特集㉕ 日蓮正宗、謀略の決行——年末ギリギリの混乱狙う

ライター
青山樹人

宗規の変更で総講頭を罷免

 1990年7月の〝目通り〟で異常な姿を見せた日顕。だが、その後は「C作戦」を学会側に悟られぬよう、表面的には努めて平静 を装い、公式の場でもあいかわらず池田SGI会長と学会を賞賛し続けた。
 たとえば創価学会の機関誌『大白蓮華』の1991年1月号には、日顕自身が「新年の辞」を寄稿し、SGI会長に対しても讃辞を連ねている。
 同号は90年の12月上旬には編集が済んでいるから、日顕がこの原稿を用意したのは11月あたりだろう。
 10月の大石寺開創700年の記念法要でも、SGI会長を賞賛するために、感謝状と記念品を日顕自ら手渡した。
 日顕が謀略をひた隠しにして平静を装ったのには理由がある。ひとつには、奇襲を仕掛けて学会を大混乱に陥れるため。ふたつは、そのギリギリまで1円でも多くの供養を学会から手に入れるためである。
 7月時点で創価学会の解体を視野に入れた「C作戦」を謀議しておきながら、日顕はこの年の12月21日にも三重県に出向き、創価学会からの200カ寺建立寄進の一環である寺院を平然と受け取っている。
 開創記念の関連行事が終了し、本山や末寺に参拝者から莫大な供養が集まりきった年末になって、日顕は動いた。
 12月13日、宗門と学会の連絡会議。ひと通りの議案が終了したあとで、総監の藤本日潤が学会側に、唐突に「お尋ね」と称する文書を手渡そうとした。
 その内容は、11月16日におこなわれた創価学会の第35回本部幹部会での池田SGI会長のスピーチに、法主と宗門を誹謗した許し難い問題点があるのではないかということであった。
 根拠になっているのは、宗門がどこかから入手した幹部会の盗聴テープという。
 しかし出所不明のテープならば、悪意をもって内容が改竄されている可能性も考えられる。そんな情報をもとに宗門と学会が公式に文書をやりとりしては、宗史に汚点を残し、総監の責任問題にも発展しかねない。学会側はこう述べて、問題があれば話し合いで解決したいと要望した。
 学会側の言い分は筋が通っている。藤本もこれに同意せざるを得ず、この日は文書を引っ込めて帰った。
 ところが、3日後の12月16日付で、宗門はなぜか「話し合いによる解決は不可能」とし、この「お尋ね」を学会本部に郵送。7日以内に文書で回答せよと居丈高に迫ってきたのである。
 この「お尋ね」文書は、SGI会長のスピーチが法主と宗門を誹謗しているなどと書き連ねたうえ、創価学会がベートーベンの交響曲第9番を歌っていることは「外道礼讃」であるとしていた。
 なお後日、学会から「お尋ね」の内容の杜撰さを指摘された宗門は、

 宗務院として、「『お尋ね』に対する回答」を一読し、改めて池田名誉会長のスピーチを聞き直したところ、確かに当方のテープの反訳に相違がありました。但し、故意によるものではなく、テープが聞き取りがたかったことによるもの であります。ともかく相違していた点、及びそれに基づいてお尋ねした件に関してはお詫びし、撤回します。(「『お尋ね』に対する回答」についての指摘)

等と返答。池田SGI会長を処分する前提に誤りがあったことを、みずから認めたのである。
 学会側は再び話し合いを求めたが、宗門は応じず、期限内に学会が文書で回答しなかったことをもって「学会に誠意なし」とした。
 そして、12月26日、27日の両日に臨時の宗会を開いた。この場で日蓮正宗宗規を変更。変更に伴って、それまで法華講本部役員の職にあった者は資格を失うとした。池田SGI会長を法華講総講頭から「資格喪失」という名目で罷免したのである。
 さらに、学会からの反論や宗内からの疑念を予想して、「言論、文書等をもって、管長を批判し、または誹毀、讒謗したとき」は信徒を処分できるという、強権的な条項を新たに加えた。

