投稿者「web-daisanbunmei」のアーカイブ

空手普及100年――唐手から空手へ(中)

ジャーナリスト
柳原滋雄

確定できないままの講道館演武会

 1957年に88歳で死去した沖縄出身の船越義珍(ふなこし・ぎちん 1968-1957)が、東京で空手指導したのは戦争中に大分県に疎開したおよそ2年間を除く33年の歳月である。
 逝去半年前の1956年秋、船越は産業経済新聞社から『空手道一路』という自身のエッセイ的自伝を上梓した。空手にかけた自身の生涯を綴ったものだったが、記憶のみに基づいて書いた部分が多く含まれることは指摘されてきた通りだ。
 例えば文部省主催の運動体育展覧会のため上京した肝心の1922(大正11)年のくだりも、「たしか、大正10年の末だったと思う」などと書く。信頼できる資料と照らし合わせないまま活字にしたことが明らかだ。こうした傾向はこの著作に限ったわけではない。 続きを読む

参院選2022直前チェック②――物価高対策を検証する

ライター
松田 明

実態に沿った主張はどちらなのか

 今回の参院選で有権者がもっとも関心を持っているのが「経済対策」すなわち「物価高対策」だ。
 NHKが6月24日から3日間調査したアンケートでは、「参院選で最も重視する政策課題」として43%が「経済対策」を挙げた。
 言うまでもなく、これは2月にはじまったロシアによるウクライナへの軍事侵攻によってもたらされたもの。世界規模で、原油価格や穀物価格が高騰したのだ。1月の時点で、国民の最大の関心事は「新型コロナ」だった。 続きを読む

参院選2022直前チェック①――データで検証する各党の公約

ライター
松田 明

ポピュリズムの罠

 7月10日投票の参議院議員選挙は、すでに期日前投票がはじまっている。総務省の発表では、公示からの4日間に期日前投票を済ませた人の割合は、2016の参院選と比較して19.72%増えているという。
 一方で、どの政党の候補者に投票すべきか、なかなか判断に迷っている人もいるだろう。
 SNSなどでは、さまざまなイシューについての各党の賛否を単純に「○」「×」で示したものなどが流れてくる。一見「わかりやすく」見えるが、あまり単純化された情報は、やはり眉に唾をつけておいたほうがいい。
 たとえば「選択的夫婦別姓」や「同性婚」への賛否なら答えがシンプルなので「○」か「×」でもいいだろう。しかし、「消費税率引き下げ」「最低賃金1500円以上」などとなると、そもそも設問自体が不適切だと言わざるを得ない。 続きを読む

まやかしの〝消費減税〟――無責任きわまる野党の公約

ライター
松田 明

足並みが乱れる野党

 参院選の火ぶたが切られ、連日、各党各候補の舌戦が続いている。
 今回、目立つのは野党の足並みの乱れと、攻め手を欠くゆえの無責任な〝甘い言葉〟だ。
 6月9日、日本経済新聞は次のように厳しく指摘した。

7月の参院選を前に国会と選挙の両面で野党内の足並みの乱れが目立つ。衆院本会議での内閣不信任決議案の採決でも対応は割れた。立憲民主党が提出した決議案を日本維新の会と国民民主党は与党とともに反対に回って否決した。7月10日を見込む投開票日まで残り1カ月となってもなお候補者調整は進んでいない。(「日本経済新聞電子版」6月9日

 通常国会の終盤で、立憲民主党は岸田内閣への不信任決議案を提出した。だが、同じ野党内からも国会の時間を無駄に使うパフォーマンスだと批判を浴び、同調した主要政党は日本共産党だけだった。 続きを読む

物価高から暮らしを守る——公明党の参院選マニフェスト

ライター
松田 明

有権者が期待するもの

 第26回参議院議員選挙(7月10日投票)が、本日6月22日に公示された。
 有権者がこの参院選で重視している政策は何か。各社の調査では、おしなべて「物価高対策」がもっとも高く、たとえばFNNが6月18~19日に実施した電話調査では38・9%を占めた。

次いで「景気・雇用」(33.4%)、「年金・医療・介護」(32.3%)、「子育て支援・少子化対策」(29.6%)と続いた。(「FNNプライムオンライン」6月20日

 環境・エネルギー、外交・安全保障、新型コロナ対策はいずれも12%台で、有権者が生活の安心を強く望んでいることがわかる。
 3年目に入ったコロナ禍のなかで、ウクライナ情勢が追い打ちをかけるように世界経済に影響を及ぼし、燃料価格や食料価格の高騰を招いている。
 国民の関心事は、どの政党が具体的な政策を実現する能力を持ち、暮らしの不安を取り除いて、安心と希望をつくり出せるのかにあるといえるだろう。 続きを読む