男の義務だった村棒の鍛錬
村棒の中で最も有名な地域の1つが現在の浦添市に存在する「前田棒」だ。古くは浦添城を守るために農業と武芸を磨いた地域として知られる前田部落(浦添村)が舞台となった。
前田では棒術をたしなまない者は男として認められず、子どものころから棒を持たされた。15歳から45歳まで棒術の稽古が義務とされ、村祭りともなれば、何日も練習に駆り出され、数回行われる本番(出し物)に備えた。
そうした村の伝統も、1945年の対米戦争(沖縄戦)で土地や家屋そのものが原形をとどめないほどに破壊され、特に県内最大の激戦地となった前田では、そのすべてが消滅した。戦後、「村棒」の伝統を復活させるまでには多くの苦労があったという。
1939(昭和14)年生まれで沖縄戦当時は子どもだった前田棒の使い手・富本祐宏(とみもと・ゆうこう、84歳)さんに話を聞いた。 続きを読む