いちばん最初に読んだ漫画は、むかし暮らしていた長屋の、ご近所さんの二階にあった漫画雑誌だったとおもう。まだ小学校にあがるまえだが、なぜか、短篇漫画のストーリーをいくつか憶えている。
僕は、けして物覚えのいいほうではないので、よほど深い印象があったのだろう。けれど、内容は教訓的な説話風のもので、強い衝撃を受けたわけではないから、どうして覚えているのかわからない。
やわらかい明かりの電灯の下、大人たちが難しい話をしていて、子供の僕は階段の上り口に近い薄暗い隅のほうで、その家の主が貸してくれた漫画雑誌をひっそり読んでいた。それがその家へ行く愉しみだった。
自分で漫画を買うようになったのは、小学生になってからだ。当時、『少年マガジン』『少年ジャンプ』『少年サンデー』『少年キング』『少年チャンピオン』と、週刊の漫画雑誌があって、月刊では、『ぼくら』『冒険王』があった。僕は、すべてを買って読んでいた。
高学年になって、『ガロ』を知った。この雑誌は僕の御用達の本屋には、置いてあったり、なかったりして、なかなか手に入れるのが難しかった。内容は、それまで僕が読んでいた少年誌と違って、かなり大人な世界が描かれていた。だから、恐る恐る手を伸ばし、ページを開いた。 続きを読む
