「空手の日」制定20周年記念イベント

ジャーナリスト
柳原滋雄

平和祈念公園内で行われた恒例の「奉納演武」

 沖縄県議会で「空手の日」を制定する決議が採択されたのは2005年3月29日。沖縄空手4団体の一つ、沖縄県空手道連合会の陳情で始まったこの動きは、2000年ごろ、具体的な取り組みが始まり、1936年10月25日、「琉球新報」主催の空手家座談会で表記や呼称がバラバラであった名称を「空手」に統一することを合議した日にちなみ、「10月25日」を空手の日として制定したものだ。「空手の日」と定める決議に関する提案理由を説明したのは前公明党沖縄県代表の金城勉県議(当時)だった。以来20年。

演武者8人と沖縄県議会関係者。前列右から4人目が上原章副議長、最後列右から3人目が松下美智子県議(いずれも公明党)

続きを読む

前田幸男著『「人新世」の惑星政治学』―『人生地理学』発刊123年の位相と相関からの予備的勤考―

創価大学大学院国際平和学研究科客員教授
田中福一郎

 明治から令和へと思想史的時空間軸において、優に百年を超えたこの現代。地球規模に拡がる気候危機時代における気候正義教育と創価世界市民教育のための洞察の一書と思料される著作に出会うことが出来た。前田幸男著『「人新世」の惑星政治学-ヒトだけを見れば済む時代の終焉-』(青土社、2023年)は、まさに今日の時宜を得たものと考えられる。
 この混迷の世界に臨み、翻って地人相関哲理に通暁された牧口常三郎先生著『人生地理学』から謹んでの位相と相関の視座から、同著につき寄稿書評させていただけることに第三文明社編集部のご高配に深謝いたしたい。
続きを読む

『摩訶止観』入門

創価大学大学院教授・公益財団法人東洋哲学研究所副所長
菅野博史

第101回 正修止観章 61

[3]「2. 広く解す」 59

(9)十乗観法を明かす㊽

 ⑩知次位(2)

 次に、円教の次位について説明する。『摩訶止観』の冒頭には、

 円教の次位の若(ごと)きは、菩薩境の中に於いて、応に広く分別すべし。但だ彼は証、今は修なるが故に、須(すべか)らく略して辨ずべし。四種三昧の修習の方便の若きは、通じて上に説けるが如し。唯だ法華懺(ほっけせん)のみ別して六時、五悔(ごげ)に約して、重ねて方便を作す。今、五悔に就いて、其の位の相を明かす。(第三文明選書『摩訶止観』(Ⅲ)、近刊、頁未定。以下同じ。大正46、98上10~14)

と述べている。 続きを読む

芥川賞を読む 第64回 『影裏』沼田真佑

文筆家
水上修一

崩壊の予感漂う、寄る辺のない孤独

沼田真佑(ぬまた・しんすけ)著/第157回芥川賞受賞作(2017年上半期)

唯一心を許した男の失踪

 受賞作「影裏」(えいり)の舞台は、岩手県。主人公の「わたし」が唯一心を許していたのは、日浅(ひあさ)という男。事あるごとに酒を酌み交わし、豊かな水流が美しい川辺で釣りに興じる2人。だが、些細な出来事をきっかけに疎遠になり、やがて日浅は失踪。その行方を追ううちに、「わたし」は日浅の〝もうひとつの顔〟を目の当たりにし、その光と影に向き合う。岩手の豊かな水と緑の中で描かれる世界は、薄暗いひんやりとした手触りが美しく、不気味でもある。
 柱となるのは、「わたし」と日浅の関わりなのだが、途中で「わたし」が過去に付き合ったゲイの恋人や、東日本大震災の話が出てくる。ただ、いずれも作品の中にひっそりと紛れ込ませるような描き方なので、それが決して作品の主題ではないことは分かる。それでも、それぞれの素材が、「影裏」というタイトルからイメージされる、人間の影の部分や裏の顔というものを浮き上がらせるのに効果的な役割を果たしている。それは、薄暗くひんやりとした情景描写と同じように、孤独で、不安げだ。
 普通、芥川賞の選評を丹念に読むと、何が評価され何が不評だったか、ある程度の輪郭が見えてくるのだが、「影裏」に対する選評にははっきりした対立軸が見えない。各選考委員がそれぞれの視点で高評価し、あるいは低評価をしている。それだけ複雑で多面的な作品と言えるのかもしれない。 続きを読む

連載「広布の未来図」を考える――第12回 「正義」と「寛容の対話」

ライター
青山樹人

「離脱」で見えてきた公明党の影響力

――前回(「第11回 アニメ・マンガ文化」2025年9月24日)から1カ月以上も空いてしまいましたが、その間、自民党の総裁選、公明党の連立離脱、自民党と日本維新の会の閣外協力による〝連立〟政権樹立、公明党の下野、高市早苗・自民党総裁による憲政史上初の女性総理の誕生など、永田町では大きなトピックが続きました。

青山樹人 しかも外交日程が重なって、早速10月27日にはアジア歴訪中のトランプ米国大統領が来日するなど、さまざまな局面で政治がショーアップされた1カ月だったように感じています。

 ともあれ、創価学会が支持・支援する公明党は、1999年10月から始まった自民党との連立に、ひとつの区切りをつける判断をしました。
 苦渋の決断ではあったと思いますが、自民党の「政治とカネ」を曖昧にしたままでは、連立は続けられないということだったと理解しています。
 四半世紀の協力関係が少なくとも政党間では終わるので、公明党の選挙戦略も抜本的に練り直しを余儀なくされますね。 続きを読む