コラム」カテゴリーアーカイブ

公明党はなぜ完勝したか――2021都議選の結果

ライター
松田 明

予測が外れた選挙結果

 都議会議員選挙が終わった。まず特筆すべきことは、マスコミの事前予測が大きく外れたという点だろう。
 投票日1週間前の6月27日の時点で、たとえば選挙区ごとの情勢分析をおこなっていた毎日新聞は、

 自民は獲得議席が50を超える可能性も出ている。前回選で複数候補を擁立して共倒れした選挙区でも、今回は支持を広げつつある。現有23議席の公明は全員当選を目指すものの、一部選挙区では苦戦している模様だ。(「毎日新聞電子版」6月27日

と報じている。分析は、毎日新聞とTBSテレビ、社会調査研究センターが共同で実施したものだった。
 他のメディアや情勢分析専門家らも、「自民優勢」「公明苦戦」「都ファ激減」という見立てが概ねだったと思う。
 NHKはじめ各メディアは、4日の20時に開票がはじまった時点でもなお、公明党に関しては3~7議席は失う可能性があるという厳しい見方をしていた。 続きを読む

芥川賞を読む 第6回 『背負い水』荻野アンナ

文筆家
水上修一

嫌みに感じるほどの「才気」は、否定しようがない

荻野アンナ著/第105回芥川賞受賞作(1991年上半期)

選考委員の酷評

 第105回の芥川賞は、前回取り上げた辺見庸の『自動起床装置』と萩野アンナの『背負い水』がダブル受賞となった。『文学界』(1991年6月号)に掲載された126枚の作品。
 さて困った。ちっともいいと思えないのだ。自らの精神の居場所を探し求めながら、男関係のなかで揺れ動く独身女性の心情を描いているのだが、読後、「だから、どうした?」と、ため息をついてしまったのだ。
 確かに、才気あふれる作家であることは、読み始めればすぐ分かる。けれども、例えば、そばに近づいて見ると確かにキラキラと部分的には輝いているのだが、離れて全体を見ようとすると、いったいどのような形状で何を表現しようとしているのかがつかめず、戸惑ってしまうのだ。 続きを読む

長嶺将真物語~沖縄空手の興亡 第14回 沖縄空手界の再統一へ

ジャーナリスト
柳原滋雄

ゆるやかな統一組織「沖縄空手道懇話会」

 全沖縄空手道連盟から国体競技に参加するために分かれた沖縄県空手道連盟。1980年代の沖縄空手界は組織が完全に二分されていた。87年に開催された沖縄海邦国体の空手競技では、沖縄県は念願の全国優勝を果たしたものの、両連盟の関係者は、双方顔を合わせても口をきかないといった関係が続いていた。
 こうした時期に、このままではいけないと考えた新聞人がいた。『琉球新報』の記者として20年以上勤め、そのころ、広告局に異動し、イベントを担当するようになっていた濱川謙(1940-)である。 続きを読む

共産党が危険視される理由――「革命政党」の素顔

ライター
松田 明

立花隆氏の『日本共産党の研究』

 幅広い分野で取材と執筆をつづけ、「知の巨人」と称された立花隆氏の逝去が先ごろ公表された。
 立花氏の関心は多岐にわたった。政治分野では、現職の首相の金脈を暴いた『田中角栄研究』と、共産党の実像に迫った『日本共産党の研究』が代表作だ。
 リンチ事件など暗部を詳細に追った『日本共産党の研究』の「序章」は、冒頭でこう触れている。

 共産党が、〝暴力革命などというものは、共産党の方針とは縁もゆかりもありません〟といくら強調しても、〝いや、あれは羊の皮をかぶったオオカミだ、いざとなれば暴力革命をやるのだ〟との見方があとをたたない。(『日本共産党の研究(一)』講談社文庫)

 立花氏が『日本共産党の研究』を月刊誌『文藝春秋』に連載したのは1976年から77年の2年間。
 それから45年が経った今も、日本共産党は本質的に変わっていない。 続きを読む

シリーズ:東日本大震災10年~「防災・減災社会」構築への視点 第7回「日本版ディザスター・シティ」構想~一級の危機管理要員育成へ~(下)

フリーライター
峠 淳次

福島誘致のすすめ~複合災害の場を人づくりの学校に~

公明党福島県本部が危機管理要員訓練施設の誘致で記者会見(2021年3月15日、『公明新聞』3月16日付)

 東日本大震災から10年の節目を刻んだ今年3月、公明党福島県本部は〝次の10年〟に向けた独自の福島復興加速化政策を発表し、この中で日本版ディザスター・シティともいうべき本格的な「危機管理要員育成センター」の創設と福島誘致を提言した。
 提言は冒頭、「災害大国の日本にあって危機管理と防災・減災に関わる多様な知識や技術を身につけた人材を育てることは喫緊の課題である」として、大震災と原発事故という未曽有の複合災害を経験した福島に、あらゆる自然災害に加えて原子力災害も想定した危機管理要員育成センターを創設、誘致すべきと主張。その上で、県沿岸部の浜通り地域で進む国家プロジェクト「福島イノベーション・コースト(国際研究産業都市)構想」に「防災」の視点を盛り込むよう求め、「最先端のハイテク産業とリンクした新時代の育成拠点」というセンターの具体像も浮かび上がらせた。 続きを読む