松田明コラム書籍化のお知らせ――『日本の政治、次への課題』

ライター
松田 明

「ワンコイン」で買える本にしました

 きょうはいつものコラムではなく「お知らせ」です。
 このほど第三文明社から『日本の政治、次への課題』というタイトルで書籍を出させていただきました(9月8日発売)。
 これは、2015年3月から2023年7月まで「WEB第三文明」に掲載された拙文から抜粋したものを、大幅に加筆修正してまとめたものです。複数の記事として公開していたものを一部合体させたり、最新の出来事を書き加えたり、あらためて買っていただく価値があるよう、全面的に手を入れました。
 ちなみに目次はこのような感じになっています。

●民主党政権とは何だったのか――今もうごめく〝亡霊〟
●「チーム三〇〇〇」から生まれたもの
●「災害対策」に強い政党――自治体首長らの率直な評価
●公明党が果たす役割――地方でも国政でも重要な存在
●公明党と「政教分離」――〝憲法違反〟と考えている人へ
●「政治と宗教」危うい言説――立憲主義とは何か
●「革命政党」共産党の憂鬱――止まらぬ退潮と内部からの批判
●「非核三原則」と公明党――「核共有」議論をけん制
●「維新」の〝勢い〟がはらむリスクと脆さ
●維新、止まらない「不祥事体質」
●公明党、次への課題――SNSは宣伝ツールではない

 そもそもスマホで気軽に読めるのが「WEB第三文明」の利点ではあったのですが、過去記事が溜まっていくうちに「紙で読めないのか?」というお問い合わせが編集部に寄せられるようになったそうです。
 折しも統一地方選挙が終わった頃から、衆議院の解散日程がマスコミでも取り沙汰されるようになりました。
 そこで、日本政治の現状と課題について、平易な視点から家族や友人と語り合えるような本にということで、WEB第三文明編集部から書籍化のお話をいただきました。
 私のほうからは、できるだけいろいろな方が気軽に手に取れるよう、記事の本数も絞り込んで、価格もワンコイン程度にしていただきたいとお願いをしました。
 目次を見ていただくとわかるように、それぞれが独立した記事ですので、順番など関係なく、ご自分が気になったものを読んでいただいてかまいません。
 また、もしも何か参考になることがあるようでしたら、ご家族や友人に「この本のなかの、この記事を読んでみて」と勧めていただければ、ありがたいかぎりです。
 そういう実用的な使われ方になればいいなと思い、ワンコイン価格をお願いした次第です。紙代などが急激に高騰しているなかで、大変な努力をしてくださった第三文明社さんには感謝いたします。

日本政治に安定をもたらす

 書籍化するために過去に書いた記事を眺めながら、いくつか難しさも感じました。
 まず、人によって記憶の時間軸が違うことです。たとえば次期衆議院選挙の焦点のひとつになっている「野党共闘」は、2015年9月に平和安全法制が成立したことがきっかけで同年末から始まりました。
 人によっては、ついこのあいだの出来事でしょうが、たとえば新たに選挙権を持った18歳の人は当時まだ10歳です。
 史上最多の308議席を獲得して民主党政権が誕生したのは2009年9月。今30歳の人は、当時まだ16歳の高校生でした。
 本書の冒頭に「民主党政権とは何だったのか」を置いたのは、あの時の失敗を繰り返さないために、当時をよく知らない人には知ってほしいし、忘れてしまった人には思い出してほしいと思ったからです。
 2010年代以降、欧米先進諸国はポピュリズムの嵐に翻弄され、極右政党の台頭、トランプ現象、ブレグジット(英国のEU離脱)など、政治の不安定化が顕著になりました。
 そうしたなかで、日本だけが例外的に安定した政権運営を果たし、極端に傾かない〝中道〟的な政策を遂行してきています。このことは国際社会からも驚嘆の目で見られてきました。
 その日本の安定をもたらしているものとして、国内外の政治学者たちが指摘するのは、「自公連立」という、およそ政治学の従来の常識では考えられなかった政権のかたちです。
 支持基盤も重要政策に対するイデオロギーにも開きがある自民党と公明党が、安定した政権運営をおこなっているのです。本来なら政権の脆弱性になる互いのカラーの相違が、自公政権の場合はより幅広い民意の吸収にはたらいてきました。
 公明党は他の政党と違い、国会と地方で計3000人近い議員がフラットかつ緊密に連携しています。こうした公明党が政権内にいることで、とりわけ大災害やコロナ禍のような非常時にあって、じつは日本は世界的に見てもかなり手厚い施策をきめ細かく実施できています。
 公明党が政権にいることのありがたさを一番実感しているのは、おそらく全国の自治体の首長たちでしょう。

政治を語り合うきっかけの一冊に

 自公連立政権になって以降、この20年で女性や若者の声が国の政策に反映されるように変わってきました。昨今の「生理の貧困」への対応や「ブラック校則」の解消、学生への緊急給付金、奨学金制度の拡充など、若者政策がこれほど矢継ぎ早に実現しているのは、戦後で初めてだという識者の評価もあります。
 また駅や新幹線などのバリアフリー化が進み、公立小中学校の耐震化率はほぼ100%になりました。国のがん対策も格段に進んでいます。
 しかし、公明党が果たしている役割について、日本のメディアはほとんど伝えようとしません。私が細々と拙い寄稿を続けてきた理由は、WEB上に残しておけば1人でも2人でも目にする人がいて、何かの役に立つだろうと考えたからです。
 公明党に対しては、いまだに「政教分離に反している」といったような、およそ的外れな批判が見られます。こうした誤った認識に対しても、できるだけ丁寧にわかりやすく説明をしました。
 一方、野党が抱えている深刻な問題についても言及しています。一般論を言えば、与党に拮抗するような野党が存在するほうが政治に緊張感が生まれます。日本の政治の最大の課題は、率直に言って野党の能力と資質の低さではないのかと私は思っています。
 なぜ政権から転げ落ちたのか真摯な反省もせず、安直にエキセントリックな「反アベ」だけに走り、あげくには日本共産党なしでは国会論戦も選挙も戦えなくなってしまった旧民主党勢力。
 その日本共産党は党勢の退潮が止まらず、執行部を批判する者は次々に除名。彼らにとって「革命」への足がかりだった「野党共闘」もすっかり暗礁に乗り上げました。
 そして春の統一地方選挙で絶好調だった日本維新の会は、「日替わり」「週替わり」でその不祥事体質が露見しています。どの事案を見ても、そもそも公人としての資質を欠いた人間を議員にしてきたのではないかというようなものばかりです。
 なお本書『日本の政治、次への課題』には、公明党への率直な〝苦言〟も書きました。この8年あまり、ただの一度も記事内容に口を挟まず、自由に書かせてくださった編集部には本当に感謝しています。
 この本が、家族や友人と日本の政治について語り合う何らかのきっかけになれば、これほどうれしいことはありません。

『日本の政治、次への課題』
松田明著
 
価格 550円(税込) ※電子版440円(税込)
第三文明社/2023年9月8日発売
 
 
⇒Amazon
⇒紙版・電子版(第三文明社 公式サイト)


まつだ・あきら●ライター。都内の編集プロダクションに勤務。2015年から「WEB第三文明」にコラムを不定期に執筆している。著書に『日本の政治、次への課題』(第三文明社)。