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沖縄伝統空手のいま 特別番外編⑪ 沖縄県空手振興課長・金城信尚さんインタビュー㊦

ジャーナリスト
柳原滋雄

ユネスコ無形文化遺産の登録へ

――最近あまり耳にしなくなったと感じますが、沖縄空手をユネスコの無形文化遺産に登録しようという長期戦の運動はその後どうなっていますか。

金城信尚課長 それに関して言いますと、令和4年度から6年度(昨年度)にかけて、ユネスコ登録に向けた調査ということで、沖縄の空手がいかに生活文化に密着しているかということを調査しました。特に棒術をはじめとした空手が地域の伝統行事に取り入れられ、生活文化に密着しているということがあって、それを報告書にしたのが昨年度です。ホームページでも公表しています(「生活文化に息づく『沖縄空手』調査報告書」沖縄空手ユネスコ登録推進協議会)。今年度はシンポジウムを開催するという形で、空手家をはじめ、県民の皆さま方に調査結果をフィードバックしたいと考えています。
 あとそれとは別に、通例ですと日本の国内の無形文化財として登録なり指定を受けたものを、国がユネスコに申請を行う手続きとなっているのですが、国内においてはこれまで「武道」が登録された事例がなくて結構ハードルが高い面があります。空手だけではなかなか登録が難しいので、伝統芸能や食文化など、別の分野と一緒に沖縄空手も含めて登録できないかということを模索しているところです。長期戦になると思います。

――ご自身の課長任期中に達成するという話ではないのですね。

金城課長 すぐにということではないと思います。ただしある程度のメドといいますか、今回の調査を通じて空手がどのように生活文化や地域行事に取り入れられてきたかを知れたのは意義深いと思いますので、それを広く知っていただこうと考えています。 続きを読む

沖縄伝統空手のいま 特別番外編⑩ 沖縄県空手振興課長・金城信尚さんインタビュー㊤

ジャーナリスト
柳原滋雄

 2016年4月、沖縄県庁に空手振興課が発足して10年目。これまでWEB第三文明では歴代課長にインタビューしてきたが、今回4人目の課長を取材した。(収録/2025年8月6日)

課長自ら道場に入門

――これまで空手振興課の歴代課長にインタビューさせていただきました。今回は4人目の金城信尚課長となります。今年4月に着任されて4か月あまりが経過しました。

金城信尚課長 昨年班長として空手振興課に来まして、1年間の経験を経て就任しました。昨年夏には第2回沖縄空手少年少女世界大会も経験しました。

――金城課長は2016年、空手振興課が設置されたときにはどの部署にいましたか。

金城課長 平成28年は基地対策課ですね。

――それは沖縄ならではのセクションですね。基地の仕事は何年くらいやったのですか。
金城課長 2年間です。主に調査研究的なことをしていました。
――そのころ、空手振興課には関心すらなかったのですか。

金城課長 新聞で読んで認識はしていましたが、あまり記憶にはないです。むしろ振興会(一般社団法人・沖縄伝統空手道振興会)ができたときのことは覚えています。 続きを読む

「第2回 沖縄空手少年少女世界大会」レポート(下)

ジャーナリスト
柳原滋雄

微笑ましい〝豆拳士〟たち

 筆者は2018年の「第1回沖縄空手国際大会」は取材しているが、2022年の「第2回沖縄空手世界大会」「第1回沖縄空手少年少女世界大会」(同時開催)は見ていない。
 今回の「第2回沖縄空手少年少女世界大会」では、最終日(8月12日)の決勝・準決勝のほか、前日(11日)に行われた本大会予選(海外・県外)を観戦することができた。
 各部門(古武道を除く)とも「少年少女Ⅰ」は6歳以上7歳以下(小学生低学年)が対象となるが、〝豆拳士たち〟の可憐な演武ぶりは微笑ましさを感じさせた。
 演武で使用された型名を記録すると、「首里・泊手系」で目立ったのは、小学生は「セーサン」や「ピンアン・初段~五段」、中学生では「セーサン」「パッサイ大(松村のパッサイ)」「パッサイ小(糸洲のパッサイ)」が目についた。この場合の「セーサン」は松村宗昆の弟子である喜屋武朝徳系のセーサンであり、那覇手系や上地流系の同名の型とは別種のものだ。 続きを読む

「第2回 沖縄空手少年少女世界大会」レポート(上)

ジャーナリスト
柳原滋雄

県主催の2年ぶりの世界大会

「第2回 沖縄空手少年少女世界大会」(主催・同実行委員会、沖縄県、沖縄伝統空手道振興会)が8月8日から12日まで、宜野湾市の「沖縄コンベンションセンター」で開催された。
 2016年に空手振興課を新設し、沖縄伝統空手の振興に努めてきた沖縄県が第1回と称して世界大会を開始したのが2018年。以来、2年ごとに少年少女大会と大人の大会を交互に行ってきた(新型コロナ禍時は不規則)。大会名に「沖縄空手」の冠を銘打っていることからわかる通り、全日本空手道連盟(全空連)と異なる沖縄「独自の空手」の意味を含んでいる。

開会式前のオープニングで琉球の踊りが演じられた

 ただし競技化して開催するには、全空連の試合内容の影響を受けざるをえないことは、2018年の当初大会から指摘されてきた。2022年の第1回少年少女大会から2年での開催となり、新型コロナ禍を明けてからの初の世界大会となった。 続きを読む

沖縄伝統空手のいま 特別番外編⑨ 沖空連主催「空手道古武道演武大会」

ジャーナリスト
柳原滋雄

今年の男子団体組手は上地流が優勝

 1981年、松林流の長嶺将真(1907-1997)によって設立された「沖縄県空手道連盟」(全日本空手道連盟の下部団体、以下「沖空連」)が主催する恒例の「空手道古武道演武大会」が3月3日、沖縄県立武道館アリーナ棟で開催された。
 毎年1回定期開催されるこの大会は、コロナ禍により2020年から22年まで中止を余儀なくされたものの、昨年、沖縄空手会館で再開。今年はさらに広い会場の県立武道館に戻った形となった。大人から子どもまで総勢1000人近いメンバーが関わる演武大会としても知られる。

団体組手の様子

 午前中は競技空手団体の象徴ともいえる組手団体戦が行われ、男子では初めて編成出場した「沖縄県上地流空手道連盟」が優勝、「拳龍同志会」が準優勝の結果となった。昨年大会では東京オリンピックの男子形部門で金メダルを獲得した喜友名諒も所属する「劉衛流龍鳳会」が流派全体としてチーム編成し、好成績(優勝)を収めた。それに触発される形で今年は実践空手で知られる上地流が各道場の垣根をこえて流派として初の選抜チームを編成した。蓋を開くと沖縄市の名門・拳龍同志会との決勝戦となった。 続きを読む