長嶺将真物語~沖縄空手の興亡 第7回 戦後の再出発

ジャーナリスト
柳原滋雄

最後の署内柔道大会

 焼け野原となった那覇に戻ってきてからの長嶺の仕事は、みなと村の管理だった。当時、那覇港から陸揚げされる物資の荷揚げ作業を国場組が一手に仕切っており、警察内部で長嶺に担当させようという声が出たという。殺しや盗みといった犯罪を扱う純粋な刑事警察より、経済警察のほうが長嶺の得意分野だった。
 みなと村を統括する警備派出所の責任者として仕事をした。敗戦国民である日本人の力は弱く、警察官であることがわかると身の危険があったため、警察官は制服を着用しないで勤務する時代だったという。
 このころ焼け野原となっていた那覇市で米軍による規格住宅づくりが推進された。長嶺家にも割り当てが回ってきた。住所は「牧志町2丁目」で、この住宅を少し改造して仮道場となし、そこで初めて「松林流」の看板を掲げた。長嶺の流派の始まりである。時に1947年7月のことだった。 続きを読む

特集⑩ 山崎正友、転落の始まり――腐敗した宗門に接近する

ライター
青山樹人

 この記事は『新版 宗教はだれのものか 三代会長が開いた世界宗教への道』(青山樹人著/鳳書院)の発売にともない「非公開」となりました。
 新たに「三代会長が開いた世界宗教への道(全5回)」が「公開」となります。

「三代会長が開いた世界宗教への道」(全5回):
 第1回 日蓮仏法の精神を受け継ぐ(4月26日公開)
 第2回 嵐のなかで世界への対話を開始(5月2日公開)
 第3回 第1次宗門事件の謀略(5月5日公開)
 第4回 法主が主導した第2次宗門事件(5月7日公開)
 第5回 世界宗教へと飛翔する創価学会(5月9日公開)

WEB第三文明の連載が書籍化!
『新版 宗教はだれのものか 三代会長が開いた世界宗教への道』
青山樹人

価格 1,320円/鳳書院/2022年5月2日発売
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第三文明社 公式ページ
 

菅内閣が始動――公明党が政権を担える理由

ライター
松田 明

存在感を増した公明党

 9月16日、菅政権が始動した。
 これに先立ち、15日には菅義偉・自民党総裁と山口那津男・公明党代表のあいだで、新政権が取り組む重点政策9項目を盛り込んだ政権合意に署名。引き続き、自公連立で日本の政治を牽引する。
 自民党が衆参で400議席を超す巨大政党なのに対し、公明党は60議席に満たない政党だ。しかし、1999年以来、民主党政権下の3年3カ月を除いて、自民党と公明党は連立政権を維持し続けている。この10月で、連立誕生から22年目に入る。
 自民党に比べれば圧倒的に少数政党の公明党が、なぜこれほど長期にわたって連立与党の任を果たせているのか。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第100回 身体知について

作家
村上政彦

 いずれAI(人工知能)が人間を超えるという見方がある。僕は、そういう考えを見聞するようになって、身体に興味を寄せるようになった。AIは、いわば機械的な脳だ。そこに身体はない。人間は身体を持っている。これが知に影響を与えることはないのか?
 身体知についての本を何冊か読んだなかで、いちばんおもしろかったのが、『「こつ」と「スランプ」の研究 身体知の認知学』だった。サブタイトルを見ないと、一見、ビジネス書のようにおもえる。編集者の苦心が窺えるタイトルだ。確かに、「身体知の認知学」だけでは、僕のような読者しか手に取らないだろう。
 でも、読みだしたら、ほんとにおもしろい。専門書のような難解さはかけらもない。「はじめに」で身体知について定義がある。

「身体知」とは、身体と頭(ことば)を駆使して体得する、身体に根ざした知のことです

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連載エッセー「本の楽園」 第99回 コロナが奪ったもの、与えたもの

作家
村上政彦

 親しくしている作家からコロナ見舞が届いた。巣籠り生活で、どっさり本を読んだだろうから、意見交換しないか、というものだった。さっそく、最近になって手に取った本を棚卸した。
 そのうちの1冊が、『コロナの時代の僕ら』だ。著者は、まだ若いイタリアの作家パオロ・ジョルダーノ。ある新聞に書いたコロナについてのエッセイに反響があり、日々の記録をエッセイ集としてまとめた。

僕はこの空白の時間を使って文章を書くことにした。予兆を見守り、今回のすべてを考えるための理想的な方法を見つけるために、時に執筆作業は重りとなって、僕らが地に足をつけたままでいられるよう、助けてくれるものだ。でも別の動機もある。この感染症がこちらに対して、僕ら人類の何を明らかにしつつあるのか、それを絶対に見逃したくないのだ

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