コラム」カテゴリーアーカイブ

連載エッセー「本の楽園」 第44回 青春の詩人・中原中也

作家
村上政彦

作家になる、と宣言して高校を中退した。若気の至りである。もちろんすぐに作家デビューできるわけもなく、高校中退の身の上では、ろくな働き口もなく、さまざまなアルバイトを転々とした。
なかでもきつかったのは、建設現場の力仕事だった。穴を掘ったり、セメントをこねたり、資材を運んだり。昼前には、くたくたになる。ただ、若かったから食欲はあって、昼の弁当は、このうえなくうまかった、
朝の早い仕事だから、終わるのも早い。日没前には帰り支度をする。しかし僕は、まっすぐ家へ帰らない。途中で喫茶店に寄るのだ。 続きを読む

映画『ウィンストン・チャーチル』――「言葉」の力で世界を救った27日間を描く

ライター
倉木健人

尊敬するリーダー1位

 世界最大級のコンサルティング&監査法人であるPWC(プライスウォーターハウスクーパース)。
 同社が2013年に実施した「世界のCEOが尊敬するリーダー」で1位に輝いたのが、かつての英国宰相ウィンストン・チャーチル(1874-1965)だった。
 そのチャーチルが首相に内定する1940年5月9日から、下院で演説する6月4日までの27日間を描いたのが本作である。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第43回 「不便益」という思想

作家
村上政彦

 人が便利さを求めるようになったのは、いつごろからだろう。考古学が教えるところでは、まず、人は石器を手にし、ついで青銅器を持ち、やがて鉄器を使うようになった。これは、より便利な道具を求めるようになったと考えられる。
 しかしもっと遡ると、人が両手を自由に使うようになったのは、やはり、便利さを求めてのことだったろうから、人類は発生してから間もなく、本能的に便利さを追い求めてきたといってもいいのではないか。
 すると、「不便益」というアイデアは、実は、かなり壮大な転換の兆しなのかもしれない。 続きを読む

沖縄伝統空手のいま~世界に飛翔したカラテの源流
第1回 沖縄空手の本質

ジャーナリスト
柳原滋雄

空手は沖縄発祥の武術

2020年の東京オリンピックで、日本発祥の武道「空手」が初めて正式種目として認められた。そのため新聞のスポーツ欄でも心なしか空手に関するニュースが以前よりも増えたように感じられる。
再来年の7月24日から8月9日まで17日間の東京オリンピックの期間中、柔道競技終了後の8月、同じ日本武道館で空手競技が開催される。
行われるのは、型2種目(男・女)と組手6種目(軽量級、中量級、重量級、各男女)の計8種目で、各種目とも10人の出場選手の中からメダルを競う。その結果、空手だけで8人の金メダリストが初めて誕生することになる。  続きを読む

第43回「SGIの日」記念提言を読む――民衆の連帯への深い信頼

ライター
青山樹人

世界が注視する提言

 SGI(創価学会インタナショナル)は、今や192ヵ国・地域という世界最大規模の広がりを持つ仏教教団に発展している。
 各国の創価学会の代表が集ってSGIの結成をみたのは、1975年1月26日のことだった。
 池田大作SGI会長は、1983年以来、毎年のこの「SGIの日」に合わせ、世界に向けて記念提言を発表し続けてきた。
 今回の提言は「人権の世紀へ 民衆の大河」と題されたもの。
 世界に蔓延する排他主義、核廃絶、難民・移民問題、国連のSDGs(持続可能な開発目標)などに触れ、これら地球的課題を〝民衆の連帯を大河のように広げて〟いくことで超克していこうと呼びかけている。 続きを読む