2月号

 公明党が結党された1964年当時、政治は福祉にまったく冷淡だった。公明党が「福祉」の旗を掲げると、右側の政党からは〝政治は慈善事業ではない〟と嘲笑され、左側の政党からは〝福祉は資本主義体制の延命を図るもの〟と非難された。 続きを読む