僕の作家としての出発は、小学生のとき、町の本屋で始まった。小さな本屋の文学書がなければ、小説家になろうなっておもわなかっただろう。そして、この本屋は、地方の片隅から、広い世界に開かれた窓だった。
僕は、この窓から、フランスやイギリスを見、ロシアを知り、アメリカに行った。小さな本屋の、小さな棚には、ヨーロッパやアメリカの、多様な文学書があった。僕はそれを手に取って、それぞれの国の人々と出会い、その国の歴史や風土を学んだ。
いまはインターネットがある。ノートの大きさほどの端末さえあれば、さまざまな情報が手に入る。グーグルアースを使えば、書斎にいて、世界のどこでも見ることができる。しかしそれは本を読むことでもたらされる体験とは、別のものだ。 続きを読む
