特集⑨ 日蓮正宗僧侶たちの堕落――「第一次宗門事件」の伏線

ライター
青山樹人

出家たちの屈折した感情

 世界の指導者との対話を開始した池田会長。
 ところが、現実社会への展望もなければ責任感もなかった日蓮正宗の出家たちには、会長の世界に開かれた行動の真価など理解できなかった。
 創価学会は1953年に宗教法人の認証を受けた独自の法人格を持つ教団である。
 そのうえで日蓮仏法の流布をめざし、日蓮正宗の在家信徒の団体という立場で、総本山大石寺をはじめ宗門の外護に尽くしてきた。大石寺に建築史に特筆される施設をいくつも建立寄進し、国内外に300を超す末寺も寄進してきた。仏教史上、未曽有の在家による外護と供養である。
 宗門のなかでも戦後の疲弊した本山を知っている者は、学会の存在を頼もしくもありがたくも思った。しかしながら、寺檀制度の旧弊は宗内に色濃く染みついていた。在家への差別意識を抱き、当時から学会を蔑視していた出家は皆無でなかった。檀家制度そのものである法華講にも、急成長する創価学会への屈折した感情があった。
 鉄拳制裁の暴力が平然と横行するような閉じた寺院社会のなかで、学会出身の僧侶は、法華講出身の僧侶の侮蔑の対象となっていたのである。
 学会出身の若手の僧侶のなかには、愚かにも自分にかぶせられた学会色をぬぐい去りたい一心で、ことさらに学会を冷ややかに批判し、信徒を蔑視する者が出てきた。
 学会出身で少年得度(小学生で出家)した者が「池田先生」と口にすると、ほかの少年得度者が「あいつは信者なんだから〝池田〟と呼び捨てにしろ」と強要する。会長の著作を持っていると「信者の書いた本など読むな」と怒鳴られる。
 もともと広宣流布など絵空事としか考えていなかった出家たちである。それが今や、学会の発展によって、何ら苦労もなく、新しい寺院と十分な信徒を手にすることができた。
 外護の思いで寺院に奉仕する学会員は、彼らにとってタダでこき使える使用人も同然であった。宗内全体の繁栄のなかで、供養を遊興に使い、派手な外車を買ったり、料亭やクラブで散財したり、ゴルフ場の会員権を持つ僧侶まで現れてきた。
 反面、偉大な指導者に率いられて信行学の実践に励み、広宣流布に邁進して隆々と大発展してきた在家の学会に対し、出家でありながら折伏すらろくにしたこともなかった出家たちのなかには、学会に脅威と劣等感を覚えるような感情が芽生えていた。

違法行為を放置していた大石寺

 池田会長が「広布第二章」への飛翔を開始した1973年。富士宮市議会議員らが日達法主を刑事告発する事件が起きた。大石寺がずさんな経営と法律への無知から、違法な土地取得や道路不正占拠を重ねていたのである。
 学会の興隆により、すでに全世界から信徒が参詣する総本山になりながら、大石寺には会計士も弁護士もいなかった。355憶円に上る正本堂御供養についても、会計は放漫でデタラメなままであった。
 学会側の真摯な説明と説得で、刑事告発は取り下げられた。だが、このような醜態が二度と繰り返されてはならない。宗門外護の立場から、見かねた学会は土地問題と会計の監査を申し出た。
 このころ、明治生まれの日達は古稀を越えて、失念や感情の激高が目立つようになっていた。池田会長と約束したことも、平気で反故にしてしまう。
 73年10月の正本堂建立1周年記念行事の折、池田会長は「信徒に対して慈悲を持ってほしい」「学会を手段として利用するのでなく、目的としてほしい」と、率直に日達に進言した。広宣流布の指導者として当然の言葉だった。
 宗門への一連の膨大な寄進を終えた学会は、手つかずのままだった会館の整備に、ようやくとりかかった。それまで、民家に大勢が集まって会合を開くことで、実際に床が抜けるといったこともあったし、近隣からの苦情も少なくなかった。
 そこで、1974年から整備計画を立て、学会独自の会館建設を順次はじめていったのである。
 あわせて、本格的な世界広宣流布へ向けて準備していた「国際センター」を、財団法人として千駄ヶ谷にオープンさせた。
 ところが日達ら日蓮正宗側は、創価学会が日蓮正宗を支配する動きを見せたと、とんでもない邪推をした。世間知らずのうえに上下意識にとらわれている出家たちは、自分たちの〝上〟に在家信徒の関わる法人が来ると受け止め、疑心暗鬼に駆られたのだ。
 本山が放置していた会計処理に学会が協力したことも、宗門の財政を調べていると曲解した。日蓮大聖人の遺命である世界広宣流布に対し、学会と宗門とではその責任感に決定的な温度差があったのである。しかも、出家たちの社会的無知は度を越しており、感覚は前近代のままであった。

〝法滅〟のなかで誕生したSGI

 この件で、当時、北条浩副会長が再三再四、日達ら宗門執行部に説明をしたが、日達は小さなメンツにこだわって、言を左右した。会長から率直に進言されたことも根に持ち、「小僧扱いされた」と不満を述べた。
 宗門内部にくすぶり続けた学会への感情的な反発は、日達を師僧とする若い僧侶らを中心に、徐々に広がっていった。
 この時期から、日達は宗内の会合で、暗に学会を非難するような軽率な発言を何度かしている。若い僧侶のなかには、自分が教師になっても住職としての赴任先がないのは、学会が会館の建設を優先して寺院を造らないからだと見当違いの批判をする者まで出てきた。かくして1974年あたりから、日蓮正宗内部には創価学会に疑心暗鬼の目を向け、あるいは学会を公然と敵視するような空気が生まれてくるのである。
 1975年1月。真冬の米国東海岸で国連事務総長や国務長官との会見を終えた池田会長は、ハードな日程で諸行事をこなしながら、ハワイを経由してそのままグアムに到着した。
 そして1月26日、世界51カ国の代表がグアムに集い、SGI(創価学会インタナショナル)が結成されたのである。席上、SGI会長に就任した池田会長は、参加した各国の草創以来のメンバーにこう語った。

自分自身が花を咲かせようという気持ちではなく、全世界に平和という妙法の種をまいて、尊い一生を終わってください。私も、そうします。

 今日、世界192カ国・地域に人間主義を広げるSGIは、まさに日蓮正宗が内部から〝法滅〟の様相を見せるなか、そして池田会長が世界の首脳との対話旅に駆けるなかで誕生したのである。

※この記事は『最新版 世界広布新時代への飛翔』(青山樹人著/鳳書院)をベースに加筆修正したものです。

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あおやま・しげと●著書に『宗教はだれのものか』(2002年/鳳書院)、『新装改訂版 宗教はだれのものか』(2006年/鳳書院)、『最新版 宗教はだれのものか 世界広布新時代への飛翔』(2015年/鳳書院)など。WEB第三文明にコラム執筆多数。