投稿者「web-daisanbunmei」のアーカイブ

連載エッセー「本の楽園」 第35回 『MONKEY』を読む

作家
村上政彦

 僕は10代の半ばから小説を書き始めた。最初はごく普通の小説を書いていたが、やがてヨーロッパの前衛文学の影響を受け、前衛的な作品に手を染めるようになった。22、3歳のころ、『Mariee’s sample』という作品を書いた。
 Marieは、マリーという女性の名と、フランス語の花嫁(Mariee)のダブルミーニングで、ある男の妻になった女性を描いた。ただ、さっき断ったように前衛的な作品で、普通の小説ではない。マリーというひとりの女性の持ち物を写真に撮り、それにキャプションをつけて、カタログ雑誌のように読めるつくりだった。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第34回 バンクシーとは何か?

作家
村上政彦

 いつのことだったか、あるアーティストがパレスチナの分離壁に絵を描いた、とニュースで知った。壁に描かれた切り取り線と鋏には、政治的なメッセージが込められているように見える。
 へー、なかなかおもしろいじゃないか――僕は、バンクシーという、グラフィティ・アーティストとして活躍する覆面作家を、気になるもののリストに登録した。それからときどきメディアがバンクシーを取り上げると、犬が音のするほうへぴくっと耳を動かすように、彼の動向に注意をはらうようになった。 続きを読む

書評『トランプ時代のアメリカを歩く』――冷静な筆致で綴られたルポルタージュ

ライター
松田 明

想定外の大統領選挙

 私たちは単なる想定外の〝悪夢〟を見ているのか。それとも、冷静に対峙すべき〝新しい時代の課題〟と向き合わされているのか。
 2016年11月8日。米国はもとより日本を含む諸外国のメディアの大勢は、史上初の女性大統領が米国に誕生することを確信し、その瞬間を固唾をのんで見守っていた。
 聖教新聞外信部副部長の光澤昭義記者も、民主党ヒラリー陣営の集まるニューヨークのジェイコブ・ジャビッツ・コンベンション・センターで、その時を待っていた1人である。
 だが、開票が進むにつれ、場内は異様な空気に包まれた。ホワイトハウスの第45代の主人となったのは、共和党のドナルド・トランプだった。 続きを読む

連載エッセー「本の楽園」 第33回 馴染みの酒場のような詩人

作家
村上政彦

 若いころは大人の世界に憧れるもので、僕はホテルのバーのカウンターに坐って寡黙で品のいいバーテンを相手にオンザロックをやったり、白木のカウンターのある小料理屋で熱燗を傾けたりすることを夢見た。
 なんのことはない、僕はアルコールがだめだから、結局、大人になっても馴染みの酒場を持つことはできないでいるのだが、むかしはそういう大人が格好いいと単純におもっていた。
 もっとも「馴染みの酒場」のように、繰り返しドアを開いて訪れる詩人ができた。その1人が黒田三郎だ。 続きを読む

池田SGI会長70年の軌跡(下)――新しい世界を開くための教育

ライター
青山樹人

世界に広がる創価教育

池田SGI会長が創価大学の設立構想を発表したのは、1964年6月30日のことだった。創価学会第3代会長就任からわずか4年。まだ会長が36歳の時である。
そして40歳となった1968年には、創価一貫教育の第一歩となる創価中学・高校が第1回の入学式を迎える。3年後の71年には、創価大学が開学した。
当時、日本も世界も「若者の反乱」の時代だった。国内には大学紛争の過激な嵐が吹き荒れていた。
しかし、会長はこの教育の行き詰まりと混迷を、新たな教育の潮流を開く時代の表徴だと見ていた。 続きを読む