野党共闘の先の悪夢――共産党との連合政権

ライター
松田 明

4野党の政策協定を報じる『読売新聞』(9月9日付)

誰が辺野古移設を決めたのか

 9月8日、立憲民主党、日本共産党、社会民主党、れいわ新選組の野党4党が、「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」を介する形できたる衆議院選挙への政策協定を結んだ。
 4野党の党首が署名したのは「衆議院総選挙における野党共通政策の提言」と題するもの。
 その「共通政策」のなかには、「アジアにおける平和の創出のためにあらゆる外交努力を行う」「沖縄辺野古での新基地建設を中止する」「消費税減税」「原発のない脱炭素社会を追求する」といった項目も並ぶ。
 立憲民主党の枝野代表は、日本共産党の志位委員長、れいわ新選組の山本太郎代表らと共に、署名した共通政策提言と記念撮影に収まった。
 しかし、思い出してもらいたい。
 2009年9月からの3年3カ月の民主党政権がやったことを。
 この年の衆議院選挙で、当時の民主党は沖縄・普天間飛行場の移設問題について、鳩山由紀夫代表が〝最低でも県外〟と公言して圧勝した。
 ところが、政権が発足すると「あれは代表としての発言で党の公約ではない」と撤回。わずか10カ月後に、普天間飛行場の移設先を辺野古にすると閣議決定し、日米共同声明を出した。
 辺野古への基地移転を決めたのは誰でもない。今の立憲民主党の主要な顔ぶれが並んでいた民主党政権なのだ。

平和どころか一触即発

 そのような日米共同声明を出しながら、民主党政権下で日米同盟は「漂流」と米側から痛烈に非難されるほど悪化した。
 日米同盟の漂流は、東アジア情勢の不安定化に拍車をかけた。
 政権が発足してまもない2009年12月、民主党幹事長だった小沢一郎氏は民主党議員143人を連れて訪中。人民大会堂で、当時の胡錦涛国家主席に143人の議員全員と握手をしてもらうパフォーマンスをしている。
 だが、中国の漁船が日本の排他的経済水域内で連日のように漁をしても、民主党政権には中国と対話のチャンネルさえなかった。あげくの果ては、野田首相が胡錦涛主席とウラジオストクで会った直後に、尖閣諸島の国有化を宣言。
 中国は猛反発し、各地で反日デモが発生。日系企業やデパートが軒並み焼き討ちされる事態となった。国交正常化40周年の記念行事はすべて中止。日中関係は〝国交正常化以来で最悪〟という窮地に陥ったのだ。
 米国とも最悪。中国とも最悪。平和どころか一触即発の危機を招いたのが、民主党政権の外交の結末だった。その人たちに「アジアにおける平和の創出のためにあらゆる外交努力を行う」と言われても、悪い冗談にしか思えない。
 さらに、東日本大震災を受けて国内すべての原子力発電所が停止していたなかで、原発再稼働を決定したのは民主党政権ではなかったか。
 官邸前でのデモの光景は、そもそもこのときの民主党政権に対する抗議から生まれたものだった。
 民主党が政権を獲得できたのは、「高速道路無料化」「月額26000円の子ども手当」「ガソリン暫定税率廃止」などという夢のようなマニフェストで有権者を幻惑したことも大きかった。
 自公政権から、そのような財源の確保は非現実的だと批判されても、民主党は〝霞が関には埋蔵金がある〟と言って、これらの実現は可能だと主張した。
 しかし実際に政権の座に就いても、そのような埋蔵金などどこにも見当たらない。これらのマニフェストは文字どおりの「画餅」に終わった。

「政治主導」なんてうかつなことを言ったら大変なことになった

与党がこんな忙しいとは思わなかった

 これは政権発足から1年以上を経た2010年11月14日、日本経済新聞が報じた当時の枝野幸男幹事長代理の発言だ。
 どれほど彼らが無能で無責任だったかを象徴している。東日本大震災が襲うのは、その4カ月後である。

単なるポピュリズム

 一方、その民主党政権時代に与野党を含めて避けられない国民的議題になっていたのが、少子高齢化が急速に進むなかでの社会保障の財源だった。
 当時、野党だった自民党と公明党も、これについては与党・民主党と真剣に議論を重ねる。そして、2012年6月に3党で合意をみたのが、消費税率を10%に引き上げることを柱とした「社会保障と税の一体改革」だった。
 どの政党も、有権者からの反発や選挙のことを考えれば、消費税率の引き上げは手をつけないほうが得策だ。けれども、それでは近い将来の社会保障が破綻してしまう。
 その危機感と責任のもとで、与野党の垣根を越えて自民党と公明党は民主党政権に協力し、消費税率10%への引き上げと一体で社会保障の枠組みに合意したのだ。
 民主党政権はその半年後に崩壊したため、実際にこの3党合意を実行したのは今の自公政権である。
 2019年10月の税率10%への引き上げに際しては、低所得者ほど負担が大きくなる逆進性を緩和させるため、公明党が自民党を押しきるかたちで軽減税率制度を導入させた。
 また、自公政権は「不妊治療の保険適用」「男性の育児休暇取得」「待機児童の解消」「幼児教育無償化」「高等教育無償化」など全世代型社会保障を次々に実現。
 税率引き上げ分の使途を変更して、幼児教育・保育や低所得世帯の学生を対象にした大学・専門学校の無償化、私立高校の実質無償化にこぎつけている。
 それを、今ごろになって当時の民主党政権を率いていた面々が「消費税減税」を主張するのは、単なる選挙目当てでしかない。無責任きわまりないポピュリズムである。

「悪夢の再来」+共産党

 自分たちが政権をとっていた時代に決めたことを、10年経って、ことごとく反対する。
 しかも、10年前以上に危うく無責任なのは、日本国憲法とはまったく異なる「共産主義革命」をめざす日本共産党と一体化を進めていることだ。
 野党4党が共通政策に署名した同じ9月8日、日本共産党は第3回中央委員会総会を開催。志位委員長は4党の合意を報告したうえで、次のように語った。

新しい政権への日本共産党の協力の形態は、「閣内協力」も「閣外協力」もありうる(『しんぶん赤旗』9月9日

 日本共産党は党綱領で、共産主義革命への第一段階の戦略として、他勢力との「統一戦線」すなわち連合政権を樹立することをうたっている(「日本共産党綱領」)
 立憲民主党の枝野代表は、日本共産党との連立を否定しているが、「閣外協力」までは否定していない。対等の協力を強く主張している日本共産党が、何の見返りもなく一方的に候補者を取り下げ、票だけを差し出すことなどあり得ない。
 その日本共産党と選挙協力して仮に政権交代が起きれば、その新政権は日本共産党の強い影響を免れなくなる。米国や同盟国からの信頼はまったく得られず、中国からも相手にされないだろう。
 有権者の不満や歓心を吸引する巧みな言葉の先には、民主党政権の悪夢の再来だけでなく、今度は共産主義革命の勢力がついてくるのだ。内政も外交も立ち往生することは、火を見るより明らかだろう。

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