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沖縄伝統空手のいま~世界に飛翔したカラテの源流
第5回 空手普及の功労者(上)糸洲安恒

ジャーナリスト
柳原滋雄

学校教育用に公開された「秘伝の武術」

沖縄における空手の古い歴史は、文献上、検証することができないハンディを抱えている。記録が消失しており、どのような歴史の変遷をたどったかを追うことができないのだ。そのため断片的な記録を三角測量で推測するしか方法がない。多くの史料を薩摩による侵攻時に失ったという説もある。
そうした沖縄で、廃藩置県以前までは、カラテは師匠から弟子に一対一で伝授される「秘伝の武術」にほかならなかった。 続きを読む

沖縄伝統空手のいま~世界に飛翔したカラテの源流
第4回 「沖縄詣で」重ねる空手家たち(下)

ジャーナリスト
柳原滋雄

海外からひっきりなしに訪れる道場

那覇市から車を走らせて約40分。西原町の一角に黄色の原色使いの特徴的な建物が目に入る。正式名称は「沖縄県空手博物館」。1987年にオープンした空手・古武道に関する物品や資料を集めた個人資料館だ。館長を務めるのは、外間哲弘・沖縄剛柔流拳志會会長(ほかま・てつひろ 1944-)である。
ビルの1階が空手道場のスペースになっていて、階段を上った中2階部分が博物館の展示スペースだ。博物館は県立高校教諭だった外間氏が私財を投じて建設した。 続きを読む

沖縄伝統空手のいま~世界に飛翔したカラテの源流
第3回 「沖縄詣で」重ねる空手家たち(上)

ジャーナリスト
柳原滋雄

50年で変化した空手の境地

前回取り上げた書籍『公開! 沖縄空手の真実』(2009年)の中でユニークな技法を紹介した空手家に、沖縄空手道松林流喜舎場塾の新里勝彦(しんざと・かつひこ)塾長(1939-)がいる。横に移動しながら行う首里手の代表的な鍛錬型である「ナイハンチ」を独特な腰使いで演武し、独自の解説を加えていた。
新里塾長は英文科の学生時代、19歳のとき大学の空手クラブで空手を始めた。将来アメリカに留学したときに沖縄的なものを身につけていれば何かの役に立つかもしれないくらいの考えだったという。大学卒業後、地元の中学校で3年間英語を教え、20代半ばから2年間の米国留学中は空手をやっていたことが「とても役に立った」と振り返る。帰国後、那覇市の松林流開祖・長嶺将真道場に正式入門した。 続きを読む

沖縄伝統空手のいま~世界に飛翔したカラテの源流
第2回 沖縄空手界をたばねる団体

ジャーナリスト
柳原滋雄

「本場」の空手を映像付きで紹介した書籍

関係者の間で秘かに注目されてきた本がある。タイトルは、『公開! 沖縄空手の真実』――。サブタイトルに「君は本物の空手を見たことがあるか?」の文字が見える。
発刊されたのは2009年。沖縄国際大学名誉教授の高宮城繁(たかみやぎ・しげる1935-2014)の呼びかけで沖縄空手の長老と目される著名な空手家が協力して制作された。110分の特別映像の入ったDVDが付録につけられている。沖縄空手の3大流派の主要な型を演武した映像が収められており、ノーマルスピード、スロースピード、さらには角度を変えて見せるという気の使いようだ。 続きを読む

沖縄伝統空手のいま~世界に飛翔したカラテの源流
第1回 沖縄空手の本質

ジャーナリスト
柳原滋雄

空手は沖縄発祥の武術

2020年の東京オリンピックで、日本発祥の武道「空手」が初めて正式種目として認められた。そのため新聞のスポーツ欄でも心なしか空手に関するニュースが以前よりも増えたように感じられる。
再来年の7月24日から8月9日まで17日間の東京オリンピックの期間中、柔道競技終了後の8月、同じ日本武道館で空手競技が開催される。
行われるのは、型2種目(男・女)と組手6種目(軽量級、中量級、重量級、各男女)の計8種目で、各種目とも10人の出場選手の中からメダルを競う。その結果、空手だけで8人の金メダリストが初めて誕生することになる。  続きを読む