投稿者「web-daisanbunmei」のアーカイブ

「反戦出版」書評シリーズ② 『語りつぐナガサキ――原爆投下から70年の夏』

ジャーナリスト
柳原滋雄

被爆体験を継承するための重要な一書

 2015年に新たに上梓された『語りつぐナガサキ――原爆投下から70年の夏』は、前年に出版された『男たちのヒロシマ――ついに沈黙は破られた』につづく長崎編と呼べるものだ。
『ヒロシマ』は表題のとおり、男性のみによる証言集だったのに対し、長崎編には男性・女性の体験から成っている。 続きを読む

北朝鮮情勢で恥をかく共産党――「地上の楽園」「リアルな脅威がない」

ライター
松田 明

新たな段階に入った脅威

 5月14日の朝、北朝鮮が今年に入ってから7回目となる弾道ミサイルを発射した。
 同国西部クソン付近から発射されたミサイルは約30分間飛行し、約800キロ離れた日本海に落下した。CNNは、落下地点がロシアの太平洋艦隊司令部があるウラジオストクから60マイル(約97キロ)しか離れていないと報じている。
 北との対話路線を打ち出していた韓国の文在寅大統領が就任した直後、また中国が〝今年最大の外交行事〟と位置付けて世界のおよそ140ヵ国のリーダーを集めた「一帯一路フォーラム」の初日の朝の発射である。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第30回 岩波文庫について①

作家
村上政彦

 文学を手にし始めた10代のころ、ひとつ悩みがあった。まだ子供だから経済的には不自由だ。しかし、ハードカバーの単行本は高い。だから、読みたい本があっても、それが文庫になるのを心待ちにしたのだが、早く読みたいので、待っているあいだ、ずっと焦れている状態だった。
 僕は、ほとんどの文学作品を文庫で読んでいる。文庫は、廉価だし、持ち運ぶにも便利だ。本棚に並んでいるのは文庫ばかりだった。背表紙の出版社を見ると、新潮社、文藝春秋、講談社、集英社などがあったが、そのなかでも特別な存在は岩波文庫だった。 続きを読む

都議選はなぜ「7月」になったか――躍進した公明党が金権撲滅に動く

ライター
松田 明

41道府県は4月の選挙

 7月2日に投開票を迎える東京都議会議員選挙。それにしても、首都とはいえ一地方議会選挙である都議選が、これほど早くから、しかも連日、マスメディアの注目を浴びて全国区の話題になっているのは異例である。
 ところで、通常、統一地方選挙は4月であり、47都道府県のうち41道府県は4月に議会選挙を行っている。例外は、東京都のほか、東日本大震災の影響で2013年4月の選挙が延期された岩手県、宮城県、福島県と、1966年12月に自主解散した茨城県、本土復帰した直後の1972年6月に選挙を行った沖縄県だけだ。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第29回 生きるための詩

作家
村上 政彦

 僕は9歳のときに父を喪った。その後は母と祖母に育てられた。
 母は、酒場で「ママさん」と呼ばれる勤めをしていた。だいたい昼頃まで寝ていて、夕刻に近くの銭湯へ行き、きれいに化粧をして着物を着る。三面鏡の前で、ぽんと帯を叩いて出かけて行く。帰るのは深夜である。

 家族というのは不思議なもので、母と祖母は特に話し合ったわけでもないだろうが、いつか母が「父」になり、祖母が「母」になった。 続きを読む