核兵器の恐怖から人類を解放するために(中) 時宜を得た核禁条約発効に日本人はどう対応すべきか

中部大学教授
酒井吉廣

 核兵器禁止条約(以下、核禁条約)の第7条5項は、加盟国以外でも赤十字の国際委員会やNGO、地域組織などからの支援受入れを認め、第8条5項ではこれらの組織や非加盟国をオブザーバーとして招聘することとしている。これを受け、日本では公明党の山口那津男代表が日本国のオブザーバー参加を日本政府に提案している。
 核兵器廃絶は唯一の被爆国の国民である日本人の強い願いである一方、日米安全保障条約で米国の核の傘の下にある日本国としては、難しい舵取りであることは言うまでもない。筆者は日本が核禁条約を入り口に世界からの核兵器廃絶を目指すならば、もう一工夫が必要だと考える。それは、日本国の現状を鑑みるに、日本政府とそれ以外の役割分担が必要だろうという考え方だ。第2回は、このテーマを掘り下げていく。 続きを読む

「黒い雨」裁判、国が方針転換――広範な救済措置の実現へ

ライター
松田 明

※写真は『公明新聞』2021年7月29日付

原爆投下と〝黒い雨〟

 1945年8月6日、広島市の上空で原子爆弾が炸裂した。
 このときに立ち上がったキノコ雲は、呉市から撮られた写真などをもとに「高さ8080メートル、幅約4500メートル」(広島市と県が設置した専門家会議)と推定されていた。
 だが、2010年に広島市立大学の研究グループが、2倍にあたる高さ16000メートルに達した可能性を算出している。
 高熱によって湧きあがったキノコ雲には、大量の粉塵とともに放射性物質が含まれていた。そして、上空で冷やされた雲は、まもなく雨となって地上に降り注いだ。 続きを読む

芥川賞を読む 第7回 『至高聖所(アバトーン)』松村栄子

文筆家
水上修一

孤独と痛みの癒しを求めるキャンパス小説

松村栄子著/第106回芥川賞受賞作(1991年下半期)

筑波学園都市が舞台

 第106回芥川賞を受賞したのは、当時30歳だった松村栄子の「至高聖所(アバトーン)」だった。『海燕』(1991年10月号)に掲載された123枚の作品だ。
 ――舞台となっているのは、(おそらく)筑波学園都市。整然と区画整備されたエリアに近代的な学部棟や研究施設が建ち並び、そこを行き来するのは学生と研究者と大学関係者などのごく限られた階層の人たちだけで、人間臭い市井の人々や労働従事者などの姿はない。いわば特殊なコロニーだ。 続きを読む

核兵器の恐怖から人類を解放するために(上) 世界で続く紛争で核兵器が使われたなら

中部大学教授
酒井吉廣

 3回にわたり「核兵器の使用が世界人類にとって如何に悪か」を綴っていく予定だ。その第1回目として「普通の爆弾が核爆弾だったら」という視点で検証していく。

911テロに核爆弾が使われていたら

 2001年9月11日午前、米国ニューヨークのワールド・トレード・センター(WTC)の2本のビルにハイジャックされた旅客機が相次いで突っ込んだ。同じタイミングで、バージニア州にある国防総省(通称「ペンタゴン」)にも旅客機が突っ込み、ペンシルバニア州ではハイジャックしたテロリストと乗客とがもみ合いになり旅客機は墜落した。
 さて、このテロで核爆弾が使用されていたらどのような事態になっていただろうか。 続きを読む

特集㊲ 世界からの「知の宝冠」――カストロを変えた会見

ライター
青山樹人

 この記事は『新版 宗教はだれのものか 三代会長が開いた世界宗教への道』(青山樹人著/鳳書院)の発売にともない「非公開」となりました。
 新たに「三代会長が開いた世界宗教への道(全5回)」が「公開」となります。

「三代会長が開いた世界宗教への道」(全5回):
 第1回 日蓮仏法の精神を受け継ぐ(4月26日公開)
 第2回 嵐のなかで世界への対話を開始(5月2日公開)
 第3回 第1次宗門事件の謀略(5月5日公開)
 第4回 法主が主導した第2次宗門事件(5月7日公開)
 第5回 世界宗教へと飛翔する創価学会(5月9日公開)

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青山樹人

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