特集① 創価学会創立90周年――日蓮仏法の精神を受け継ぐ

ライター
青山樹人

創価教育学会の誕生

 創価学会は日蓮大聖人(1222~1282年)の仏法を実践する在家の教団である。本年2020年は、いよいよ創立90周年を迎える。
 1930年(昭和5年)に日本で誕生し、今やSGIとして192カ国・地域にまで広がる世界最大の仏教団体に発展した。
 そして、それは単なる教勢の拡大にとどまらず、宗教やイデオロギーの差異を超えて、各国の第1級の知性から尊敬と共感を受け、連帯を求められる、世界的な人間主義の民衆ネットワークとして知られるようになった。
 創立当時の名称は、創価教育学会。
 初代会長の牧口常三郎は、教育者として市井で活躍し、同時に『人生地理学』(1903年)を著した地理学者として、同時代の新渡戸稲造や柳田国男といった人物からも高い評価を受けていた。
 日露戦争を目前に好戦的な国威発揚が叫ばれていた最中(さなか)に、牧口は〝世界市民〟としての生き方を提唱し、「軍事的競争」「政治的競争」「経済的競争」の時代から「人道的競争」の時代への転換を訴えている。
 その牧口の畢生(ひっせい)の大著である『創価教育学体系』は、彼を師と仰ぐ戸田城聖の尽力によって世に出た。
 発刊日は1930年11月18日。創価教育学会の文字が初めて公になったこの日が、のちに学会の創立記念日と定められた。
 戸田もまた教育者であり、彼が著した『推理式指導算術』は数多くの受験生から絶賛されて大ベストセラーとなっている。

「日蓮正宗そのものではない」

 その牧口と戸田が相次いで日蓮正宗に入信したのは、1928年のことであった。
 日蓮正宗は、日蓮が本弟子とした6老僧の1人・日興の門流を汲む宗派である。総本山は静岡県富士宮市の大石寺。20世紀初頭には日蓮宗富士派と称していたが、明治の終わりに日蓮正宗と改称していた。
 一個の人間の生活上に価値を創造し、人類社会に貢献することを教育の至上価値と考えていた牧口は、その人間生命を変革しゆく方途を解き明かした日蓮大聖人の仏法に強く共鳴した。
 創価教育学会は次第に、日蓮仏法の実践によって生活上に変革の実証を求めていく信仰団体へと昇華していく。
 ただし、それは古くからの正宗信徒を指す法華講のような集団ではなかった。
 牧口会長は、

私の思想は日蓮正宗そのものではない

創価教育学会そのものは前に申し上げたとおり日蓮正宗の信仰に私の価値創造論を採り入れたところの立派な1個の在家的信仰団体であります(『創価教育学体系』)

と明言している。
 創価学会と日蓮正宗の関係は、たしかに「在家信徒」と「宗門」ではあったが、歴史的に見ても、法的に見ても、歩んできた実質を見ても、在家信徒が寺院や僧侶に従属するというような世間一般の寺檀制度的な図式ではない。
 日蓮大聖人の思想は徹底した平等主義に貫かれている。門下への書状にも

此の世の中の男女僧尼は嫌うべからず法華経を持たせ給う人は一切衆生のしう(主)とこそ仏は御らん候らめ(御書1134ページ)

と明確に記されている。
 寺院に隷属することなく、在家として日蓮仏法を実践する学会のあり方は、日本がファシズムに覆われていくなかで、宗門との決定的な違いとなって表れた。

獄中で正義を貫き殉教

 1931年(昭和6年)に関東軍が起こした満州事変を口実に、日本は満州を占領。やがて日中戦争の泥沼に突入していく。
 41年(昭和16年)には米英に宣戦布告し、太平洋戦争が勃発。軍部政府は総力戦遂行のために国家神道による思想統一を図り、伊勢神宮の遙拝(ようはい)や神札の奉掲を国民に強要する。
 当時の宗教界の大部分は、こうした思想弾圧に抗するどころか、弾圧を恐れてむしろ積極的に軍部に協力し、戦争を賛美し、信徒に挙国一致を呼びかけていく。
 日蓮正宗も例外ではなかった。宗門は日蓮大聖人の遺文から「日蓮は一閻浮提第一の聖人なり」など、軍部政府の宗教政策に不都合な部分を14カ所も削除。
 太平洋戦争が開戦すると法主の訓諭(くんゆ)で「恐懼感激」と戦争を賞讃し、翌年には宗務院の院達で伊勢神宮の遥拝を全末寺と信徒に命じている。
 これに対し、牧口会長は特高警察の監視と妨害をものともせず、全国各地にまで赴いて言論戦を展開した。
 1943年(昭和18年)5月、牧口は警視庁中野署に1週間留置された。創価教育学会が入会者に神札の破棄を指導していた件で取り調べを受けたのである。
 慌てた宗門は6月27日に牧口と戸田、ほかに理事7人の学会首脳を総本山に呼び出した。弾圧が及ぶことを恐れた彼らは、法主立会いの場で、創価教育学会に神札の受諾を迫ったのである。
 牧口会長は「神札は絶対に受けません」と拒絶して下山。
 7月6日、牧口会長は折伏に訪れていた伊豆・下田で逮捕され、警視庁に移送された。同日、戸田理事長も東京で逮捕。容疑はいずれも治安維持法違反と不敬罪であった。
 在家信徒が宗祖の精神を貫いて逮捕されたにもかかわらず、日蓮正宗は累(るい)を恐れて両名に登山停止の処分を下した。牧口会長は獄中でも取り調べの検事に対して自身の宗教的信念を述べ、果敢に対話に挑んでいる。
 学会創立からちょうど14年目の1944年(昭和19年)11月18日、信教の自由を貫いて獄中に逝去した。享年72歳。老衰であった。
 日本がファシズムに狂い、自国民ばかりかアジアの幾多の民衆に塗炭の苦しみを与えていった時代。日本の宗教界はこぞって戦争を賛美し、国民を戦時体制へと動員した。最高指導者の獄死をもって抵抗した宗教団体は、創価教育学会だけである。

※この記事は『最新版 世界広布新時代への飛翔』(青山樹人著/鳳書院)をベースに加筆修正したものです。

【創価学会創立90周年特集】 特集① 特集②
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あおやま・しげと●著書に『宗教はだれのものか』(2002年/鳳書院)、『新装改訂版 宗教はだれのものか』(2006年/鳳書院)、『最新版 宗教はだれのものか 世界広布新時代への飛翔』(2015年/鳳書院)など。WEB第三文明にコラム執筆多数。