「女らしさ」や「美醜」といった現在の価値基準によってけずられていった私自身の自尊をとりもどし、自分を信頼する能力を身につけること、他人(最初はまず、私と対していた女性一人から始めなければならなかったが)を信頼する能力を身につけること、そうすることで、私にも他人との関係をつくることができるのだという自信をとりもどすこと、自律と自立の感情の基礎をつくること。(掛札悠子『「レズビアン」である、ということ』、河出書房新社、1992年、133頁)
今回は、ある先輩の女性たちの声から、性に関する「新しい常識」を作っていくためのヒントを受け取ってみたい。先輩といっても学校や職場の先輩ではなく、人生の先輩である。福美さんとなおみさんは、東京近郊の街に暮らしている。女性同士の2人暮らしを始めて10年ほどが過ぎた。なおみさんは1958年生まれの63歳、福美さんは1960年生まれの61歳。掛け合い漫才のように軽妙なやり取りをしている時もあれば、ゆっくりと一つ一つ言葉を紡ぎながら話す時もあるこの2人の市井の賢人の言葉から、また一つ性の常識をアップデートするための知恵をお借りしよう。 続きを読む