コラム」カテゴリーアーカイブ

『摩訶止観』入門

創価大学大学院教授・公益財団法人東洋哲学研究所副所長
菅野博史

第88回 正修止観章㊽

[3]「2. 広く解す」㊻

(9)十乗観法を明かす㉟

 ⑦通塞を識る(1)

 今回は、十乗観法の第五、「通塞を識る」(道が通じているか塞がっているかを識別すること)の段について説明する。十乗観法については、前の観法が成功しない場合に、次の観法に移るという流れとなっている。ここでは、第四の破法遍が成功しない場合に、識通塞が必要となるということである。 続きを読む

公明党が都議選で得たもの――「北多摩3区」に見る希望

ライター
松田 明

都議選が示した明暗

 今年は12年に1度、東京都議会議員選挙と参議院議員選挙が重なる「巳年選挙」の年。
 さる6月22日に投開票を迎えた都議選は、以下のような結果となった。数字は改選前議席から当選議席への推移である。

都ファ 31 ⇒31
自民  33 ⇒21
公明  23 ⇒19
共産  19 ⇒14
立民  12 ⇒17
国民   0 ⇒9
維新   1 ⇒0
参政   0 ⇒3
れいわ  0 ⇒0
保守   0 ⇒0
社民   0 ⇒0
再生   0 ⇒0
諸派   0 ⇒0
無所属 11 ⇒12

 これまで都議会に議席のなかった国民民主党と参政党が、支持率の堅調に支えられて新たに議席を獲得。立民も5議席増。
 一方、自民党は過去最低議席となる大惨敗。共産党も野党第1党から転落する敗北。公明党は候補者を22人に絞って挑んだものの36年ぶりに完勝を逃す結果。維新、れいわ、再生は候補者全員が落選。保守、社民もそれぞれ1人を擁立したが落選した。 続きを読む

芥川賞を読む 第54回 『爪と目』藤野可織

文筆家
水上修一

3歳だった女児が父の愛人について語る不気味

藤野可織(ふじの・かおり)著/第149回芥川賞受賞作(2013年上半期)

珍しい二人称の小説

 藤野可織の「爪と目」は、冒頭の出だしが印象的で、本作の大きな特徴を示唆している。

 はじめてあなたと関係を持った日、帰り際になって父は「きみとは結婚できない」と言った。あなたは驚いて「はあ」と返した。

 ここで読者は少し混乱する。「語り手」が誰で、「あなた」は誰を指すのか、悩むのだ。筆者も最初は「語り手」が父と関係を持ったのかと思ったのだが、そうすると父が「きみとは結婚できない」と言った「きみ」は「語り手」になるはずなのだが、その後の文章を読むとどうも違う。それがはっきりするのが、少し後に出てくる「私は三歳の女の子だった」という一文である。つまり「語り手」は、当時3歳だった女の子なのである。その子が成長後、自分の人生を俯瞰するように物語ってゆくのである。そして、「あなた」は、父と不倫関係にあった女性を指すのだ。つまり、この作品は、語り手である当時3歳だった「わたし」が、父の愛人を「あなた」と呼ぶ2人称の小説なのである。 続きを読む

都政に不可欠な都議会公明党――小池知事の「改革」を支える足場

ライター
松田 明

連日、公明候補の応援に立つ知事

 東京都議会議員選挙(6月22日投開票)の告示日を迎えた6月13日と翌14日、小池百合子・東京都知事が怒涛の勢いで「応援」に駆け巡ったのは、都議会公明党の候補者の街頭演説だった。
 13日は、大松あきら(北区)、谷きみよ(豊島区)、久保りか(中野区)。14日は午前10時半、いいだ健一(北多摩3区)から始まって、かつまたさとし(大田区)、玉川ひでとし(大田区)、伊藤こういち(品川区)、細田いさむ(江東区)、加藤まさゆき(墨田区)、けいの信一(荒川区)、うすい浩一(足立区)、最後は午後7時半に大竹さよこ(足立区)に駆けつけた。

 自身が特別顧問を務める都民ファーストの会の候補者回りに終日を費やしたのは、15日の日曜日になってからである。
 さらに16日には、ふたたび都議会公明党の 村松としたか(町田市)、高田きよひさ(北多摩1区)、まつば多美子(杉並区)、古城まさお(新宿区)の街頭演説にも応援弁士として立った。

 なぜ、小池都知事が〝他党〟である都議会公明党の応援に力を入れているのか。 続きを読む

『摩訶止観』入門

創価大学大学院教授・公益財団法人東洋哲学研究所副所長
菅野博史

第87回 正修止観章㊼

[3]「2. 広く解す」㊺

(9)十乗観法を明かす㉞

 ⑥破法遍(15)

 (6)横の破法遍

 破法遍全体は、大きく「竪(縦)の破法遍」、「横の破法遍」、「横竪(おうじゅ)不二の破法遍」の三段に分かれるが、以下、第二段の「横の破法遍」について説明する。
 これまで説明してきた竪(縦)の破法遍は、無生門という一門に焦点をあわせて、縦に空観・仮観・中観を修行して、空仮中の三諦を徹底的に照らして、法を遍く破った。横とは、無生門以外のその他多くの門を意味する。たとえば、『中論』の冒頭に出る八不(不生・不滅・不常・不断・不一・不異・不来・不去)(※1)は八門を意味するように、さまざまな経論には無量の門があるとされる。 続きを読む