コラム」カテゴリーアーカイブ

立憲民主党は何を誤ったのか――選挙結果から見えるもの

ライター
松田 明

「野党に期待できないから」

 今回の衆院選の結果をどう総括するか。
 まず自公連立政権から見れば、与党で過半数(233議席)を上回る293議席(自民党の追加公認を含む)を獲得。「連立政権に対する国民の信を得た」といってよいだろう。
 公明党は9小選挙区を完勝したうえ、比例区の得票数も前回2017年の選挙を上回って29議席から32議席に伸びた。
 自民党は議席を減らしたものの「単独安定多数」の261議席を獲得。自公の選挙協力が深化して、比例区では前回から約136万票を増やした。岸田首相の政権基盤はとりあえず安定したといえる。 続きを読む

有権者に忌避された「野党共闘」――議席減らした立民と共産

ライター
松田 明

公明党は9選挙区で完勝

 第49回衆議院議員選挙がおこなわれた。
 報道各社の予測は軒並みはずれ、終わってみれば自民党は議席を減らしたものの単独で「絶対安定多数」の261議席を獲得。
 連立与党の公明党も9つの小選挙区で完勝。維新への強い追い風が吹くなかで、比例区の得票は前回2017年の選挙から13万6570票増えて711万票を超え、全体として改選前の29議席から32議席に伸ばした。
 与党が安定した勝利を収めたことに対し、経団連の十倉会長は、

自民党が安定多数を獲得し、公明党を含め強力かつ安定した政治の体制が維持されたことを大いに歓迎する。有権者が岸田政権の政策を高く評価し、ポストコロナの新しい時代に向けたわが国の力強い再生をリードしてほしいという期待の表れといえる。(「NHK NEWS WEB」11月1日

と発言。与党の安定した勝利を受けて、週明けの日経平均株価は上げ幅700円を超える大幅な上昇を見せた。 続きを読む

核廃絶を正式表明した岸田首相の採るべき道――核の傘の下で生きる日本は草の根戦術の展開を

中部大学教授
酒井𠮷廣

 岸田首相は、10月8日の所信表明演説で

被爆地広島出身の総理大臣として目指すのは「核兵器のない世界」です

と語った。

核兵器国と非核兵器国の橋渡しに努め、唯一の戦争被爆国としての責務を果たします。これまで世界の偉大なリーダーたちが幾度となく挑戦してきた核廃絶という名の松明(たいまつ)を、私も、この手にしっかりと引き継ぎ、「核兵器のない世界」に向け、全力を尽くします

旨も付け加えた(「岸田総理所信表明演説」10月8日)。核兵器保有国、および核の傘で守られた国のリーダーが、公式の場でここまで踏み込んだ発言をしたのは初めてではないだろうか。 続きを読む

2021衆院選直前チェック③――働いた党と、邪魔をした党

ライター
松田 明

稲津(いなつ)久 副大臣の答弁

 10月26日、新型コロナウイルスのワクチン接種を2回終えた人の数が全国民の70・1%を超えた。G7(先進主要7カ国)でも1位のカナダに迫るトップクラス。接種対象年齢を12歳以上に限定しているうえで、この数字だ。

先行した欧米各国では6割前後で伸び悩む「7割の壁」が立ちはだかったが、日本では感染への危機感などから、順調に突破した。(『毎日新聞』10月26日

 緊急事態宣言解除後も感染者数は減少傾向を維持しており、政府が主導した大規模接種などワクチンの効果と、国民一人ひとりの感染対策の徹底が要因だと考えられている。
 日本のワクチン政策の転換点となったのは、昨年7月16日の参議院予算委員会(閉会中審査)だった。 続きを読む

2021衆院選直前チェック②――「一強」の弊害をなくすには

ライター
松田 明

「自公」は唯一の安定した枠組み

 バブル経済が崩壊した1990年代初頭から民主党政権が退場する2010年代初頭まで、日本は「失われた20年」と呼ばれる低成長時代を経験した。
 冷戦崩壊によるイデオロギー対立時代の終焉、経済のグローバル化、新興国の台頭、インターネットの普及によるIT化など大きな変化を迎えながら、この間の日本の政治は十分な対応ができなかった。
 大きな要因のひとつは、政治の安定が図られなかったことだ。この間、海部俊樹政権から野田佳彦政権まで、首相は14人。平均すれば1年半足らずで首相が交代していたことになる。
 内閣が短命に終われば、当然ながら腰を据えた政策の立案と実行は困難になる。ましてや、既得権者の抵抗をともなうさまざまな改革の断行は難しい。 続きを読む