〝命を守る〟視点で景気対策に全力で取り組む

参議院議員/公明党女性委員会副委員長
竹谷とし子

若者・女性の力を生かすために、働く環境整備と雇用創出が不可欠。

仕事と子育ての両立に悩む女性たち

――働く女性たちへの支援として、今どのような政策が求められていると思いますか?

竹谷 雇用全体に占める女性の割合は約43%まで増え、女性の労働力率は高まっています(※1)。そうしたなかで、女性が働くうえで男性よりも負荷がかかるのはやはり、出産と子育てだと思います。
 これまでも公明党は育児休暇の拡充などに取り組んできました。1996年に49.1%だった女性の育休の取得率は、2011年には87.8%まで高まってきています(※2)。しかし、それでも出産を機にやむなく退職する女性がいまだ多いのが現実で、育休から復帰した後の働き方の見直しは重要な課題となっています。
 また、仕事と子育てとの両立を阻む問題として、0~2歳児にとくに多い待機児童問題があげられます。子どもを預けるところがないから働きたくても働けないという女性がまだまだ多くいます。働く女性への支援とともに、働きたくても働けない女性への支援も大切です。
 15~44歳の有配偶女性(配偶者がいる女性)において、就業希望者が268万人いるという調査結果(※3)があります。この10年間で民間の平均所得は約1割下がっており(※4)、とくに30代、40代男性の平均所得の減少は顕著です。これに単身世帯の急増を考えると、働くことを希望する女性がもっと働きやすい環境へと、改善が求められてくるのは当然といえます。充実した保育環境の整備や短時間正社員制度、在宅ワークなど柔軟な働き方の基盤をつくる支援が必要です。
 それと同時に、これまで受けた教育や能力を十分に生かし切れていない意欲ある女性が、責任ある地位に登用される機会を増やしていくことが必要です。それが、企業の成長や停滞する日本経済の競争力を高めることにつながると思います。

※1 総務省「労働力調査」
※2 厚生労働省「雇用均等基本調査」
※3 みずほ総合研究所「就業ニーズ別にみた女性雇用促進の課題」
※4 国税庁「民間給与実態統計調査」

仕事を増やすことが大切

――男女問わず若者の非正規雇用が増えていることも問題です。

竹谷 非正規雇用で働く人は、解雇のリスクが高く、また、正規雇用に比べて安い賃金で仕事をしている場合が多く、極めて弱い立場にあります。また、スキルアップの機会にも恵まれていません。若い人の場合はそれが、「将来結婚ができない、結婚しても子どもが持てない」といった不安や諦めにつながっていると思います。
 これは個人の問題である以上に、日本の社会制度が継続しえないことにつながる社会全体のリスクです。こうした問題への対策として、働くことを支える社会保障を考えていくことは重要です。最近、働ける若い人でも生活保護を希望する人が増えているといわれますが、働くことが有利になるように制度を構築していかなければいけません。
 そして、抜本的な改善に必要なことは、やはり世の中に仕事がたくさん生まれて所得が上がっていくことです。今、非正規が増えているのは、絶対的な仕事量が少ないからです。雇用する側も、競争が激しく、人件費を下げてコストカットせざるを得ない実情があります。仕事が増えてくれば、雇用する側も条件をもっとよくしていけるはずです。戦後の高度成長期がまさにそうでした。企業が常に人手不足で、労働者を囲い込むために正規雇用が増えたのです。
 先ほどの女性の就業についても、社会のなかに価値を生む仕事が増えて、とにかく人手が欲しいという状況が生まれることで企業側も「子どもが病気のときは休むことができる」「1日4時間だけの就業」といったさまざまな条件を受け入れやすくなってくるでしょう。

防災とエネルギー分野へ投資を

――具体的な景気対策としてどのようなものがありますか?

