僕は小説家として生きているが、町の本屋がなければ、いまとは違った生涯を送っていたかも知れない。本屋は、僕にとって広い世界に開かれた窓であり、広い世界に続く扉であり、このような生き方もあると指し示してくれる道標だった。
町の本屋が次々に店を閉めてゆくとニュースで見聞きし、この原稿を書くのに調べてみたら、2000年に21654店あった本屋が、2020年現在で11024店になっている。売り場面積を持つ店舗に限ると、9762店。この20年で半分以下になってしまった。
率直にいって驚いた。何となく、本屋が減少しているとは分かっていたが、ここまでとはおもわなかった。町の本屋に育てられ、生きる道標を示された身としては、狼狽するばかりだ。
そんなとき、『奇跡の本屋をつくりたい』の著者・久住邦晴さんを知った。北海道の札幌で親子二代70年にわたって「くすみ書房」を営んだ人だ。この著作のどのページにも本への愛が満ちている。こんなに本を愛した本屋は珍しいのではないだろうか。 続きを読む
