特集㊲ 世界からの「知の宝冠」――カストロを変えた会見

ライター
青山樹人

ソクラテスの対話を蘇らせた人

 池田大作SGI会長は1980年代までに、モスクワ大学など世界の6つの大学から名誉学術称号を受けていたが、90年代には新たに65大学が名を連ねた。
 2001年には早くも100番目の受章となり、2021年5月時点で397に達している(「東洋哲学研究所」名誉学術称号一覧)。文字どおり人類史上に並びない知の宝冠である。
 インド国立・ガンジー記念館館長も務めたガンジー研究評議会議長のラダクリシュナン博士は、著書『ガンジー・キング・イケダ』(日本語版は第三文明社)の中で、

 二十世紀最後の十年間に、世界中の人々から大きな注目を集めた四人の人物がいました。ネルソン・マンデラ博士、池田大作博士、ビル・クリントン大統領、そしてビル・ゲイツです。

と述べている。
 2度目のハーバード講演がおこなわれた1993年、SGI会長によってそのボストンの地に池田国際対話センター(旧名・ボストン二十一世紀センター)が創立された。以来、精力的に異なる宗教土壌の学識者たちとの対話やシンポジウムを重ね、今や世界的な碩学たちが訪れる重要な学術拠点となっている。
 同センターが出版した研究書は、ハーバード大学、スタンフォード大学、エール大学など全米はもとより各国の300以上の大学の約1000講座で使用されている。
 1996年には、やはりSGI会長によって「文明間の対話」をモットーに掲げ戸田記念国際平和研究所が創立された。初代所長に就任したのは、平和学の泰斗でありイスラム教徒であるマジッド・テヘラニアン博士。のちに国連は2001年を「文明間の対話年」と定めるが、これを国連に提唱したのはテヘラニアン博士の出身国イランのハタミ大統領であった。
 ゴルバチョフ元ソ連大統領は、創価学会創立75周年(2005年)に寄せた祝福のメッセージで、

池田先生は、東西冷戦によって分断された世界を駆けめぐり、人々の心の中に安心と信頼の輪を幾重にも広げました。対話という唯一の武器を持って戦われたのです。まさにソクラテスの対話を蘇らせた方であります。池田先生のもとで発足したSGIが、わずか30年の短期間で世界190カ国・地域の人々に受け入れられたことが、なによりの証左です。

と述べている。 ※現在は192カ国・地域

軍服を脱いだカストロ

 池田SGI会長と対談集『太平洋の旭日』(河出書房新社)を刊行したチリのエイルウィン元大統領は、同国民主化の立役者であり、キリスト教民主党の創設者のひとり。両者の対話は太平洋を挟んだ「隣人」どうしの対話、また仏教者とキリスト教徒との対話となった。
 SGI会長は、早くから中南米の数多くの国家指導者とも親交を結んできた。1996年、コスタリカ政府の招聘を受けて同国に第一歩を記した折には、フィゲレス大統領自らが空港まで会長を出迎え、宿舎まで同道した。
 ノーベル平和賞受賞者である同国のアリアス元大統領とも、幾度も会談を重ねている。
 キューバは1961年に米国と断交。62年には核戦争の一歩手前まで至るほど世界が緊迫した「キューバ危機」が両国間に起きた。
 1996年2月、キューバ軍が領空を侵犯した米国の民間機2機を撃墜。米国クリントン大統領は翌月、対キューバ禁輸措置であるヘルムズ・バートン法に署名し、両国関係は再び「キューバ危機」以来の一触即発の緊張を迎えていた。
 その世界がキューバを注視するただ中の96年6月。SGI会長は米国からバハマを経由してキューバに入った。米国を発つ前、ニューヨークに滞在していた会長のもとを旧知のキッシンジャー元米国国務長官が単身で訪ねている。
 キューバのハバナ空港では、招聘元のハルト文化大臣がタラップの下までSGI会長を出迎えた。SGI会長を革命宮殿に迎えたフィデル・カストロ議長(当時)は、革命以来の40年間で初めてスーツを着て公式の場に現れ、世界中を驚かせた。

