文芸誌というのは、小説や詩、エッセイや書評などを掲載した、文学に特化した雑誌をいう。僕は文芸誌の新人賞をもらって作家としてデビューしたので、何か特別な思い入れがあるかというと、そうでもない。
ただし、デビューする前は、いわば修業のために何誌か定期購読していた。作家の名前が印刷された表紙を眺めて、いつかここに自分の名前が入ることを妄想していた。10代の半ばから20代の半ばにかけてのころだ。思えば、あれは僕の文学の青春だった。
デビューしてからほとんど文芸誌は読まなくなった。気になる作家の作品が掲載されていると、ちらっと覗く程度で、文芸誌は読むものではなく、作品を発表する場に変わった。タモリが、「テレビは見るものではなく、出るもの」といっているのに近い。
最近になって、また文芸誌を手に取るようになった。これには理由がある。大学の創作科で教えるようになったので、現在の文壇の動向を観察する必要に迫られたのだ。学生たちに最新の文学事情を伝えるためだ。 続きを読む
