ネットワークの本領発揮――学校の耐震化とエアコン設置

ライター
松田 明

「生命」を守る政党

 内閣府は、30年以内に南関東域でマグニチュード7クラスの地震が起こる確率を70%程度、同じく南海トラフを震源としてマグニチュード8~9クラスの超巨大地震が起こる確率を70%程度と発表している。
 また、近年は毎年のように各地で甚大な豪雨災害が起きている。平成の30年を総括する報道はいずれも、戦争のない時代であったかわりに、多くの自然災害に見舞われたことを挙げていた。
「防災・減災」は、今や日本の政治の重要な課題になっている。
 災害時に住民の避難場所となるのが学校施設だ。
 その学校施設の耐震化が遅れていることは、阪神・淡路大震災で指摘されていた。児童生徒が学校にいる時間帯に大地震が起きれば、子どもたちの命にかかわる問題でもある。
 公明党では、2001年に党女性委員会が「学校施設改善対策プロジェクト」を設置。翌02年には党文科部会に「学校施設耐震化推進小委員会」を設置して、早くからこの問題への対応をリードしてきた。
 だが、耐震化の対象となる学校は公立の小中学校だけでも、およそ12万校におよぶ。推進は容易ではなかった。

耐震化100%を達成

 そんななか08年5月の中国・四川大地震では、学校が倒壊して多くの犠牲者が出た。公明党はただちに政府に対し、耐震化への国庫補助率の拡大を提言。早くも翌6月には地震防災対策特別措置法が改正された。
〈生命・生活・生存〉を最大に重視する公明党ならではの、迅速な対応だったといえる。
 公明党が本領を発揮したのは、さらにこのあとだった。
 政府が財源に道筋をつけたことを受け、全国の地方議員がそれぞれの自治体で、議会質問などをとおして学校の耐震化を強力に推進したのだ。
 その結果、2002年時点では44.5%だった学校の耐震化率は、2015年度にはほぼ100%を達成した。
 国会議員が政府を動かして法を整備し、地方議員が地元の自治体を動かす。3000人近い地方議員を擁し、それが国会議員と水平にネットワークする公明党「チーム3000」ならではの快挙だった。

1人の地方議員の調査から

 そして、この公明党のネットワークが、今度は地方から国を動かした。その大きな事例が、小中学校施設へのエアコン設置だ。
 毎年、熱中症で多くの死者が出る今の日本では、猛暑そのものが重大な自然災害になっている。
 大人でさえ耐え難い猛暑のなかで、体力のない子どもたちがエアコンのない教室で過ごしてきた。
 2018年の補正予算では公明党の主張が実り、公立小中学校の普通教室へのエアコン設置費用が確保された。
 じつは、この端緒を開いたのは、1人の公明党区議会議員の取り組みだった。
 平成がはじまってまもない1990年頃、当時の東京・港区議会議員が、区内の小中学校を回って校長らと懇談するなかで、「夏場は教室が暑すぎで子どもたちが勉強に集中できない」という声を聞いた。
 東京都心の港区では、この頃からヒートアイランド現象が指摘されていたのである。
 議員になる前に空調設備会社に勤務する空調整備士だったこの議員は、すぐに気象庁に出かけて明治時代からのデータを調べた。
 その結果、明治初期から比べて1世紀余りのあいだに7~8月の平均気温が2.5度ほど上昇している事実を突き止める。
 このデータをもとに91年、区議会公明党は港区に対して冷房設備の設置を求めた。当初、区は消極的な対応だったが、公明党区議団は粘り強くこの問題を取り上げ続けた。
 そして2002年には設置を表明し、05年に区内の小中学校すべての普通教室へのエアコン設置を完了したのである。

体育館等へのエアコン設置へ

 この公明党・港区議団の取り組みは、都議会公明党を動かすことになり、2014年には東京都のほぼすべての普通教室にエアコンが設置された。
 2018年の夏は、記録的な猛暑となって死者も相次いだ。
 10月31日、参議院本会議で代表質問に立った公明党の山口那津男代表は、1991年にさかのぼる公明党地方議員の取り組みを紹介。
 自身も気象庁のデータを確認したことを述べ、普通教室ならびに、今後は特別教室や災害時の避難場所にもなる体育館へのエアコン設置の推進を安倍首相に求めた。
 これに対し安倍首相は、

 エアコン設置については、児童生徒が最も長時間を過ごす普通教室への新設を優先しつつ、地方自治体の実情に応じた対応を行ってまいります。

と答弁した。
 こうして11月7日、このエアコン設置に関する費用を確保した国の補正予算が可決したのである。
 東京都議会では、18年9月に公明党の伊藤興一議員が代表質問で、災害時の避難所になる学校体育館へのエアコン設置を求めた。
 小池都知事はすぐに対応を明言。12月には、むこう3カ年で538棟に設置する費用81億円を計上した2018年度補正予算が成立した。
 さらに本年3月の本会議では、リース方式で657棟に設置する99億円を計上した2019年度予算案を成立させた。
 国と地方の3000人のネットワークで小さな声を確実に拾い、粘り強い合意形成を図って政策に具現化していく公明党。
 誠実に愚直に政治に取り組む「チーム3000」の勝利をめざしたい。

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