平成30年間の政治(下)――「無能な政権」が残した教訓

ライター
松田 明

先進諸国は長期政権

 令和の時代の新しい政治のあり方を考えるうえで、大事なことは〝同じ轍を踏まない〟ということだ。
 平成の政治が残した大きな教訓。その第一は、2012年の第2次安倍内閣が発足するまで、あまりに短命政権が続いたことだろう。
 内紛が絶えず、毎年のように社長の顔が変わる企業が、業績を上げ、取引先から信頼されるか否かを考えるまでもない。平成元年から民主党政権の末期まで、日本の首相は17回も替わったのだ。
 現在の安倍政権が7年目の長期政権になっていることを「独裁」うんぬんと、ことさらヒステリックに批判する人々もいる。
 G7の中ではドイツのメルケル首相は2005年から13年以上、政権を担っている。フランスのミッテラン大統領は14年間。イギリスのブレア首相の在任期間は1997年から2007年まで10年だった。 続きを読む

沖縄伝統空手のいま~世界に飛翔したカラテの源流
第32回(特別編)神人武館 空手の源流・手(ティー)を求めて

ジャーナリスト
柳原滋雄

 神人武館(しんじんぶかん)が世の注目を集めるようになったのは1990年にNHKが制作した沖縄空手の番組(参考動画:外部サイト)からかもしれない。電話帳から破った1枚の紙をつるして正拳突きでその紙を切る、か弱そうな女性がその難しい芸当を見せてから余計に注目された。この団体の創始者は翁長良光(おなが・よしみつ 1938-)会長。中学3年生から空手を始め、武歴60年以上。沖縄で50年や60年の空手歴は珍しくないが、空手に費やした時間やエネルギーは人後に落ちない。独自の境地を開き、88年に創設したのがこの団体である。 続きを読む

平成30年間の政治(上)――定着した「連立政権」の時代

ライター
松田 明

「平和」を守った平成の時代

 5月1日、新たな天皇が即位され、令和の時代がはじまった。
 平成が幕を閉じる際に多くの人々が言及したのが、平成の30年間が「平和」であったことだ。

近現代において初めて戦争を経験せぬ時代(御在位三十年記念式典での明仁天皇の言葉)

 明治、大正、昭和は、いずれも日本が戦争を経験した。明治維新からの約150年のうち、実質30年を占める平成が「平和」のうちに終わったことの意味は大きい。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第71回 アール・ブリュットの作家たち②

作家
村上政彦

アール・ブリュットの代表的な作家のひとり、ヘンリー・ジョセフ・ダーガーは、1892年に米シカゴ市内に生まれた。父はドイツからの移民で仕立て屋を生業とした。ダーガーが3歳のとき、母が女児を出産し、それがもとで亡くなった。妹は里子に出された。
父は教育熱心で息子が就学するまでに読み書きを教えた。8歳のとき、父が体調を崩して老人施設に入所し、少年は孤児院に預けられた。南北戦争における死者数を教師と論争するほど利口な子だったが、感情障害の兆候が見られ、12歳で精神薄弱児施設に入った。 続きを読む

理念なき野合の繰り返し——反目し合う野党の現実

ライター
松田 明

解散した自由党

「平成」から「令和」へ。
 改元を挟む史上最長10連休のゴールデンウイークを目前にした4月26日、国民民主党と自由党の合併が発表された。
 合併後の党名は、国民民主党。理念も政策も国民民主党のものを継続し、代表は玉城雄一郎氏のまま。合併にあたって小沢一郎氏の率いる自由党は解散した。
 支持率が1%あるかないかという両政党の合併のニュース。 続きを読む