民主党政権とは何だったのか――今また蘇る〝亡霊〟

ライター
松田 明

戦後8番目の短命内閣

 10年前の2009年8月30日。
 日曜日の朝、全国紙の一面広告を使って、次のようなメッセージが掲載された。

 あなたは言う。どうせ変わらないよと言う。政治には裏切られてきたと言う。しかし、あなたはこうも言う。こんな暮らしはうんざりだと。私は言う。あなた以外の誰が、この状況を変えられるのか。あなたの未来は、あなたが決める。そう気づいた時、つぶやきと舌打ちは、声と行動に変わる。そして、あなたは知る。あなたの力で、世の中を変えた時の達成感を。

 この、いささか抒情的なメッセージの横には、紙面いっぱいに鳩山由紀夫氏の写真。そして、大きな白抜きの文字で「本日、政権交代。」というコピーが躍る。
 そう、この日は第45回衆議院議員選挙の投票日だったのである。
 そして鳩山氏が率いる民主党が史上最多の308議席を獲得して政権交代が決定した。
 鳩山氏が国会で首班指名を受け、民主党政権が発足したのが9月16日。発足直後の内閣支持率は72.0%(共同通信社調べ)にもなった。
 だが、政権交代への大きな起爆剤になった普天間飛行場の「最低でも県外」も、単なる思いつき同然の言葉だったことが次第に明らかとなる。 続きを読む

元日本代表が綴るラグビーのトリセツ――書評『ラグビーまあまあおもろいで!』

ライター
本房 歩

いよいよワールドカップ開幕!

 9月20日から11月2日までの日程で、いよいよラグビーワールドカップ2019日本大会が始まる。
 決勝戦が横浜市の国際総合競技場でおこなわれるほか、試合は札幌市、釜石市、東大阪市、神戸市、福岡市など、全国12都市で開催される。
 1987年の第1回大会から4年に1度ごとに開催され、今回が第9回。
 前回、イングランドで開催された第8回大会では、日本が南アフリカ(世界ランキング3位/過去2回の優勝経験)を34-32で破る快挙を成し遂げ、列島が湧いた。
 今回の日本大会はアジア初のワールドカップ開催でもあり、さらにラグビーへの関心が高まりそうだ。 続きを読む

沖縄伝統空手のいま~世界に飛翔したカラテの源流
第38回 沖縄固有の武術「ティー」は存在したのか(中)

歴史研究は始まったばかり

 沖縄空手の歴史をきちんと筋道立てて説明している人は、今のところいないと考えています。これが決定版という空手の歴史に関する書籍はいまのところありません

中学校の体育教師として長年勤めた勝連盛豊さん

 うるま市の喫茶店でそう語るのは、2017年に『検証 沖縄武術史 沖縄武技―空手』(沖縄文化社)を発刊した勝連盛豊(かつれん・せいほう 1947-)だ。
 直接の空手経験はないものの、棒術の使い手で、そこから棒術の歴史の研究を始めたのが空手についても調べるようになったきっかけだったという。
 30年に及ぶ研究成果は今年7月、『検証 沖縄の棒踊り』(同)として実を結んだ。その調査の中で実感したのが、空手がオリンピックの正式種目に採用される時代になったにもかかわらず、空手に関する正確な歴史がいまだにまとめられていないとの危機感だったという。 続きを読む

統一会派は「民主党」の再来――またしてもの呉越同舟

ライター
松田 明

「お答えになっていない」

 8月20日、立憲民主党の枝野幸男代表と国民民主党の玉木雄一郎代表が国会内で会談し、衆参両院で統一会派を組むことで合意した。
 8月5日の両者の会談では、国民民主党の玉木代表から〝衆参両院での統一会派〟という要望が出されていた。
 ところが、会談直後に立憲民主党の枝野代表は、

 立憲民主党の政策、すなわち、立憲主義の回復など憲法に関する考え方、いわゆる原発ゼロ法案等のエネルギー関連政策、および、選択的夫婦別氏制度や同性当事者間による婚姻を可能とする一連の民法一部改正法案等の多様性関連政策などにご理解ご協力いただき、院内会派「立憲民主党・無所属フォーラム」に加わって、衆議院でともに戦っていただきたく、ここにお呼びかけさていただきます。(「立憲民主党公式サイト」ニュース8月5日)

という声明を発表。「立憲民主党の政策」に「ご理解ご協力」する「衆議院」の議員だけを「立憲民主党・無所属フォーラム」に加えてやるという、にべもない条件を突きつけた。 続きを読む

沖縄伝統空手のいま~世界に飛翔したカラテの源流
第37回 沖縄固有の武術「ティー」は存在したのか(上)

ジャーナリスト
柳原滋雄

 この連載を締め括るに当たり、歴史の問題は避けて通れない。沖縄空手の起源をめぐっては、その解明に必要な史料の多くが、1609年の薩摩藩による侵攻、1879年の日本政府による琉球処分、1944年の米軍による沖縄大空襲や翌年の「沖縄戦」によって消失したとされる。近年、空手の歴史をアカデミズムの立場から研究する動きも新たに出てきているが、巷間流布されてきた幾つかの「定説」にも疑問の声が投げかけられている。その一つが、沖縄に存在したとされる固有の武術「ティー」をめぐる問題だ。例えばこれまで、沖縄空手の源流は、沖縄にもともとあった土着の武術「ティー」と中国から渡ってきた武術とが融合して形成されたとの「定説」がまことしやかに喧伝されてきた。本連載においても当初はそのように紹介した。ただし、現在の研究ではそれとは異なる事情も浮き彫りにされている。沖縄空手の歴史の問題を数回にわたり取り上げる。 続きを読む