異質なものの滑稽さと、異物排除の恐ろしさ
村田紗耶香(むらた・さやか)著/第155回芥川賞受賞作(2016年上半期)
周囲に擬態するように生きる主人公
第155回「芥川賞」の受賞後、日本のみならず、世界40カ国語に翻訳された「コンビニ人間」。アメリカの雑誌『The New Yorker』が毎年主催している「THE BEST BOOKS 2018」にも選ばれるなど、世界各国で読まれた話題作だ。
――主人公の「私」は、同じコンビニで10年以上アルバイトとして働き続けている30代の女性。正社員になったことは一度もなく、男性と付き合った経験もない。そんな彼女は、幼少期に世間の〝普通〟と自分が違うことに気づき始めた。例えば、普通の人が悲しいと感じる出来事に対しても無機質な感情しか持てず、言葉の裏にある感情がくみ取れずにちぐはぐなコミュニケーションになる――等々。
周りとは異質な自分を自覚しながらも、排除されないように、懸命に〝普通〟を演じながら生きてきた。
そんな「私」が自分の地のままでいられる場がコンビニという職場だった。マニュアル化された手順に沿って仕事をして、マニュアル通りに客に対応すれば、優秀なアルバイターとして同僚からも信頼され、立派な社会人のようにそこに存在することができる。まさにコンビニこそが普通の人として存在できる場所だったのだ。 続きを読む