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連載エッセー「本の楽園」 第30回 岩波文庫について①

作家
村上政彦

 文学を手にし始めた10代のころ、ひとつ悩みがあった。まだ子供だから経済的には不自由だ。しかし、ハードカバーの単行本は高い。だから、読みたい本があっても、それが文庫になるのを心待ちにしたのだが、早く読みたいので、待っているあいだ、ずっと焦れている状態だった。
 僕は、ほとんどの文学作品を文庫で読んでいる。文庫は、廉価だし、持ち運ぶにも便利だ。本棚に並んでいるのは文庫ばかりだった。背表紙の出版社を見ると、新潮社、文藝春秋、講談社、集英社などがあったが、そのなかでも特別な存在は岩波文庫だった。 続きを読む

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都議選はなぜ「7月」になったか――躍進した公明党が金権撲滅に動く

ライター
松田 明

41道府県は4月の選挙

 7月2日に投開票を迎える東京都議会議員選挙。それにしても、首都とはいえ一地方議会選挙である都議選が、これほど早くから、しかも連日、マスメディアの注目を浴びて全国区の話題になっているのは異例である。
 ところで、通常、統一地方選挙は4月であり、47都道府県のうち41道府県は4月に議会選挙を行っている。例外は、東京都のほか、東日本大震災の影響で2013年4月の選挙が延期された岩手県、宮城県、福島県と、1966年12月に自主解散した茨城県、本土復帰した直後の1972年6月に選挙を行った沖縄県だけだ。 続きを読む

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連載エッセー「本の楽園」 第29回 生きるための詩

作家
村上 政彦

 僕は9歳のときに父を喪った。その後は母と祖母に育てられた。
 母は、酒場で「ママさん」と呼ばれる勤めをしていた。だいたい昼頃まで寝ていて、夕刻に近くの銭湯へ行き、きれいに化粧をして着物を着る。三面鏡の前で、ぽんと帯を叩いて出かけて行く。帰るのは深夜である。

 家族というのは不思議なもので、母と祖母は特に話し合ったわけでもないだろうが、いつか母が「父」になり、祖母が「母」になった。 続きを読む

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「離党ドミノ」止まらぬ民進党――共産党との共闘路線に離党者続出

ライター
松田 明

東京都連幹事長の離党

 蓮舫代表の選挙地盤・東京で、民進党の〝離党ドミノ〟が止まらず、ついに国会議員まで離党を宣言。
 4月9日、民進党東京都連幹事長の長島昭久衆議院議員が地元支持者に離党の意向を表明し、その旨を自身のツイッターでも発表した。当選回数5回。民主党政権時代には防衛副大臣も務めた人物だ。 続きを読む

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連載エッセー「本の楽園」 第28回 君子の酒食

作家
村上 政彦

 僕は、グルマン(健啖家)ではあるが、いま流行のグルメ(美食家)ではない。知る人ぞ知るレストランに何年も先の予約を入れたり、旨いものを求めて辺境に足を運んだりすることはない。
 ジャンクフードも好きだし、小腹が空けばスーパーの沢庵でお茶漬けもかきこむ。いたって普通の食生活を送っている。ただ、食べるのは好きで、旨いものには必ず手が出るし、TVのグルメ番組などは好んで見る。
 実は、本でも、食について書かれたものは読んでいて愉しい。もっとも、こっちのほうは、文章の好悪がはっきりしているので、グルメといえるかもしれない。不味い文章は、まったく食指が動かないのだ。 続きを読む