投稿者「web-daisanbunmei」のアーカイブ

アウシュヴィッツ=ビルケナウ収容所で何があったのか――映画『サウルの息子』

ライター
倉木健人

「ゾンダーコマンド」という仕事

 無名の新人監督の作品にして、2015年カンヌ国際映画祭でいきなりグランプリを獲得した、いま世界中の映画関係者にもっとも注目されている映画である。 続きを読む

今こそ庶民の力で両国関係を動かす時――書評『日本と中国の絆』

ライター
青山樹人

〝相手の側の気持ち〟を考える

 著者の胡金定氏は甲南大学教授。1956年、中国・福建省生まれ。国立厦門大学を卒業後、世界銀行の奨学生となって日本に留学し、神戸大学大学院文化学研究科博士課程を修了した。日本暮らしは既に30年余、人生の半分を超えている。
 本書(『日本と中国の絆』)は日本と中国の文化の比較研究を続けてきた胡さんが、日常の生活習慣や文学作品、あるいは歴史上の人物の逸話などを通し、両国のかかわりを読み解いたエッセイ風の論考集である。 続きを読む

不確実な時代の「うわさ」と個人の関係を考える

中央大学教授
松田美佐

 人々はなぜ「うわさ」を好み広げるのか。「うわさ」は私たちの暮らしに、どのような影響をもたらすか。人間や社会を「うわさ」から読み解く。

「うわさ」は最も古いメディア

 もともと大学で社会心理学を学んでいた私は、メディアの仕組みや人間のコミュニケーションに興味があり、自然と「うわさ」の持つ特性に関心を抱くようになっていました。
 人間が手にした「最も古いメディア」と呼ばれるうわさは、新聞やテレビが普及しようとも、携帯電話やインターネットが世界中で利用される時代が訪れても、いまだに廃れることなく存在し続けています。 続きを読む

天才アピチャッポンの未公開作がついに日本で封切り――映画『世紀の光』

ライター
倉木健人

2016年はアピチャッポン・イヤー

 2010年に『プンミおじさんの森』で、タイ人監督として初めてカンヌ映画祭パルムドール(最高賞)を受賞したアピチャッポン・ウィーラセタクン。1970年バンコク生まれ。タイ東北部のコーンケン大学で建築を学んだあと、米国のシカゴ美術館附属シカゴ美術学校で美術・映画制作の修士課程を修了した。
 これまで『ブリスフリー・ユアーズ』(02年)でカンヌの「ある視点賞」、『トロピカル・マラディ』(04年)で同「審査員賞」を受賞。いわゆる商業映画とは異なる〝個人的な映画〟としての作品を撮り続け、世界の注目を集めてきた。 続きを読む

LGBTの社会的包摂を進め多様性ある社会の実現を

京都産業大学法科大学院教授
渡邉泰彦

 LGBT(性的少数者)の抱える問題から、多様性ある社会について考える。

LGBTとは

 近年、LGBT(※1)と呼ぼれる性的少数者の問題に社会的関心が寄せられるようになりました。日本では全人口の約5%、660万人ほどの性的少数者が暮らしていると推定されています。 続きを読む