今こそ求められる「民間外交」の担い手――識者が読むSGI提言

中国清華大学高級研究員/中部大学教授
酒井𠮷廣

世界宗教が備える「doing」

 今回(第47回)の「SGIの日」記念提言を読んで、「doing(行動)」の書であるという印象が強く残りました。一般に、宗教は「聖典」(教典)を持ちますが、その共通点として「being(あり方)」を説いていることなどが挙げられます。具体的には、神仏の姿、教え、目指すべき社会、先人らの殉教の物語――といったものです。
 その上で提言は、日蓮の教え(being)を念頭に、眼前の地球上の諸課題を直視し、「このように解決していこう」との「doing」を国際社会・市民社会に呼びかけています。すなわち、教条主義に陥らず、刻々と変化する時代や社会状況に応じて、現実的かつ万人が共感し得る具体的方途を示している。そうした「画期性」が重要だと感じます。また、このような提言を40年も前から継続してきた熱意に感銘を受けました。
 さらに、もう一重思索を重ねると、創価学会ではすでに「being」が確立されているからこそ、明確な「doing」を展開できることが理解できます。これまで私は第三文明社の出版物はじめ、池田会長の著作を何冊も読んできました。中でも小説『人間革命』には、日蓮の教えを現代に継承する三代会長の平和行動と、草創期の学会員の物語が綴られています。この小説が「being」として受け継がれているから、学会員の皆さんもよりよい社会の実現に向かって「doing」できると考えられるのです。 続きを読む

芥川賞を読む 第16回 『蛇を踏む』川上弘美

文筆家
水上修一

理性と対称的な根源的な仄暗い力や衝動のようなもの

川上弘美(かわかみ・ひろみ)著/第115回芥川賞受賞作(1996年上半期)

石原慎太郎の辛辣な評価

 第115回の芥川賞は、当時38歳だった川上弘美の『蛇を踏む』が受賞した。『文学界』(1996年3月号)に掲載された約75枚の作品だ。
 この作品は、「ミドリ公園に行く途中の藪で、蛇を踏んでしまった」という鮮やかな一文から始まる。その蛇が女に変身し、「自分はあなたの母親だ」と言い張り、主人公のヒワ子にも蛇の世界にくる(蛇になる)ことを何度も勧める。ヒワ子は、蛇の世界に魅かれながらも、その誘惑に抗い蛇にはなるまいと格闘する。
 一種の変形譚(人間が動植物などに変る転身物語)だが、この作品では、人間が蛇になるのではなく、蛇が人間になる。人間は、あくまでも蛇になることと格闘するのだ。
 この作品に対する選考委員の評価はきれいに2つに分かれた。まず厳しい評価を与えたのが、前回の選考会から参加した宮本輝と石原慎太郎だった。2人が共通して推したのは、この作品ではなく、福島次郎の『バスタオル』だった。 続きを読む

高まる公明党の存在感――ウクライナ情勢で明らかに

ライター
松田 明

公明の提言に沿った緊急支援策

 ロシアの侵攻を受けているウクライナでは、少なくとも人口の20%にあたる約1千万人が国内外への避難を余儀なくされている(国連難民高等弁務官事務所調べ)。
 うち、国外へ逃れた人は3月19日時点で339万人(国連難民高等弁務官事務所発表)にのぼる(「読売オンライン」3月21日)。
 一方、国際移住機関の発表では、戦闘の激化などで移動したくてもできない状況の人々が約1200万人、ウクライナ国内の戦闘地域に取り残されているという。
 3月14日、公明党は日本政府に緊急提言を出し、日本への入国を希望する人々について、身元引受人がいない場合でも受け入れることと、避難民が増え続けている周辺国への支援を要請した(「公明ニュース」3月15日付)。 続きを読む

半数が「自公連立」を望む――危機のなかでの公明党への期待

ライター
松田 明

公明党の施策に集まった評価

 夏の参議院選挙でどのような結果を望むか――。
 ロイター社が企業を対象におこなった3月の調査(3月17日報道)で、約半数の47%が「自民・公明で過半数議席」を望むと回答した。
「自民党単独で過半数」と回答したのは28%にとどまった。

自民・公明で過半数         47%
自民単独過半数           28%
自民・公明と改憲勢力で3分の2以上 16%
その他                9%
「3月ロイター企業調査」3月17日

 参院選は直接「政権選択」につながる選挙ではないものの、与党が過半数を切る〝ねじれ〟が生じると政権運営に支障をきたす。過去の政権交代はいずれも直近の参院選で〝ねじれ〟が起きていた。
 調査結果からは日本の主要企業が、自民党単独政権よりも公明党との連立政権のほうが、より安定した理想的な政権の枠組みだと考えていることが浮き彫りになった。 続きを読む

スペシャリストが揃う参議院公明党③――里見りゅうじ議員(愛知選挙区)

ライター
松田 明

「働き方改革」に大きく貢献

 3つの法律の話をしたいと思う。
 まずは2018年の国会で成立し、19年4月から施行がはじまっている「働き方改革関連法」。長時間労働の是正や、短時間・派遣労働者の待遇改善、同一労働同一賃金、障がい者就労支援、ブラック企業対策などが盛り込まれた法律だ。
 2016年8月の第3次安倍内閣で働き方改革担当大臣のポストが新設され、9月に創設された「働き方改革実現会議」が10回の会議を経て実現計画を策定。18年の国会に内閣提出法案として出された。
 連立与党・公明党で、この法律の成立に大きな役割を果たしたのは、2016年7月の参院選で初当選したばかりの里見りゅうじ議員だった。
 新人議員が重要な役割を担えたのは、里見議員がたぐいまれな労働行政のプロフェッショナルだったからだ。 続きを読む