竹谷 公明党は今こそやるべき景気対策として、「防災・減災ニューディール政策」を提案しています。
 これは、高度成長期に集中的に造られ、老朽化した社会インフラを適切に修繕し、大地震に備えて耐震化していくことが目的です。いわば〝命を守る公共事業〟です。
 そのうえで、公共事業を集中的に行うことによって雇用も生み出そうというものです。
 この公共投資によって民間の需要不足を埋め、新たに100万人の雇用創出を目指します。そして乗数効果(政府支出など投資を増やすことによって国民所得が投資額以上に増えるという効果)で、工事以外にも、さまざまな仕事へ波及し、これを通じて本格的な景気回復への基盤を築いていきます。
 景気対策のもう1つの柱は、エネルギー政策です。日本のエネルギー自給率は約5%。たとえば、現在、日本の火力発電では、エネルギーの4割程度を電力として使っていますが、残りの6割は廃熱として捨てざるを得ず、非効率です。エネルギーの使い方を変えて効率を上げることがこれからの課題の1つです。
 注目されるのが廃熱を冷暖房などの熱の需要に活用するコージェネレーション(熱電併給)システムです。現在、日本企業はこの分野で世界一の技術を持っていますが、普及率は欧米に比べてとても低いのです。
 北欧のデンマークを例にあげると、以前は、エネルギー自給率は日本と同程度に低かったのですが、北海油田開発に加え、再生可能エネルギーやコージェネの普及などの政策を進めて、今ではエネルギー輸出国になっています。日本も、エネルギー自給率を高め、外国に払っている莫大な化石燃料代金を抑えていくべきです。
 日本製の機械を使って日本で働く人が工事をすることで、日本社会を省エネ・低炭素化する。国内雇用を生み、そのぶん化石燃料の消費を抑えるという好循環をつくる。その方向に、今こそ政策を大きく転換するときです。公明党は再エネや省エネの推進によって、エネルギーの地産地消、そして、低炭素と省エネを実現するスマートな街づくりを推進していきます。
 街づくりという点で見ると、地域分散化のエネルギー政策は防災・減災対策にもつながってきます。ここに徹底して取り組むことで、日本の技術を生かした新たな産業が生まれてきます。

〝命を守る〟視点

――雇用創出に向けたインパクトのある対策を打つことで、将来への期待感が増すことも大切ですね。

竹谷 そうですね。現場で女性と話をすると、子どもたちの将来への不安が聞かれます。就職で悩む学生からは、「生まれてきた時代を間違えたのか」という声さえありました。こうした声を聞くと、やはり若者や子どもの将来に希望が持てる社会をつくっていかなければと強く思います。
 子育て支援などの政策を実現するにしても財源が必要です。その意味でも、景気を回復し雇用を生み出し、自然と税収も増えていくという形が求められます。経済が成長していたときは、成長の一部を福祉や社会保障に充てるような分配ができました。しかし、今は社会全体が地盤沈下している状態です。負担をどう分かち合うか、そんな時代といえます。
 そしてその負担に若者が耐え切れなくなってきています。その意味で、景気回復を考えていくことは、女性や若者のためにも、最重要の課題といえるでしょう。
 防災・減災ニューディールは、経済が最優先という考えではなく、防災・減災という〝命を守る〟視点から考えたことが特徴です。これからも、命を守る、そして、若者や女性の未来を守る政策実現に全力で取り組んでいく決意です。

<月刊誌『第三文明』2012年8月号より転載>

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たけや・としこ●1969年、北海道生まれ。創価大学経済学部卒。監査法人トーマツ勤務を経て、96年からアピームコンサルティング株式会社にて経営コンサルタントとして勤務。世界10ヵ国で企業などの経営改善を推進。公認会計士。2010年7月参議院議員に初当選。公明党東京都本部副代表、同女性委員会副委員長、青年委員会副委員長。公明党行政改革推進本部・公会計委員長として、国の経営改革のための 〝財政の見える化〟 実現に向け尽力中。党女性局平和・環境PT座長として、地球環境と共存する持続可能な低炭素、省エネ社会を目指し、再生可能エネルギー・省エネルギーを推進。公明党 参議院議員 竹谷とし子HP  参議院議員 竹谷とし子 公式Facebook