投稿者「web-daisanbunmei」のアーカイブ

書評『陸前高田から世界を変えていく 元国連職員が伝える3.11』

ライター
松田明

街そのものが消えた陸前高田

 陸前高田市は岩手県の東南端の街。太平洋に向かって広田湾が開け、隣は宮城県気仙沼市になる。山間から流れる気仙川が森の養分を広田湾に注ぎ、極上の牡蠣やワカメを育てている。
 だが、あの東日本大震災では高さ10メートルを超す大津波が市街地に襲いかかった。「日本百景」だった高田松原の7万本の防潮林は1本だけを残して壊滅。一部4階建ての市役所も屋上までのみ込まれ、111人の職員が帰らぬ人となった。 続きを読む

日本人プリマドンナの感動ドキュメンタリー――映画『Maiko マイコふたたびの白鳥』

ライター
倉木健人

キャリアと出産の間で揺れるプリンシパル

 西野麻衣子は、ノルウェーで一番有名な日本人だ。名門ノルウェー国立バレエ団で、東洋人初のプリンシパルとなり、今や永久契約ダンサーともなった。
 この映画は、新聞記事で麻衣子のことを知ったという、ノルウェーの女性監督オセ・スベンハイム・ドリブネスによる70分のドキュメンタリーである。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第5回 J・J氏のダンディズム

作家
村上政彦

 大人になりたくなかった。二十歳になるのが憂鬱だった。若いというのは、せつないことでもあるのだ。そういうとき、こんな大人にならなってもいいかな、とおもう人がいた。そのうちの1人が、J・J――植草甚一だった。 続きを読む

書評『「反戦・脱原発リベラル」はなぜ敗北するのか』

ライター
松田明

「言葉への信頼」を腐らせているのは誰か

 いささか刺激的な書名ではあるのだが、非常に丁寧に、そして誠実に作られた書物だというのが、読み終わっての率直な感想である。
 ちなみにカバーの折り返しには、

 これは勝ちたいリベラルのための真にラディカルな論争書だ。

 ともある。 続きを読む

カンヌ映画祭が絶賛。禁じられた「愛」の物語――映画『キャロル』

ライター
倉木健人

ミリオンセラーとなった原作

 パトリシア・ハイスミスという作家の名前を聞いて、すぐに作品名が出てくる人は、かなりの文学通か映画ファンだろう。
 彼女には代表的な長編が3つあり、1つは『見知らぬ乗客』(1950年)、1つは『太陽がいっぱい』(1955年)。前者は次の年にヒッチコックによって映画化され、後者はいうまでもなく名優アラン・ドロンを一躍スターダムに押し上げた映画となった。 続きを読む