公明党の手腕が光った1年――誰も置き去りにしない社会へ

ライター
松田 明

人権侵害の是正を求める

 2019年12月23日、ミャンマーを訪問中の山口那津男・公明党代表は、アウン・サン・スー・チー国家顧問の私邸に招かれて会談した。両者は前年10月にも東京で会談しており、3回目の会談となる。

 山口氏は、隣国のバングラデシュに避難している、少数派のイスラム教徒・ロヒンギャの人たちをめぐって、「人権侵害が行われているという疑惑について適切な措置をとるとともに、帰還に向けた環境整備に努めることが重要だ」と指摘しました。
 これに対し、スー・チー氏は、避難民への日本の支援に謝意を示したということです。(「NHK NEWS WEB」12月24日

 少数民族ロヒンギャへの弾圧をめぐり、EU(欧州連合)はミャンマーへの制裁措置を2020年4月まで延長している。一方、中国は「一帯一路」の要衝として、同国への経済支援を積極的におこなっている。
 こうしたなかで、日本政府は経済支援というコミットメントを維持し、ミャンマーの孤立化を防ぎながら民主化を強く促す戦略をとってきた。
 2019年もラカイン州、カチン州、シャン州における国際機関との協力継続・拡大を継続し、UNICEF(国連児童基金)など国際機関8機関に計37億円の支援をおこなっている。
 山口代表の会見に先立って、国際人道支援機関AMDA出身の谷合正明・公明党国際委員長が現地のUNICEFスタッフらと懇談。ラカイン州のムスリム(ロヒンギャ族)の状況改善などを調査した。
 代表ら訪問団は、ミャンマー軍司令官、連邦議会議長、閣僚など政府要人との会見などを終え、26日に帰国した。

全世代への社会保障を

 公明党は結党以来、「中道主義」を掲げてきた。
 この公明党の「中道」とは、中間主義や左右の折衷というような意味ではない。〈生命・生活・生存〉を最大に尊重する、きわめてリアリティを持った人間主義である。
 2019年も、こうした公明党ならではの政策実現や提言が見られた。
 まず、10月1日からの消費税率引き上げに伴う「軽減税率」の導入。メディアのなかには、導入がもたらす混乱などをことさらに報道したものも目立った。
 だが、12月7日~8日に民間の調査会社がおこなった全国1万人の世論調査では、「評価する」が57.1%で、「評価しない」の37.0%を大きく上回った。(公明ニュース「軽減税率 全国1万人電話調査のポイント」
 全年代で「評価する」が過半数に達しており、主要野党の支持層でも5割前後が「評価」。共産党や社民党の支持層でさえ3割が評価すると回答している。
 また、「軽減税率で混乱を経験したか」との問いには、「経験した」は3割を切り、7割以上が「経験しなかった」と回答した。
 今回の消費税率引き上げによる税収の増額分は、「全世代型社会保障」を支えるものとなる。
 同じ10月からは、3歳から5歳までの子どもを対象とした「幼児教育・保育の無償化」もスタートした。これも公明党がすでに2006年の「少子社会トータルプラン」で提唱してきたものだ。
 2020年度末までには、待機児童の解消のため30万人分の保育の受け皿が新たにつくられる。これらに支出されるのは、およそ1兆7千億円だ。
 さらに2020年4月からは、私立高校授業料の実質無償化もはじまり、所得の低い世帯の学生を対象とした大学などの高等教育無償化が、返済不要の給付型奨学金と授業料減免を拡充する形でスタートする。
 いわゆる共働き世帯の増加など人々の働き方が変わり、少子高齢化が進むなかで、幼保の無償化と待機児童の解消は急務の課題である。
 また、さまざまな事情で所得が低くなっている世帯の子女が、進学をあきらめることなく高等教育を受けられることは、〝負のスパイラル〟を打開していくうえで必須だ。

自民党との合意を実現

 もうひとつ公明党の執念が実ったのが、「子どもの貧困」を防ぐために、未婚のひとり親にも「寡婦(寡夫)控除」を適用させることだった。
 これまで配偶者と死別・離婚した人には税負担を軽減する措置として適用されていたが、さまざまな事情で未婚のまま親となった人は除外されていたのだ。
 現実には、とくに未婚の母親の年収は母子世帯全体の平均を23万円も下回っているにもかかわらず、公営住宅の入居や、課税額に応じて決まる保育料などでも不利な状況を強いられてきた。

 未婚のひとり親支援は、もともと公明党が重視していた政策テーマだ。配偶者と死別・離婚した人だけが対象の寡婦控除を未婚世帯にも適用するよう何年も求めてきた。だが、自民党内には「家族とは法的に結婚した父、母、子から成る」という伝統的な価値観が根強くあり、「未婚の子育てを助長する」と公明の主張を退けてきた。(「毎日新聞WEB」12月18日

 公明党は2013年から繰り返し訴え続けていたが、自民党の反対で2018年の税調でも見送られたのだった。
 だが、19年12月12日に決定した「2020年度与党税制改革大綱」では、ついに自公で合意。

 公明党の要求通り、①未婚を含め年間所得500万円以下のひとり親をすべて対象にする②既存の控除にある所得制限は男女差を撤廃③事実婚を無理に排除しない――といった内容がほぼ網羅された。公明党税調の西田実仁会長は、集まった報道陣を前に「子供の視点に立っての抜本的な改革ができた」と満足げで、別の公明税調幹部も「100点満点に近い」と喜んだ。(同上)

LGBT施策を推進

 東京オリンピック・パラリンピックの開催を目前にして、国際社会が注視しているのが日本におけるLGBT差別の問題だ。
 IOC(国際オリンピック委員会)は2014年末に五輪憲章を改訂し、「性的指向(好きになる対象の性)」による差別を禁じている。
 とくに雇用面での「性的指向による差別」を禁じる法制度は世界の3分の1を超す73ヵ国で実現しているが、開催国の日本には今なお「性的指向」「性自認」に関する差別を禁じる法律がない。
 これも、社会が無関心であることに加え、自民党など保守勢力のなかに「差別を禁じれば最終的に同性婚をも認めざるを得なくなるのではないか」という根強い慎重論があるためだ。
 さすがに、このままでは五輪憲章に違反する状況になるため、2018年10月、開催都市となる東京都議会は「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例」を可決した。
 都から国を動かすべく、この条例制定に大きく尽力したのが都議会公明党だった。
 さらに2019年3月には、参議院で公明党の平木大作議員が、自民党総裁でもある安倍首相から「社会のいかなる場面においても、性的マイノリティの方々に対する不当な差別や偏見はあってはなりません」との明確な答弁を引き出している。
 6月、公明党の性的指向と性自認に関するプロジェクトチーム(座長=谷合正明参院議員)が、「性的指向と性自認に関する政策推進」に関する要望書を菅官房長官に手渡した。
 当事者が現在進行形で直面しているさまざまな困難や不利益の解消のため、法整備を待たずに施策の推進をするよう政府に申し入れたものだ。
 ここでも、公明党はまさに中道政党としての本領を発揮し、超党派での合意形成に努めつつ、しかも今すぐにできる施策から前に進めるよう政府に強く働きかけたのだった。菅長官は取り組みを前に進める考えを示した。
〝誰も置き去りにしない〟〝誰ひとり取り残さない〟社会の実現へ――。公明党の行動と実績がひときわ光る2019年であったと思う。

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