計算づくのタイミング

 じつは、この臨時宗会に先立つ12月25日、日顕は大石寺大坊の対面所で数人の男たちと密会していた。群馬県の本応寺住職の高橋公純。高橋の実弟で創価学会批判を生活の糧としていたライターの段勲。脱会者で「池田問題対策事務所」の事務局長を自称していた押木二郎らである。
 段は、わずか半年前に、「御本尊偽造」云々というデマ記事を書き、その際に日蓮正宗の御本尊をバラバラに解体した写真を週刊誌に掲載している。その男を法主が密かに総本山に招き入れて、謀議をめぐらせたのだ。
 この席で日顕は、池田SGI会長を破門して学会を解体する謀略の算段を明かし、「学会員のうち、20万人が山につけばいい」と、驚くべき発言をした。
 坊主の言いなりになって宗門への供養を出し続ける信徒が20万人程度確保できれば、坊主の贅沢な暮らしは安定する。折伏だ教学だと真剣に活動する会員が多くては、遊蕩にふける坊主への批判が強まって都合が悪い。だから寺檀制度を甘んじて受け容れる、従順な信徒が20万人だけ手に入ればいいという本音であった。
 さらに日顕は段らに対し、反学会ライターだけでなく、各政党や出版社を創価学会攻撃に動員するよう依頼した。その4日前に日顕は、創価学会から寺院の寄進を受けているのである。
 日顕は、学会に弁明の機会を与えずに一方的にSGI会長を総講頭から罷免する方法として、〝宗制宗規の変更〟という奇策に出た。日蓮正宗が自宗の宗制宗規を変えることは、僧侶たちだけの宗会で決議できるからだ。
 そして、この総講頭資格失効という重大ニュースを、創価学会に何の事前通達もないまま、あえて記者会見を開いて世間に発表した。
 いきなり12月28日の一般紙やテレビニュースに「池田名誉会長が法華講総講頭罷免」という報道が流れたのである。全世界の学会員を動揺させ混乱に陥れるための、恐るべき奸知であった。
 日顕が、あえて年末ギリギリの時期を狙ったのには理由がある。
 通常、学会は12月の半ばから会合を休止する。会員も年末のあわただしい日々を過ごし、帰省などで地元を離れる者も多くなる。日刊の聖教新聞も12月29日から1月3日までは休刊となる。
 不意打ちを食らった学会が聖教新聞で反駁しようにも、新聞が出せない。会合も開けない。対応できずにいるうちに大晦日となる。元日の午前零時には全国の末寺で新年の初勤行がおこなわれる。
 これには毎年、多くの学会員が参詣していた。ニュースを聞いて不安を感じた学会員は、寺側の発表を待ち望むだろう。
 ここで住職から「SGI会長に重大な信仰上の問題あり」と発表すれば、学会員は大混乱に陥るはずだと考えていたのである。

流出した「謀略」の中身

 のちに日蓮正宗内部から流出した「C作戦」の文面には、目を疑うような計略が記されていた。
 第1段階として、臨時宗会を開いて宗制宗規を変更する。
 第2段階として、学会に「通告書」を突きつける。
 その内容は、「SGI会長を総講頭から罷免し自宅待機を命じる」「学会の法人責任役員の過半数を僧侶が占める」「海外組織は宗門の直接指示に従う」等々。完全な創価学会の乗っ取りである。
 しかも作戦書には、「できるだけ創価学会が受け入れがたい内容とすることが望ましい」とあった。学会側がこの理不尽な通告を拒否することを織り込んで、次の手に移るためだ。
 その第3段階は、「学会は宗門とは無縁の団体だと発表する」「記者会見を開いて日本国民に宗門の正当性を訴える」「学会員には宗門と学会のどちらに付くかまかせて、寺に付く者には脱会届を出させる」「これらの経過を管長名で全国紙に3日連続して全面広告で掲載する」「これにより各末寺に信徒登録に殺到するはず」などとある。
 さらに「遂行に際して考えなければならない事項」をいくつか挙げ、なかには「信心の弱い学会員、理性によって判断できない類いの学会員の中には、ノイローゼ状態に陥り、自殺・一家心中等の不幸が起きる可能性がある」と記されていた。
 もはや聖職者の仮面をかぶった〝悪魔〟の所業である。
 彼らは本来、90年秋の「開創700年」直前に、この謀略を実行しようとしていた。だが、あの「河辺メモ」にあったように、坊主たちの行状風紀が乱れに乱れていたことで延期せざるを得ず、年末の決行に踏み切ったのだった。

※この記事は『最新版 世界広布新時代への飛翔』(青山樹人著/鳳書院)をベースに加筆修正したものです。

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あおやま・しげと●著書に『宗教はだれのものか』(2002年/鳳書院)、『新装改訂版 宗教はだれのものか』(2006年/鳳書院)、『最新版 宗教はだれのものか 世界広布新時代への飛翔』(2015年/鳳書院)など。WEB第三文明にコラム執筆多数。