特集⑳ 核廃絶への世界世論を形成——国連からの深い信頼

ライター
青山樹人

「現代世界の核の脅威展」

 1975年にニューヨークの国連本部を訪れ、核廃絶への1000万人の署名を事務総長に手渡していた池田大作SGI会長。
 初の世界軍縮会議となった第1回国連軍縮特別総会(78年5月)の折には、事務総長に書簡を送り、10項目にわたって核軍縮及び核廃絶への道を訴えていた。
 だが80年代に入っても、核軍縮の前途は厳しかった。81年8月、米国のレーガン大統領は戦術核兵器として、破壊力を抑え放射線による殺傷能力だけを高めた「中性子爆弾」の生産を決定した。
 終わりの見えない冷戦のなかで、国連の無力さに対する国際世論の風向きもきつかった。国連不要論も声高に語られた。
 この時期、日本人として国連事務次長(広報・軍縮・人権担当)に就いていたのが明石康である。レーガンの「中性子爆弾」生産決定があった同じ8月、明石は東京渋谷の国際友好会館に初めてSGI会長を訪ねている。
 SGI会長の国連に対する態度は明快であった。

 確かに現実の難問はある。国連の無力を嘆き、無用論を唱えることはたやすい。だが国連が、二度の世界大戦の悲劇のなかから生まれた、唯一の「人類の議会」であることを忘れてはなるまい。(『大道を歩む Ⅱ』毎日新聞社)

 だとすれば、大国が強権を振り回し、国と国との利害がぶつかるばかりの国連をどうすれば実質的に強化できるか。SGI会長があらゆる機会を通して訴えたのは、「国家が支える国連」から「民衆が支える国連」への転換であった。
 売名のために国連の名を利用する者は少なくない。けれどもSGI会長の視点は次元が違っていた。

 国連支援の信条についてさらにいえば、それは国連と学会が、「民衆の連帯で国家悪を超える」という一点において、強く響き合うからである。(同)

 国家悪と戦い、国家悪を超える――。SGI会長の手によって、すでに創価学会は各国に世界市民の連帯を広げていた。
 明石事務次長との会談でSGI会長は、核兵器の惨状を世界の指導者のみならず民衆に展示で伝えるという、具体的な提案をした。
 1982年6月。第2回国連軍縮特別総会の開催に合わせて、ニューヨークの国連本部で「現代世界の核の脅威展」が開催された。
 創価学会と広島市・長崎市が主催。国連広報局が協力。核兵器の悲惨さをわかりやすく示す展示を、デクエヤル国連事務総長はじめ各国政府や国連機関関係者、報道関係者が熱心に見学した。
 この展示は「核兵器――現代世界の脅威展」として、こののち24カ国39都市を巡回。のべ170万人の市民が訪れている。SGI会長のリーダーシップにより、冷戦期の北京、モスクワ、ウイーン、パリ、ベルリンでも開催された。
 明石は後年、当時のSGIの取り組みをふりかえって、

 特別総会での「世界軍縮キャンペーン」採択にも大きな影響を与えたと思っている。(『潮』2010年7月号)

 核廃絶への世界世論を形成する、大きな役割を果たされたと思う。(同)

と述懐している。8月に来日したデクエヤル国連事務総長は、迎賓館でSGI会長と会談し、深い感謝を伝えた。

「世界でただお一人です」

 SGI会長の行動は、むしろここから加速していく。翌83年1月26日には、SGIの日を記念した提言「平和と軍縮への新たな提言」を発表した。この「SGI提言」は以後、今日に至るまで40年近く、途切れることなく毎年続けられている。
 SGI会長は提言で、その時々の世界情勢や国連が直面する課題を踏まえつつ、国連の意義、市民社会の参画、平和構築、核軍縮、通常兵器削減、環境問題、地域ガバナンス、教育など、あらゆる次元から包括的かつ具体的な方策を提起してきた。そこには同時に、〝人間がつくり出した問題は人間の手で必ず解決できる〟という人間への信頼と、人間精神の覚醒を呼びかけるSGI会長の信念が貫かれている。
 この80年代前半は「新冷戦」と呼ばれ、米国のレーガン大統領が保守派キリスト教団体の会合でソ連を「悪の帝国」と公言し、宇宙空間を舞台とした戦略防衛構想を発表するなど、世界はきわめて緊張を高めていた。
 暴走する国家悪に対し、SGI会長は〝民衆の連帯〟の立場から、国連を支持し、国連と手を携えて、核戦争を回避する世論を拡大していった。
 83年8月、国連はSGI会長に「国連平和賞」を授与した。SGI会長は、デクエヤル事務総長と計4回、会談を重ねている。
 SGIも国連経済社会理事会との協議資格を持つNGO(非政府組織)として登録され、各地で難民救済や教育支援の人道活動を開始した。
 1992年にUNTAC(国連カンボジア暫定統治機構)が内戦終結後のカンボジアで民主選挙をおこなった際、住民の識字率が低かったために初めて国連によるラジオ局が設置された。だが、肝心の受信機が圧倒的に足りない。
 このとき、国連の要請を受けた創価学会は28万台もの中古ラジオを集め、これが民主選挙の成功を決定づけた。以後、国連では世界各地のPKO活動でもラジオ放送局の設置をするようになっている。
 冷笑をものともせず、SGI会長は一貫して国連支援の世論を喚起し、具体的に国連の活動を支え続けた。国連は、88年と89年には事務総長による「特別顕彰」を、89年には難民高等弁務官事務所からの「人道賞」を授与。99年には国連協会世界連盟がSGI会長を名誉顧問としている。
 明石事務次長が最初に会長を訪ねてから25年。2006年8月、東京牧口記念会館にSGI会長を訪ねたチョウドリ国連事務次長(当時)は、

 世界の指導者のなかで、池田会長ほど継続的に国連の支援と強化を訴えてこられた方は、ほかにはいません。世界でただお一人です。

 私ども国連は、池田会長の献身的な行動に感謝しなければなりません。池田会長ほどの支援者をもったことを誇りに思います。

と深い感謝を伝えている。

※この記事は『最新版 世界広布新時代への飛翔』(青山樹人著/鳳書院)をベースに加筆修正したものです。

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あおやま・しげと●著書に『宗教はだれのものか』(2002年/鳳書院)、『新装改訂版 宗教はだれのものか』(2006年/鳳書院)、『最新版 宗教はだれのものか 世界広布新時代への飛翔』(2015年/鳳書院)など。WEB第三文明にコラム執筆多数。