結党55年を迎えた公明党――「公明党らしさ」への期待

ライター
松田 明

大衆に根を張った政党

 2019年11月17日で、公明党は結党55年を迎える。
 結党された1964年は、日本が先進国としてOECD(経済開発協力機構)に加盟し、東海道新幹線が開業、東京オリンピックが開催された年であった。
 その2年前、前身である公明政治連盟の第1回全国大会に来賓として出席した党創立者の池田大作・創価学会第3代会長は、次のように挨拶した。

 最後の最後まで、生涯、政治家として、そして指導者として、大衆に直結していってもらいたい。偉くなったからといって、大衆から遊離して、孤立したり、また組織の上にあぐらをかいたりするような政治家には絶対になっていただきたくないのであります。大衆とともに語り、大衆とともに戦い、大衆のために戦い、大衆の中に入りきって、大衆の中に死んでいっていただきたい。(『公明党50年の歩み』

 この言葉は結党にあたって綱領に

大衆とともに語り、大衆とともに戦い、大衆の中に死んでいく

という指針として掲げられた。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第81回 世界は言葉でできている

作家
村上政彦

落書き禁止 「きれいなまち渋谷をみんなでつくる条例」 違反者は、処罰されます。 見つけた人は警察に通報してください。/おおむらさきつつじ つつじ科/ここはみんなの公園です。うらに書いてあるきまりを守って、みんなでなかよく遊びましょう。/NO NIKE!! ナイキ 悪/ゴミは持ちかえりましょう/水を大切にしましょう/公園はみんなのものだ! PARK is OURS/フットサル場 使用上の注意 このフットサル場は、ゴムチップ入り人工芝を使用しています。きれいな緑と足にやさしい使用感をいつまでも保つため皆様のご協力をお願いいたします。/皆様のフットサル場です。大切に使いましょう。/フットサル場は平成22年4月末まで休場いたします。/防犯カメラ作動中/喫煙所/忘れ物・落とし物にご注意ください/ゴミ等はお持ち帰りください/カン・ビン ペットボトル その他のゴミ/さんごじゅ すいかずら科/れんぎょう もくせい科/渋谷区土木部/不審物を発見したときは、区役所の公園又は警察に連絡願います。なお、無届で集会等を開くことで、不法に占拠することを禁止します。/消えないで公園/荷物をあずけている方へこの倉庫に荷物をあずけている方は、布テープにマジックで名前を書いてください。名前のない荷物は4/19(月)に別の場所に移動します。/みんなのCAFÉ いらっしゃい/わたしたちは、以下の問題があると考え、反対しています。/企業の宣伝・営利に使われること。誰もが憩える公園でなくなること。手続きが不透明かつ非民主的なこと。渋谷区の目的が、公園からの一方的な「ホームレス排除」、街からの「スケーター排除」であること。わたしたちは、この計画の白紙撤回を求め、工事を着工させないために、デモなどを行い、現在テントを張っています。/落書き禁止 落書きは「きれいなまち渋谷をみんなでつくる条例」により禁止されています。違反した場合には処罰されます。(後略)

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書評『世界宗教の条件とは何か』――創価大学での課外連続講座から

ライター
本房歩

創価学会の世界宗教化

 作家の佐藤優氏は、2017年9月から12月にかけて創価大学で計10回の「課外連続講座」をおこなった。本書は、その内容をまとめたものである。
 佐藤氏は日本基督教団に所属するプロテスタントのキリスト教徒であり、神学者でもある。
 一方で、佐藤氏は創価学会と公明党に深い関心をもち、この数年、精力的に関連の著述も重ねてきた。

 創価大学の創立者でもある創価学会の池田大作第三代会長を、深く尊敬しています。(『世界宗教の条件とは何か』/以下同じ)

 キリスト教徒である佐藤氏が、なぜ池田会長を尊敬し、これほど創価学会に強い関心を抱いているのか。連続講座の冒頭、氏はこの理由に言及する。

 いちばん強い要因を一つだけ挙げるとすれば、「創価学会の世界宗教化」という現象に対する関心です。

 いうまでもなく氏が信奉するキリスト教は、西暦313年のミラノ勅令によってローマ帝国の公認宗教となり、世界宗教となって久しい。
 ただし、そのプロセスは現代のキリスト教徒にとっても歴史書で学ぶしかない。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第80回 僕の好きな文芸誌

作家
村上政彦

 文芸誌というのは、小説や詩、エッセイや書評などを掲載した、文学に特化した雑誌をいう。僕は文芸誌の新人賞をもらって作家としてデビューしたので、何か特別な思い入れがあるかというと、そうでもない。
 ただし、デビューする前は、いわば修業のために何誌か定期購読していた。作家の名前が印刷された表紙を眺めて、いつかここに自分の名前が入ることを妄想していた。10代の半ばから20代の半ばにかけてのころだ。思えば、あれは僕の文学の青春だった。
 デビューしてからほとんど文芸誌は読まなくなった。気になる作家の作品が掲載されていると、ちらっと覗く程度で、文芸誌は読むものではなく、作品を発表する場に変わった。タモリが、「テレビは見るものではなく、出るもの」といっているのに近い。
 最近になって、また文芸誌を手に取るようになった。これには理由がある。大学の創作科で教えるようになったので、現在の文壇の動向を観察する必要に迫られたのだ。学生たちに最新の文学事情を伝えるためだ。 続きを読む

沖縄伝統空手のいま~世界に飛翔したカラテの源流 第41回(最終回)番外編 空手の流派はなぜ生まれたのか

ジャーナリスト
柳原滋雄

もともと個人に帰属した

 沖縄で個人から個人に秘かに伝えられてきた武術にほかならない空手。本来、それらの武術に流派という概念はなかったとされる。ところが一定程度、沖縄社会で認知されるようになると、2つの流派が言われるようになる。大きく分けて、昭林(しょうりん)流と昭霊(しょうれい)流の2派である。前者が現在のしょうりん流を意味し、後者が剛柔流系を意味すると言われている。
 現在、沖縄空手を分別するのに使われる「首里手」「那覇手」という言い方も古くからあったものとはいえず、地元行政において区別する必要に応じて「首里手」「泊手」「那覇手」に分類されたと伝えられる。 続きを読む