特集⑭ 「七つの鐘」終了の年――隆盛で迎えた目標の佳節

ライター
青山樹人

「謹刻は謗法ではない」と法廷で証言

 1978年になって、日蓮正宗の反学会活動家僧侶たちが、創価学会の板本尊に難癖をつけて攻撃の材料に使いはじめた経緯は前回記したとおりである。
 すでに75年1月の時点で管長である日達自身が「会の宝物である本尊をどのように格護しようと問題はない」と明言しているように、本来、紙幅の本尊を板に謹刻することは本尊を大切にする行為であり「問題ない」ことなのだ。実際、宗門の末寺の本尊はすべて板に彫刻されている。
 反学会活動家僧侶らが、ことさらに学会の板本尊を問題視した背景には、寺院にある木製の板本尊を、あたかも信徒の受持する紙幅の本尊より〝格が上〟であるかのように見せたいという邪心があった。宗祖日蓮大聖人が一切衆生の幸福のためを願った本尊さえも、彼らは出家の権威を演出する道具としか考えていなかったのである。
 78年11月7日、僧俗和合を確認する意義を込め、大石寺大講堂で日達法主も出席して学会の代表幹部会が開かれた。
 この席で、挨拶に立った副会長が謹刻の件に触れ、「不用意に御謹刻申し上げた御本尊」と発言した。
 じつは、これは会合の直前になって山崎正友が、「不用意に」の一言を加えないと宗門が収まらないと強硬に主張して、原稿に書き加えさせたものであった。
 山崎は、学会にまったく非がないことを誰よりも知っていながら、宗門の圧力を口実にして、あえて「不用意に」の一言を挿入させたのである。そこには山崎の奸計があった。
 幹部会が終わるや、山崎はすぐさま週刊誌に情報を流した。学会が勝手にニセ本尊を作成したことを認めた。そのことは学会側の「不用意に」の挨拶文で明らかだ――と。
 各週刊誌はいっせいに「創価学会が宗門に隠れてニセ本尊をつくり、その非を宗門に詫びた」と報じたのである。山崎の狙いは、学会員を動揺させ、反学会僧侶を勢いづかせることにあった。
 なお、この数年後に正信会(反学会僧侶)一派と日蓮正宗が法廷で争うことになった際、宗門庶務部長の藤本日潤は「学会の謹刻行為は謗法ではない」と裁判所で証言している。
 また、日蓮正宗四国大支院長だった安沢淳栄らが正信会に対抗して出した小冊子のなかでも、「不用意に」の箇所は山崎の意図的な加筆であったことを明記している。
 謹刻の一件が何ら問題のないことであり、学会に非はなく、騒動が山崎の策謀であったことを、阿部日顕ら宗門の中枢は当時からよくよく承知していたのである。
 のちに1990年代になって日蓮正宗はこの謹刻問題を持ち出し、卑劣にも創価学会の「謗法行為」だとして、学会を処分する理由に挙げた。それならば藤本日潤は法廷で偽証したことになるだろう。

「七つの鐘」が鳴り終わる年

 山崎は、このような卑劣な手法で次々とネタを創作しては反学会活動家僧侶を煽り、週刊誌に流して騒ぎ立て、何か学会に大きな非があるかのような構図をでっち上げていった。
 そして、宗内に創価学会を破門せよという強硬な空気をつくり出すことに腐心した。
 もちろん、池田会長が会員を守るために必死になって僧俗和合に動き、信徒として誠意を尽くすことを見越したうえで、なんとしても会長を辞任へ追い込もうとしていたのである。
 翌79年3月、副会長だった福島源次郎が福岡県大牟田市での会合で、宗門と日達を揶揄する軽率な発言をする。その発言は何者かによって密かに録音され、すぐさま総本山に届けられた。
 副会長が法主を揶揄したという盗聴テープは、活動家僧侶らにとっては、またとない攻撃材料である。彼らは山崎の入れ知恵どおり、「学会の宗教法人を解散させるべし」と宗門執行部を突き上げた。
 3月末、法華講連合会は緊急理事会を開き、池田会長への「法華講総講頭辞任」勧告を決議。檀徒として寺についた脱会者らは、池田会長の辞任を要求して騒ぎ立てた。
 この1979年は、創価学会にとって「七つの鐘」の鳴り終わる佳節の年となっていた。
 これは戸田第2代会長が逝去した直後の1958年5月3日の総会で、全同志に希望を贈るべく、当時の池田青年室長が発表した構想である。
 学会は1930年の創立以来、不思議にも7年ごとに大きな節目を刻み、嵐を乗り越えて前進してきた。
 2つ目の「7年」の鐘が鳴った1944年には、牧口初代会長が殉教した。戸田会長が75万世帯の願業を達成して逝去した年は、4つ目の鐘にあたっていた。
 池田青年室長は、学会創立から50年目となる1979年を「七つの鐘」が鳴り終わる年として示し、全同志にまずはこの年をめざして前進しようと呼びかけたのだった。
 そして、創価学会は絶頂期でこの「七つの鐘」が鳴り終わる年を迎えていた。
 名実ともに国内最大の民衆運動となり、一大平和勢力となっていた。これを率いる池田会長はまだ50代に入ったばかりで、世界の指導者との対話を拡大していた。
 池田会長は、さらに世界での指揮をとるため、以前から会長職を交代したいと考えていたのだった。
 嵐のなかで、その「七つの鐘」の鳴り終わる1979年の5月3日が目の前に迫っていた。

※この記事は『最新版 世界広布新時代への飛翔』(青山樹人著/鳳書院)をベースに加筆修正したものです。

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あおやま・しげと●著書に『宗教はだれのものか』(2002年/鳳書院)、『新装改訂版 宗教はだれのものか』(2006年/鳳書院)、『最新版 宗教はだれのものか 世界広布新時代への飛翔』(2015年/鳳書院)など。WEB第三文明にコラム執筆多数。