連載エッセー「本の楽園」 第58回 もうひとつの経済、もうひとつの政治

作家
村上政彦

いま僕らの社会を成り立たせているのは、経済としては資本主義であり、政治としては間接(代議制)民主主義だ。このふたつは近代の発明といっていいのだが、だんだん不具合がでてきている。
では、それに代わるものはあるのか? なかなか難しい問題で、決め手はない。ただ、いろいろと新しい試みが現れている。『雇用なしで生きる』の著者は、2012年、「今、革命が起きてるよ!」と聞いて現地のスペインへ向かった。本書は、経済、政治の新しい試みのリポートである。 続きを読む

沖縄県知事選のゆくえ⑥——なぜか180度変わった防衛政策

ライター
松田 明

こっそり消された名前

 とても奇妙なことが起きた。
 8月31日にアップした、この「沖縄県知事選のゆくえ」シリーズ①「県民の思いはどう動くか」のなかで、筆者は玉城デニー氏が沖縄県防衛協会の顧問に名を連ねていることを指摘した。
 同協会は、「沖縄県民の自衛隊に対する理解を深め、防衛思想の普及啓蒙、自衛隊との親睦を図る」ことなどを目的とする組織だ。 続きを読む

沖縄県知事選のゆくえ⑤——「対話」の能力があるのは誰なのか

ライター
松田 明

不公平な地位協定

 沖縄県では9月に入ってからも、読谷村(よみたんそん)で酒に酔った米兵が住居に不法侵入し、高校2年の少女が生後5ヵ月の妹を抱いて近所の家に逃げ込むという事件が起きた。
 読谷村議会は19日の臨時会で、全会一致で意見書と抗議決議を可決。決議では被害者への完全補償、日米地位協定の抜本的見直しなどを求めた。
 沖縄県が今年3月にまとめた『他国地位協定調査 中間報告書』は、1972年の本土復帰以降、昨年末までに米軍人等による刑法犯が5967件、航空機関連の事故が738件発生したと記している。 続きを読む

終わりのない旅の記録——書評『極北へ』(石川直樹著)

美術史研究者
高橋伸城

「今見ている世界」の外へ

 大学生になった1997年の夏、著者はカヌーを背負ってアメリカ大陸へと向かった。
 多くの冒険家たちを魅了してやまないユーコン川を下るためであった。
 カナダ西部の氷河に始まるこの細い流れは、アラスカの大地をヘビのようにうねりながらベーリング海へとそそぐ。
 極北へと何度も引き寄せられるきっかけともなったこの挑戦。出発から到着まで、すべてを一人でやり遂げた。 続きを読む

沖縄県知事選のゆくえ④——「基地問題」を利用してきた人々

ライター
松田 明

辺野古混迷の〝元凶〟

 2009年8月30日の第45回衆議院議員選挙。
 その1ヵ月前の7月19日、民主党の鳩山代表(当時)は、海兵隊の普天間飛行場の移設先について「最低でも県外」と大見得を切った。
 この発言を前提に、民主党は選挙公約にも「米軍再編の見直し」を掲げ、同党は史上最多の308議席を獲得して政権の座に就く。
 沖縄県でも4つの選挙区すべて、民主党、社民党、国民新党の野党系が議席を独占した。
 ところが翌10年5月になると、鳩山政権はあっさり方針を転換し「県内移設」を示す。 続きを読む