集中力の衰退を招いた原因とは
著者ヨハン・ハリは、日常的な問題を綿密な調査と取材によって徹底的に掘り下げることに定評があるジャーナリストであり、世界的なベストセラー作家である。
本書『奪われた集中力』では「なぜ人々は集中できなくなったのか」という問題をとりあげている。3カ月間、インターネットを遮断した環境に身を置き、さらに世界を駆け回り、250人を超える有識者にインタビューを重ね、その核心に迫る。
ぼくらの多くにとって読書は、経験することができるもっとも深い集中が形になったものだ――人生におけるたくさんの時間を、冷静に、心を静めて、一つの話題に費やし、心に浸透させていく行為だからだ。これを手段として、過去四〇〇年にわたる思想の大きな進歩がほぼ理解され、説明されて来た。その経験が今、一気に減少しているのである。(本書90ページ)
集中力の萎縮を象徴するのが〝読書の衰退〟である。紹介されている調査によれば、現在、読書を娯楽とする米国人の割合は過去最低であり、1年間に1冊の本を読まなかった人の割合は57パーセントに達するという。 続きを読む