投稿者「web-daisanbunmei」のアーカイブ

書評『「反戦・脱原発リベラル」はなぜ敗北するのか』

ライター
松田明

「言葉への信頼」を腐らせているのは誰か

 いささか刺激的な書名ではあるのだが、非常に丁寧に、そして誠実に作られた書物だというのが、読み終わっての率直な感想である。
 ちなみにカバーの折り返しには、

 これは勝ちたいリベラルのための真にラディカルな論争書だ。

 ともある。 続きを読む

カンヌ映画祭が絶賛。禁じられた「愛」の物語――映画『キャロル』

ライター
倉木健人

ミリオンセラーとなった原作

 パトリシア・ハイスミスという作家の名前を聞いて、すぐに作品名が出てくる人は、かなりの文学通か映画ファンだろう。
 彼女には代表的な長編が3つあり、1つは『見知らぬ乗客』(1950年)、1つは『太陽がいっぱい』(1955年)。前者は次の年にヒッチコックによって映画化され、後者はいうまでもなく名優アラン・ドロンを一躍スターダムに押し上げた映画となった。 続きを読む

生みの親と育ての親。子どもを奪われた悲しみと愛を描く――映画『最愛の子』

ライター
倉木健人

アジアを代表する監督ピーター・チャン

 中国では年間20万人もの子どもが誘拐されているという。これは2013年に中国中央人民放送が発表したものなので、実際より控えめな数字ではないかと言われている。背後にあるのは子どもを売買する犯罪組織だ。
 中国公安部には誘拐対策の専門部隊があり、ソーシャル・ネットワークなどを駆使して子どもを捜す市民団体もある。人民警察は2011年だけで8660人の子どもを救出した。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第4回 エリック・ホッファーという生き方

作家
村上政彦

 近代人の典型的な生き方は、学校で学んで、会社で働くことだ。しかし、近年になって学び方と働き方には選択肢が増えてきた。その気になれば、学校や会社という組織に属さないで、学び、働くこともできる。エリック・ホッファーは、そういう生き方の先駆的な存在だったのかもしれない。 続きを読む

歴史に学び志を持って生きる

萩博物館特別学芸員/至誠館大学特任教授
一坂太郎

 混迷する時代を生き抜くために、歴史から学ぶべきこととは何か。

学びの力に着目

 教育には人間や社会を変える力があります。歴史をひもとくと、学びの力によって世のなかを変えていった人物や集団の足跡をいくつも見つけることができます。明治維新の原動力となった幕末の長州藩もそうした好例の一つです。 続きを読む