聖教新聞社「グラフSGI」2016年5月号より

 その後、報道陣を退けた別室で、池田会長側は通訳のみ、議長側は閣僚らだけを伴い、1時間半にわたって会談している。民間人との会見としては異例の長さ。詳細は明らかにされていないが、池田会長は『私の世界交遊録Ⅱ』(読売新聞社)のなかで、〝数々の苦言〟も率直に述べたことを綴っている。
 翌7月、東京富士美術館とキューバ国立美術館の共催で、同国初となる「日本美術の名宝展」が開幕した。異例のことであったが、同展の名誉実行委員長にはカストロ議長が就任し、最終日には会場に足を運んで鑑賞している。
 そして、クリントン大統領はこの同じ7月、ヘルムズ・バートン法第3条の実施を半年間延期すると発表した。
 さらに、これまで暗殺を恐れて動かなかったフィデル・カストロ議長が、別人のように「対話」の旅を開始したことに世界はざわめいた。
 11月には自らバチカンを訪れ、ローマ教皇を表敬。かつて自分を破門したバチカンとの関係修復を図ると同時に、これまでの宗教弾圧政策を事実上放棄した。
 2007年、キューバSGIは同国の仏教団体として初めて司法省から法人認可を受けている。2015年7月、米国とキューバは国交回復を発表した。

「会長はタンゴ界の恩人」

 2010年、アルゼンチンは建国200年を迎えた。首都ブエノスアイレス市は、特別に記念メダルを200枚だけ鋳造。そのメダルを外国人として唯一授与されたのがSGI会長であった。
 20世紀の前半、アルゼンチンは世界有数の富裕国として繁栄を謳歌していた。19世紀にブエノスアイレスで生まれていた音楽「タンゴ」はヨーロッパにも流行し、1940年代には隆盛期を迎えていた。
 ところが1955年にペロン政権が崩壊し、経済低迷と共にタンゴにもかげりが見えはじめる。70年代に軍事政権になると街中でのタンゴの演奏や舞踏が大きく制限され、作曲家の死去なども重なってタンゴは一気に存亡の機に立たされる。この時期、多くの音楽家が国外に亡命した。
 瀬戸際にあったタンゴ界に手をさしのべたのが、池田SGI会長の創立した民音(民主音楽協会)だった。
 民音では1970年から「民音タンゴ・シリーズ」と銘打って、楽団、歌手、舞踏家などを日本に招聘。それは途切れることなく毎年続けられ、延べ公演回数は2018年時点でおよそ2500ステージ、来場者は380万人となっている。シリーズ以外の公演を含めると、さらに数は増える。
 コロナ禍で来日公演ができない2021年は、駐日アルゼンチン大使館と共同でオンラインイベントを企画している。
 国立タンゴアカデミーのガブリエル・ソリア会長は「ダンサー、ピアニスト、作曲家など、タンゴに携わる多くのアーティストたちにとって、民音という輝かしい活躍の場が、わが国から最も遠い海外・日本の地に生まれ、タンゴは再び春の時代を迎えることができたのです」「SGI会長は〝タンゴ界の恩人〟であり、その功績は永遠に語り継がれていくことは間違いありません」と語っている。
 アルゼンチン共和国は1990年に「大十字五月勲章」を池田会長に授章。国立タンゴアカデミーは第1号の名誉大使称号を会長に贈っている。タンゴ界のマエストロたちも続々と会長に「献呈曲」を捧げ、その数は20を超えた。
 また軍政と戦いノーベル平和賞を受賞した同国の人権活動家、アドルフォ・ペレス・エスキベル博士との対談集も両国で刊行されている。
 2018年、会長とエスキベル博士はローマで「世界の青年へ レジリエンスと希望の存在たれ!」と題する共同声明を発表している。

※この記事は『最新版 世界広布新時代への飛翔』(青山樹人著/鳳書院)をベースに加筆修正したものです。

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あおやましげと●著書に『宗教はだれのものか』(2002年/鳳書院)、『新装改訂版 宗教はだれのものか』(2006年/鳳書店)、『最新版 宗教はだれのものか 世界広布新時代への飛翔』(2015年/鳳書店)など。WEB第三文明にコラム執筆多数。